日本の新聞の科学面が一読者をわくわくどきどきとさせてくれない理由

勘違い記者が一生懲りないM紙などとは違って、真当な記事を多く散見できるLAタイムズ紙の科学面より。
http://www.latimes.com/features/health/la-sci-spine6-2009aug06,0,5052115.story

◆脊椎形成術がプラセボ(偽薬)以上の効果がないことを研究で明らかにした
椎体形成術(骨粗鬆症に起因する脊柱の間の隙間をセメント注射で充填する手術)は、患者の背中の痛みを和らげるためにアメリカ国内で年間8万回も施術されている。

脊柱の隙間をセメントで埋めるという広く行われている外科的施術がプラセボと同じ見せかけの処方に過ぎないということを、2つの研究グループが水曜日発行のNew England Journal of Medicineの中でそれぞれ別々に発表をした。
この処方施術は1990年代冒頭に初めて導入され、現在広く世の中に受け入れられており、痛みを和らげ、身体の機動性を向上させる上で非常に効果的とされてきた。このため、今回の調査結果は、臨床医に大きな衝撃を与えるものとなった。椎体形成術と呼ばれるこれら年間8万余にも及ぶ処方は、主に高齢者に対して施術されている。その施術数は、この6年間で2倍に増えた。
脊柱の間に出来る隙間は、一般的には、骨粗鬆症によって骨が薄くなることに起因する。通常、この施術には3千ドルの費用がかかるが、健康保険はこのおよそ3分の2が支払い対象となっているだけである。
この施術は広く受け入れられており、患者がプラセボ群に置かれることを恐れるとの理由から、研究者は患者を当該臨床試験に登録するのに苦労した。
オバマ大統領が、どちらの医学療法が最高の効果があって費用効果が高いかについて決定するために互いを試験する比較対照研究のさらなる利用を求めたそのときを同じくして、この調査結果がもたらされた。本調査結果はさらに強力な支援を得て追跡試験を行わなければならないと、ハノーバーN.H.のダートマス医科大学のジェームズN.ウェインスタイン博士が本報告の編集の中で記述している。
主に国立衛生研究所の支援を受けた新しい研究の1つは、この処方施術の発案者の一人でもあるメイヨー・クリニックのデイビッドF. カルメス博士と彼の同僚らが行ったものである。彼らは131人の患者を調査客体として取り上げ、このうち68人が椎体形成術を受け、一方61人が背中を麻痺させる見せかけの模擬施術を受けた。それは、まるで彼らがセメントを注射されているように、外科医は術部位を圧迫し、患者はセメントの特徴的な匂いにさらされた。
両方の患者グループは、追跡調査の間、明確な痛みの減少、生活の質並びに機能性の改善について報告をした。
オーストラリアのモナッシュ大学の伝染病学者ラシェル・バックバインダーと彼女の同僚らは、71人の患者について同様の研究を行った。その研究は、オーストラリア政府とセメントを製造するアメリカの会社によって資金供給がなされた。バックバインダーは、研究を実行するためにその会社からの補助金を受け取った。
カルメス博士は、こうした痛みの改善が両方のグループで背中を麻痺させるために長期間用いられてきた薬に由来しているのかもしれないという仮説を立てている。彼は、そのような痛みの緩和(麻痺)の効果を検証するために、第2の試験を開始している。
患者の認識だけに基づくプラセボ効果に由来する多くのあるいは全ての利益はあり得ないものではない。
期待外れの調査結果にもかかわらず、外科医らが近いうちにその処方を中止しようという気配はない。何故ならば、たとえそれがプラセボ効果であったとしても、現に痛みを和らげる効果があるのだから、とオレンジ郡のチャップマン・メディカルセンターの脊髄外科医であるタイ・タイヤナンサン博士は述べる。
現時点では患者に対して模擬施術と同等の利益について話さなければならないことから、「但し、我々が行っているインフォームド・コンセント(告知に基づく同意)の方法を変えることにはなりますが。」と博士は述べる。


過去の薬効の蓄積効果を追跡調査しているようではあるし、二重盲検とも言い難いし、標本数の確からしさや統計解析の詳細が不明なので、これだけを以て、一概なことは言い難いが、もしもこれが事実であるとすれば、「プラセボ畏るべし」ということになる。(プラセボに一定の効果があるかどうかについて疑問視する意見の存在も否定しない。)いずれにせよ、興味深い調査結果ではある。


尤も、こちらの国では、心理効果の深淵に思いを寄せる以上に、「実は効果のなかったインキチ療法」といった揚げ足取りの情報伝達に終始してしまうのかな。それはそれで、とてもさもしい日本人だな。


本日の音楽♪
「STAY WITH ME〜真夜中のドア」(松原みき