インド人って…

11月にローマで世界リーダー会議が開催されることも是あって、現在の世界の話題のハイライトは食料飢餓問題に向いているかのようにさえ思える。クリントン国務長官のスピーチ(10月25日付け「ゴミ屋敷日本」参照のこと)、英国王立科学院のレポート(10月30日付け「良識不見識非常識」参照のこと)に続いて、今度は、ニューヨークタイムズ紙がバイテク作物に関する特集記事を仕組んだ。ニューヨークタイムズまで、ねえ。表題は『バイテク作物は世界の飢餓問題を救えるのか?』。その記事の中で6人の有識者のコメントを紹介している。彼らが一体どういった発言をしているのか。いずれわたくしよりも余程為になる発言には違いないので(当たり前である)、順次紹介をしてみよう。
http://roomfordebate.blogs.nytimes.com/2009/10/26/can-biotech-food-cure-world-hunger/?partner=rss&emc=rss


まずは、ポール・コリア氏。オクスフォード大学の経済学者である。アフリカ経済研究センターというところの所長も兼ねており、飢餓貧困問題に詳しい人のようだ。

①ポール・コリアの主張

◆偏見を捨てよう:遺伝子組み換えを拒絶することは、問題をより困難にさせる
 遺伝子組み換え作物食品についての議論は、「米国企業への敵意」、「ビッグサイエンスへの畏怖」、「地域や有機生産へのロマンチシズム」といった政治的美名的な偏見によって汚されてきたといっても過言ではありません。
 食料供給は、こうした偏見で弄ぶこと以上に大切なことなのです。十分な食料がない時に、誰かが飢えなければならないことを皆頭では知っています。
 遺伝子組み換えは、原子力に似ています。誰もがそれを好いていませんが、気候変動問題はその適用を避けて通れないものにさせました。今後、アフリカの気候が悪化することから、作物の気候適応性を高めていく必要があります。人口が増大することから、収穫量を増やしていく必要があります。遺伝子組み換え技術は、収穫量増大に向けて、より高い気候適応性と、化学製剤よりも生物製剤への接近を可能にするものです。
 反対者は、リスクが齎す闇について語りますが、彼らの漠然とした懸念が科学的根拠に基づいて現出したという事実はありません。一方で、本当の意味でのリスクが高まっています。過去10年間で世界的な食物需要は、予測以上に急上昇しました。供給は需要と足並みをそろえられないかもしれません。そして、価格の高騰と定期的な食料不足を引き起こします。この場合、都会の貧困層の子供たちが栄養失調に長く苦しむというリスクが生じることでしょう。
 アフリカ諸国の政府は、現在、遺伝子組み換えを禁止する欧州の政策を模倣・追随することによって、自分たちの社会に向かって高まるリスクを減らそうとせずに、却って増やしてしまったことを認め始めています。13年間という歳月が無駄になってしまいました。その間、アフリカの作物調査研究を実施することができましたが。。。アフリカは謂わば欧州の奴隷でした。そして、欧州はポピュリズムの奴隷でありました。
 遺伝子組み換え技術だけで食物問題は解決できません。気候変動問題と同様に、一つだけの解決策ではどうしようもないのです。しかし、そうした手段を使うことを拒絶し続けるだけでは、難題がより難しくなるだけでもあるのです。


次は、ヴァンダナ・シヴァ女史。インドのNPOの主導者と言えばよいか。有機農業や農民の権利といったことを主張して、そういう方面でのリーダー的存在の人。日本のそうした方面の団体との親和性も高い(ようだ)。

