熊の皮算用(その2)

「新聞案内人」はほぼ真っ当なコラム内容であると評価をしている。毎回日替わりで斯界の識者が順番にその思うところを述べているが、特にわたくしが、或る哲学者の回(終わってしまった)を気に入っているのは、その観察眼の陳(:ひ)ねた距離感に親近感を覚えるからである。少なくとも何某かの思考過程の結露としての「知」をそこから見出すことが出来る。
日替わり筆者の全部が全部及第点ではないがしかし、ときどきヘンなものに出喰わすこともある。今回は、これ。
http://allatanys.jp/B001/UGC020005520090806COK00357.html

休耕田を“原発”に変えよう

表題通りに原子力発電所の設置を奨励しているわけではない。農村の耕作放棄地の有効利用方策として太陽光発電パネルを設置してみては如何か、という提言内容である。
わたくしは、昨今流行りの太陽光発電推進自体を貶すものではない。また、その有効活用の具合云々を議論することにも吝かではない。
しかしながら、今回の論旨には、以下の2点の注文がある。


第1に、今回のアイデアの発想は、「有効活用されていない土地があるのだから何でも良いからまず活用してみましょう」「太陽光発電なら、土地の有効活用の上にエネルギー・地域対策の解決にもなって、一石二鳥でしょう」という考え方に基づいている。
而して、この思考法には、耕作放棄地、就中、農業の有り様についての発想は何もない。どうせ農業の世界だけで閉じているから有効利用されていないのであって、農業以外で使うことも考えてもいいじゃないか。こうした考え方は至極尤もらしく見えて、その実、問題が多い。
少なくとも、まちづくりやむらづくりや都市づくりといった生活空間に関する計画制度を思考する上で、「寝かせておかなければ、何でもいいや」という発想を第一義にするのであれば、最早「計画(planning)」は必要ない。
農業をどうするかという視点がない上に、今住んでいるこの地域の空間をどうするかという視点がない中での、「一石二鳥だよ」というアイデアは、所詮現実感を伴わない根無し草の発案に過ぎないのである。


発想の枠組みプロセスにおけるこうした現実感の欠如とともに、第2に、その有効活用度合いという尺度を判断するに際して重要なことは、アイデア内容自体のリアリティ如何がある。
つまり、本当に耕作放棄跡地に太陽光発電所が設置できるのだろうかということである。
頭ごなしに「そんなことはできっこないのよ」とは諭さないが、頭の体操をするにせよ、現実的なブレインストームは不可欠であろう。
もう何万回と繰り返し述べているが、「装置(箱モノ、あるいは、枠組み、制度)さえ作れば、後は何とかうまくまわってくれるさ」というアイデアは無責任すぎる。ましてや、「儲かるなら何でもいいでしょう」という発想も乱暴に過ぎる。こうした発想を見るにつけ、社会がワン・フレーズ・ポリティカに染まってゆく悪見本のように思えてしまう。
複雑な世の中だからこそ、単純化して見せるだけではなく、複雑であることを否定せずに、その複雑さをできるだけ簡明に絵解くことが求められているのである。


個人的糾弾に近いものに聞こえてしまうのかもしれないが、筆者はおそらく耕作放棄の田畑の実情というものをよく知らない。筆者の頭の中にある耕作放棄地は、地権者がすぐに首を縦に振ってくれて、いつでも燦々と光が注ぎ込み、雪も霰も降らないし、雑草も生えてこない、猪も来ない、山奥でも常日頃から誰かがきちんとメンテナンスをしてくれて、天然の湧水池のように日々こんこんと電力が沸き出している。夢物語としてはどうぞご自由にであるが、リアリティさは微塵も持ちあわせていない。であるから、頭の中でごく簡単に、私的な思惑のある地権者のいる山の際の日陰田圃の草茫々の荒地がいきなり太陽光発電所になってしまう「白馬の王子様」の物語が描けてしまうのだろう。
日●新聞出身ということだから、所詮、推して知るべしなのではあるが。


毀誉褒貶で締めるのも切ないので、夏休み特別恒例企画の、いつもの全く関係のない話で結んでみたい(意味不明)。
居酒屋での飲み放題企画というのはよく耳にするが、エクステ屋さんで「まつ毛つけ放題」というのは初めて目にした。これはアリなのか。欲に目が眩んで、普段の5万倍くらいのまつ毛をつけてもらって、旧姓丸●明宏よりも凄いことなって、しまいには目をあける力がなくなってきて、ムラサキウニみたくなってしまって、、、ということをエクステ屋さんの横のエスカレータを上がりながら、勝手な妄想をしていたわたくしであった。


さらに追記
くだんの奈良漬熊は猟友会の手にかかり天に召された。安らかに眠られんことを。http://www.asahi.com/national/update/0811/TKY200908110392.html


本日の音楽♪
「メロディ」(西田ひかる