終末思想の歯触りの良さと、それを批判する側の歯切れの悪さ

LAタイムズ紙の今回のテーマは、偽科学。具体的には、終末思想(惑星衝突)についてである。荒唐無稽なSF映画を観て、本気にしてしまう人が多いのだという話。日本にもいるぞ、そういう輩。残念ながら友人にはなってあげられないが。そして、今回のターゲットとなった映画作品は、わたくしが生涯絶対に映画館に足を運ぼうとは思わないだろう極北作品であるとは思うのだが(4chあたりがその後買い取りそう…TV放映されても九分九厘九毛観ようとは思わない)。
http://www.latimes.com/news/nationworld/nation/la-sci-movie17-2009oct17,0,4123180.story

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(仮訳)
◆科学者は、『2012』のヒステリーを鎮めようとする
やがて公開されるアクション映画によって、インターネット上の噂話が活発化し、この動きを受けて数人の科学者達が公式声明を発した。世界は2012年に終末を迎えない。そして、地球が惑星と衝突する可能性は殆どないのだ、と。

 2012年に世界は終わりを迎えるか?
 読者がインターネットを調べたり、11月公開予定の映画「2012」の広報キャンペーンを信じているとしたならば、そう思っていても宜ないことなのかもしれない。何十冊にも及ぶ書籍や偽科学ウェブサイトは、地球と惑星の衝突や地殻大変動の大事件を意味する「最後の審判の日」の到来を予言している。
 通常、科学者は、こうしたインターネット上のヒステリに対しては、さしたる関心をもたないために、殊更眉を顰めたり、頭を振ったりはしない。しかし、数名の科学者達がこの事態を憂慮し、今度ばかりは傍観するだけではいられないと決心したのだった。
 「2年前は、週にたった1通の質問しか来なかったのですが」NASA科学者のデービッド・モリソン氏が言う。彼は、「宇宙飛行士生物学者に何でも聴いてみよう」というウェブサイトを主宰している。「最近は、1日当たりで十数件の質問があります。2名の十代の子供などは、『自分たちの命が終わってしまうのだから、世界の終わりなんて知りたくないんだ。』と言っていました。」
 モリソン氏は、そういった心配は全く根拠が無いものだと説明して安心させようと、太平洋宇宙飛行士協会ソサエティ(www.astrosociety.org)のウェブサイトに10のQ&Aを掲示したところ、多くの質問を受けているのだと言う。
 「2012年最後の審判の日、惑星ニビルと宇宙恐怖症」というタイトルで、記事はヒステリーのおおもとをばっさり否定して、古代文明人が我々より宇宙のことについて実はより多くのことを知っていたわけではなかったことが確からしいことなのだと説明をする。
 「世界は、2012年12月21日に終わったりはしません。」ロサンゼルスのグリフィス・オブザベートリー社の責任者であるE.C.クルップ氏は言う。彼は、今週木曜日に発刊された天文航空専門誌の中でこう宣言した。クルップ氏は、11月号の雑誌のカバーストーリーの中で、2012年の最後の審判の日の偽りについて暴き出している。
 モリソン氏は、1つの巨大な神話の幾つかの部品を合成させて愉しんでいるのだと考える。ニビルだとか惑星Xだとかと呼ばれる惑星が地球に衝突しそうであるという昔ながらのインターネット上の噂話。それから、マヤカレンダーが2012年を最後としているという事実。古代マヤ人は、現代の我々以上に何かを知っていたことを示唆する何か。そして最後に、世紀末思想家が終末の時が近付いているという彼らの確信を宣言するために、『2012』という物語に連中は飛びついたのである、と。
 北部カリフォルニアのエームズ研究センターで月科学研究所を率いるモリソン氏は、この現象を次のように造語した。「宇宙恐怖症(cosmophobia)」要すれば、宇宙に対する恐怖心。モリソン氏によると、我々が有する知識の脆弱性故に、我々が20世紀に学んできた宇宙に関する全てのことは、我々の存在に対する潜在的脅威の数を増やしているだけにしかなっていないのだそうである。
 暴れ回る惑星に恐怖する以外に、心配性の人々は、太陽が電磁力の影響で地球に襲い掛かるかもしれないと考えている。地球と我々の銀河の中心の間のある種の調整作用が大災害を誘発する可能性があるということを心配しているのである。
 クルップ氏は、デマを飛ばす人達がそれを信じ込ませているのだと言う。「古代のメキシコとグアテマラに存在したマヤ人は、時間を大切に考え、中心の天の川に対する超常的な位置関係から太陽系が動かされ、我々の地球がボウリングのピンのように危険な惑星にぶつからないようその位置を変えるために、カレンダーを用いていたのだそうです。」
 カリフォルニア大バークレー校の人類学教授であるローズマリージョイス女史によれば、マヤ人は実は何も予測していなかったということである。2012年という日付は、車の走行距離計の様に、古代のカレンダーがくるくると転がってきた時間を示しただけのものに過ぎないのだという。それは、単に新しいサイクルが始まるだけのことであって、終わりを意味するものでは決してないのだ、と。
 一部の著者は、地球が災害に逢う度に創造が行われた複数回の経験について言及するこのマヤ神話のアイデアを合体させようとしたのだと、ジョイス女史は考える。「しかし、予言はしていないのです。」と、彼女が言う。「マヤ人は世界の終わりを予測したりなんかしていませんでした。」
 モリソン氏は、心配になって彼に手紙を寄越してきた人々が、彼らの背後に控える伝統的な情報源や当局側の情報を信用できなくなった挙げ句に、アメリカ人の一部の人々の特殊な考えなのか、大部分の人を代表する考えなのか判断できずに、インターネットの詐欺師の犠牲になっているのだと言う。
 そういった状況下では、映画「2012」の誇大な広報宣伝活動は、未来に向けた90分のエンターテイメントというよりはむしろ、「2012年後の世界を先導する者を選ぶため」のガイド本となる黙示録のようにさえ見えてくるだろう。
 ソニーピクチャーズ社のスポークスマンであるスティヴ・エルザー氏は、こう述べる。「我々は、広告が架空のお話である映画を宣伝するためのものであるということを消費者の皆様にはよく御理解頂いているものと考えております。」
 モリソン氏は、映画の配給会社が偽のいくつかの科学ウェブサイトを作って「パニック」源として提供しているのだと主張する。大部分のサイトは、彼らが売ろうとしている本を書いたライター達によって、誤報と推測に満ち溢れているのだと言う。
 モリソン氏は、誤った警告を出し続ける人々のモチベーションには直接対処できないが、「たった1ドル儲けるだけのために人々を怖がらせて嘘をつくことは人後に落ちることなのではないでしょうか。」とも述べた。
 最も彼を悩ませていることは、ごく最近のメッセージの警戒水準が上がっていることである。
 「動揺して怖がる人々から、ますます多くの質問を頂いています。」一部の人達の中には、子供たちが食事さえ拒絶しているのだと言う。
 モリソン氏がオンラインで送った公表資料の中で、大昔の天文学者が地球に向かって突き進んでくる危険な惑星を見つけたこと、インターネットに掲載された所謂ニビルの写真が全くの架空のものであること、そして、問題のマヤカレンダーが2012年までで終わっているのならば、それはマヤ人が世界の終わりを予測していたということを意味しているものではないのだという説明を行っている。
 「私の机の卓上カレンダーは、2009年12月31日までしかありませんが、それをもって、私は、世界がその日に終末を迎えることを意味しているのだとは解釈したりしません。」