ヴァンダナ・シヴァの主張

遺伝子工学の失敗:自然の恵みや水の循環に基づく生物多様性を増大させる必要がある
 次の20年間の食料安全保障は、生態的保全と気候への抵抗力に基づき構築されなければなりません。私達は本当の意味での緑の革命が必要です。この第2の「緑の革命」は遺伝子工学に基づくものではありません。
 遺伝子工学は、収穫量を増やすことができませんでした。「憂慮する科学者同盟」のダグガリアン・シャーマン氏が最近「失敗した収穫量」との表題で示した調査研究では、ほぼ20年間に亘る記録によれば、遺伝子工学による収穫量増加は認められなかったことが明らかになっています。調査研究の中では、害虫抵抗性あるいは除草剤耐性の組み換え作物の収穫量は明確に増加していないことが明らかになっているのです。
 国際農業科学技術開発機構が400人の科学者とともに4年にわたり調査した結論は、遺伝子工学が約束されてきたことを余り充たしていなかったということでした。それに対して、農業生態環境と持続性の原則に基づく小規模農場は、より多くの食料を生産してきたのでした。
 世界的な開発計画に係るゲイツ財団がアフリカで遺伝子組み換え作物の使用を支持していることは、私を大変失望させています。
 単一作物栽培並びに化学肥料と農薬に依存する緑の革命技術戦略は、生物多様性を破壊するものです。そして、それは多くの場所で単位面積当たりの土壌養分低下を招くこととなります。
 私の本「石油ではなく土壌」の中でも書きましたように、食料産業システムは温室効果ガス排出と気候変動の大きな一因でもあります。抵抗力にとって不可欠である土壌水分と土壌有機物を削減させることからも明らかなように、産業界主導の単一作物栽培(モノカルチャー)は気候変動により脆弱であるわけなのです。
 遺伝子組み換え食品なしで気候変動に対応することができないという遺伝子工学産業の主張は、全くの誤りです。気候に抵抗性のある作物の特性は、何世紀にわたって農民たちによって作り上げられてきたものです。私がNavdanya運動を通じて創設を援助したコミュニティ種子バンクにおいても、干ばつ耐性、洪水耐性、塩害耐性を備えた種子を保持しています。これは、本当の意味での緑の革命のための生物学的拠点になるものなのです。
 遺伝子工学を操る巨人たちは、現在、第三世界の農民達の総体的累積的な技術革新を剽窃し、特許権を奪いとっています。種子の特許独占は、食料安全保障の障害です。彼らは、零細な農民を借金漬けの道に押し出しているだけなのです。
 私たちがNavdanya運動を通じて構築した緑の革命は、単位面積当たりの食料生産を増やす一方で、生物多様性を節約し、水を節約します。私たちが必要とするものは、生物多様性の増大であって、化学の増大ではありません。私たちが必要とするものは、自然の恵みの循環と水の循環を働かせ、そうでないことに反対することです。正に今こそが、こうしたプロセスの中心に零細な農民、特に女性を配置する時なのだということです。


三番目は、パー・ピンストラップ・アンダースン氏。コーネル大学の食料・公共政策専門の農業経済学者で、2001年に世界食料賞(どんな賞なのかよく知らないけれども)を受賞しているそうだ。

③パー・ピンストラップ・アンダースンの主張

緑の革命は正しい:新技術は商業的に放出される前にテストされなければならない一方で、それが全く放出されないことのリスクというものも我々は心に留めておかなくてはならない
 発展途上国の農民が天然資源に損害を与えることなくより多くの食料生産を行うことを援助することは、現下の貧困、飢餓及び栄養不足の問題を緩和し、将来の世代が手頃な価格で必要とする食料にアクセスすることを保証するために必要不可欠な部品であると言えます。
 科学技術は、緑の革命を通じて、意欲的な農民による植物の栄養分の拡大や植物保護及び水管理の改善を齎しました。そして、それは数百万人もの人々を貧困と飢餓から助い出しました。しかしながら、そのミッションは完結していません。
 数百万人もの人々は十分な栄養を摂取できずにおり、そして、より多くの人々は微量元素の不足で苦しんでいます。彼らのほとんどは、農村地帯にあって、農業の生産性の増大によって利益を得ます。さらにまた、世界人口は次の40年間で20億人以上も増加すると予想されています。
 適切な措置が現在とられるならば、彼らは手頃な価格で、そして、環境に打撃を与えることなく必要とする食料と栄養にアクセスすることができます。
 適切な政策、並びに、地方の基盤と市場への投資に加えて、科学は、そのような行動の鍵となる役割を果たさなければなりません。科学は、干ばつ耐性、病害抵抗性、より高い栄養分を含む品質、動物疾病の減少、気候変動効果の緩和・解消、現在の食料ロスに伴う多数の問題解決、発展途上国で直面する農民と消費者のリスクといった種々の問題に向けて汗を流さなければなりません。遺伝子工学と他の分子生物学を含む最適な科学的アプローチが適用されなければなりません。
 新しい技術が商用利用のために放出される前には、潜在的な健康または環境リスクに関するテストが行われなければならない一方で、そのようなリスクは当該技術を放出しない場合の健康・環境リスクと比較されなければなりません。現状は、何百万人もの子供たちを飢えさせ、そして、何も施策を講じなければさらに環境を悪化させて、将来の世代にとっての食料は非常に高価なものとなるでしょう。
 発展途上国の農業と地域開発を優先させるために、政府によって誤って導かれるアンチ科学のイデオロギーと不作為の失政は、食料危機をもたらします。我々が直面する難問は、世界的な資源が現在及び将来、我々皆のお腹を満たすのに十分であるかどうかということではなく、我々が自らの行動を変えられるかどうかということなのです。


四番目。ラジ・パテル氏。これまた、インド人ぽい。国際食料政策研究所所属。シンクタンク関係の人かしら。

④ラジ・パテルの主張

◆安価な水と石油が枯渇した時:農業はより地域的に管理され、地域内で構成されるべき
 アメリカは、遺伝子組み換え農業技術で世界を先導していますが、それでも、アメリカ人の8人に1人は飢えています。豊作であった昨年でも、10億人以上の人が1日1,900カロリーに満たない状況なのです。今日の飢餓の原因は、食料の不足ではありません。それは、貧困によるものなのです。
 それに対応するために必要なことは、新しい農業技術ではなく、食料が人間の正当な権利と位置付けるための政治的な関与なのです。
 しかしながら、我々は耕作をしてきたその方法についても変換をする必要があります。今日の工業的農業は、大量の化石燃料と水に依存しています。平均的なアメリカ人は毎年、食料生産加工に500ガロン以上相当の石油を消費しています。将来、その安価な水と石油がなくなってしまうのは目に見えています。
 それでは、我々は将来どのような耕作方法をとらなければならないのでしょうか。これに答えるためには、中立的でピアレビューを経た科学を必要とします。2005年に、世界銀行の著名な科学者であるロバート・ワトソン氏は、最先端の自然・社会科学者とともに、2050年、人口90億人にもなる世界で食料供給をどのようにしていくべきかを政府(アメリカを含む)、民間部門及びNGO代表者に尋ねた調査結果をとりまとめました。
 3年にわたり、400人以上の専門家は、「曲がり角にある農業」として最近発表された熟考すべき報告書に取り組んだのでした。
 科学者は、遺伝子組み換え作物が世界への食料供給を行うという約束がほとんど履行できなかったものと結論付けました。その代わりに、研究は、世界への食料供給のために、政治的技術的な変化を必要とすることを示唆しました。明日の農業は、より地域的に管理され、地域内で構成される必要があって、気候変動と資源不足に対応するために、多様なアプローチが必要なのです。
 土壌、昆虫、植物生態学で構成される農業生態学は、その報告書が支持する農業技術の一つです。これは慎ましく水を使う農業システムであって、膨大な炭素排出量をなくし、外部からの投入を極力必要としません。
 これが最先端の科学です。しかし、それはアメリカに拠点を置く大農産企業にとっては本質的に利益をもたらしません。米国政府が昨年なぜ、この報告書に対する強い支持があったにもかかわらず、これを支持することを拒否したかの理由がおそらくその辺りにあるものと思えます。


何だか同じような話ばかり翻訳しているような気になってきたけれども、根気を集中して、5番目の人。ジョナサン・フォレイ氏。ミネソタ大学の環境問題専門の先生。環境とは言うけれども、文理どっち側の人なのかはよく分からない。

⑤ジョナサン・フォレイの主張

◆第3の道:マイケル・ポーラン氏と共に歩むことも、モンサント社と共に歩むこともできるが、しかし、どちらの枠組みでも我々のニーズを完全に満たすことはできない
 農業の未来については、幾つかのゴールを同時に達成しなければなりません。まず最初に、これから40年先の継続的人口増加、肉の消費増、バイオ燃料による生産圧力といったことを考えれば、世界の食料生産を2倍にまで増やさなければならないように思えます。
 次に、我々は農業経営実践上の環境影響も激減させなければなりません。農業は土壌、生態系、水環境そして大気さえにも広範囲にわたる損害を引き起こします。実際に、農業の環境影響は気候変動において最上位の要因となっているのです。
 我々はまた、世界の貧しい人々のために食料安全保障の改善にも努めなければなりません。1960年代の緑の革命が前時代より何億人もの人々を多く生存せしめた一方で、多くの世界で再び栄養不足人口が急増し始めています。
 最後に我々は、農業の抵抗力を増強させなければなりません。今日の高効率で、国際化された世界が多くの利益を齎す一方で、干ばつ、病気や価格高騰に起因する混乱に対しては、脆弱なのであります。我々は、未来のショックを上手に遮断するためにより多くの抵抗力を備えた食料システムを組み入れていかなければならないのです。
 現在、広く進められている農業の2つの規範があります。国際化・工業化された農業と、地域ベースの有機システムです。各々において、熱烈な支持者と批評家を抱えていますが、結論は出ていません。マイケル・ポーラン氏とも足並みを揃えていますし、モンサント社とも共存をしています。しかし、これらの枠組みのどちらにおいても、単独で我々のニーズを完全に満たすことができないのも事実です。
 有機農業は、土、栄養及び病害管理について我々に大切なことを教えてくれます。そして、地域農業は、人々を食物システムの中につなぎとめていきます。残念ながら、認証された自然食品の大部分は富裕層向けに供せられ、世界のカロリーの1%未満を提供しているに過ぎません。有機農業の規模を拡大させ、90億人に供給することは非常に困難であると言わざるを得ません。
 国際化・工業化された農業は、規模の経済性、高い生産力、より少ない労働力といった利点を抱えています。全体としてみれば、緑の革命は、巨大な成功と言えました。緑の革命なしでは、何億人もの人々が飢えたままであったでしょう。しかしながら、これらの大成功は、相当程度の社会的環境的コストを必要としました。そして、そのコストは持続不可能なものでした。
 たった1つの解決方法に投票するよりはむしろ、我々は危機を解決するための第3の方法を選択すべきです。両者の考えの良いところ取りをしましょう。そして、生産を促進するための新しい、両者を組み合わせた解決方法は、資源を節約して、より持続可能で、規模に応じた農業の構築であります。
 多くの有望な方法があります。高出力のコンポスト有機土壌治療を組み合わせた精密農業。土壌浸食と汚染を減らすために緩衝片を加えた点滴灌漑。水と肥料の必要量を抑えた新しい作物品種開発。この文脈において、遺伝子組み換え作物の慎重な使用は、慎重な公的評価を前提とすれば、適切なものかもしれません。
 農業におけるこの新たな「第3の方法」は、可能であるばかりでなく、必要不可欠なものなのです。まずはこれまでのレトリックを捨てることから始め、古い断絶の溝に橋を架けましょう。我々が立ち向かう問題は巨大です。そして、誰もがその解決に向けてテーブルにつく必要があるのです。


最後に登場するのは、マイケル・J・ロバーツ氏。ノースカロライナ州立大学の農業経済学者。准教。

⑥マイケル・J・ロバーツの主張

◆地平線の向こうまでの収量の減少:緑の革命は、不可思議な市場ではなく、作物科学への公共投資から生まれたものである
 およそ30年前、経済学者のジュリアン・サイモンは、昆虫学者で「人口爆発」の本の著者であるポール・エールリッヒと有名な賭けを行いました。その賭けは、資源価格の将来的方向性についてでした。
 エールリッヒ氏は人口増加によって資源不足と価格高騰につながると予想したのに対して、サイモン氏は人口増加を補償するための短期的な資源ブームを予測しました。その結果、サイモン氏が手際よく賭けに勝ったわけです。
 食料から金属、石油まで主要な日用品の価格は、すべて長期的には、横ばいあるいは下降傾向にあります。技術的楽観主義者は、この事実をもって、資源不足は脱工業化社会に影響を及ぼさないと考えています。ある意味で彼らは正しいのですが、工業化されていない一部の世界ではどうなのでしょうか。
 私は、収穫量が右肩上がりに上がり続け、まだまだ残されている石油の量が十分にあって、そして、地球工学が地球温暖化を解決すると考えている技術的楽観主義者の議論を心に留めておこうと思います。
 一方で、私は今日の災厄予言者が科学界の隅の方で2、3の声だけ沸き上がっているものとは思っていません。世界的な食料安全保障に対する本当の脅威が、次の10〜40年にわたって起きることは確実でしょう。その脅威は、地球温暖化と結合した形で、世界的な収入の不平等な分配プログラムに起因することでしょう。そして、それは生産量の相当な低下を引き起こす可能性があります。
 世界断トツ最大手の食料産業生産輸出業者であるアメリカ合衆国において、ウォルフラム・シュレンカーと私自身の統計研究によれば、地球温暖化によりトウモロコシと大豆で18〜35%の生産量低下と、この世紀末までにはこれらの損失が2倍になることが予測されます。
 国際食料政策研究所による最近のより広範囲な研究では、大規模な食料生産低下と全世界での価格高騰を予測しています。
 アメリカ国民にとって、これらの劇的な予測は、実はほとんど直接的な影響はありません。生鮮日用品は、トウモロコシ価格が10倍に高騰しても我々がほとんど気がつかないような小売食料品価格への影響なのです。トウモロコシ粉と牛肉から作られる4分の1ポンドのハンバーガーの価格は、おそらく1ドル未満の上昇にしかならないでしょう。我々が、その結果、肉の購入量を減らせると考えているとすれば、それは全く容易いことではありません。実際に、今日の需要の成長は、中国における人口増加と収入増に伴う肉の消費量急増に起因します。(1カロリーの肉を作るためには5〜10カロリーの穀物が必要なことを心にとめておいてください。)
 しかし、この惑星の人口のほぼ半分に相当する30億人は、1日2.5ドル以下で暮らしています。一般的に、貧困層の人々は彼らの収入の半分から3分の1を食料支出に費やしています。その食料支出のほとんどは、不可避の必需的食料品です。食料生産量が減少し、価格が上昇した場合、まず影響を受けるのはこうした世界の貧しい人々なのです。
 世界中で等しい収入があったとしたならば、価格はさらに高騰し、我々は肉の購入量を減らさなければなりませんが、飢饉のリスクはほとんどありません。
 尤も、それは新しい遺伝子組み換え種子が収穫量の成長度合いを速めて、地球温暖化によって想定される損害賠償を相殺するということはありえるでしょう。これまで、遺伝子組み換え作物は、発展途上国の生産量増加でなく、豊かな国での相応の増加だけを示してきたものでした。そして、私の研究では、生産量が増大したけれども、今後の鍵となるべき超高熱耐性の作物というものは未だ開発されていません。
 緑の革命は、不可思議な市場から生まれるものではありません。それは作物科学への公共投資から生まれ、そして、ノーマン・ボーローグのような人々が世界中に拡散していくことによって齎されるものです。しかしながら、作物科学研究への一般的な資金投入は、長年にわたって減少し続けてきました。今こそ、そういう投資を増やすべき時でしょう。


例によって例の如くかもしれぬが、日本人のバランス感覚は⑤とか⑥とかに近いのかしら(バランス感覚が一概に正しい感覚でないことは自覚しつつも)。①③連合軍VS②④連合軍みたいな論争は、はっきり色が付いていて色分けしやすいけれども、正直聞き飽きたところがありますので、それぞれの論評は控える。恐らく、イデオログの臭いを取り除いた上で議論することが前提になるのだろうな。WTOも大変なわけだ。
⑥はバイテク技術そのものには直接触れていないので何だかなという気がしないでもないが、寧ろ、従来の品種改良の延長線上にあるバイテク技術という捉え方(当たり前だが。⑤もそうだ)をすれば、⑤は日本の現状の方向性と大きくずれていないような気がするし、⑥みたいにことさらバイテクだからどうこういうような視点ではなくなってくるのかもしれない。確かに、従来の品種改良ならばオーケーで、バイテク技術は駄目って言うのは、線引きの考え方も意味不明であるし、何らかのキャップを被せて研究開発を推進するその考え方自体が相当に「神懸かって」いる(無論、憑いているのは、よく分からない神である)。


とは言いつつも、今回の6人の有識者と呼ばれる方々(しかもニューヨークタイムズ紙に掲載されたというだけで、御本人はそのコピーを常に携帯することで少なくとも5年間は講演会の引き手に困らないのではないか)のお話を拝聴させていただき、つくづく感じ入ったのは、遺伝子組み換えは危険かどうか、なんてレベルの話はとうの昔に終わってしまっているのだなということである。どこかの新しい省庁の委員会の諸氏がステイクホルダーの立場を勘違いして「危ない」「アブナイ」言うて堂々騒いでいるのとはまさしく対照的に、危険かどうかは科学的チェックでしっかり担保しましょうね、という枠組みを了解事項として議論をしているわけである。翻って、この瑞穂の国。未だに「危ないんじゃないの」「科学的評価はしていますって」「その評価って不正にやっているんじゃないの」「ちゃんとやっていますって」「だって、そんな話、聞いたことないもの」といった地を這うような低調な議論しか聞こえてこない。世界の議論よりも少なくとも一周半は遅れているぞということがつくづくよく分かった。赤道一周半ぶんであるからにして、追いつくのは相当に難しかろうて。



(補足)
本日の表題の意味を少しばかり補足しておくとすれば、国際会議の場で過激的な発言で会議の攪乱要因(差別的意味ではない)になることが知られている一方で、自国内ではしっかりと研究開発を進めている(遺伝子組み換えの野菜なんかも自分らで作っている、核開発も宇宙開発も何でもやるぞ)、そういう只管奥深い国なのである印度なのであった。


本日の音楽♪
「DEEP」(渋谷哲平