First Ladyのスピーチ(後編)

オバマ大統領夫人による高校卒業式のスピーチ後編。訳がいつまでも終わらない。長い。向こうの人はよく喋る。日本のように形式的で空虚な言葉の羅列ではないから、聴いている側はそれほど退屈はしていないのだろうが。それでも、長い。話す側の夫人のエネルギーも相当に大したものである。
http://www.whitehouse.gov/the_press_office/Remarks-by-the-First-Lady-at-the-Washington-Math-and-Science-Tech-Public-Charter-High-School-Graduation/

(仮訳)
若者が学校を巣立つことを支援するのは、国の最良の責務の一つです。(拍手)全ての子供たちや若者が学ぶことができると信じられる学校から巣立つということは、重要なスタートであり、それは、こうした私の話を聞いてくれて、歓迎をしてくれて、開かれていて、先生が教え子を愛しているという学校なのです。すべての学生に信頼される学校とは、成功が義務付けられ、最高水準が保たれていなければなりません。それは、固定観念に疑問を呈し、アフリカ系アメリカ人ラテンアメリカ系学生が数学と科学で優れていることを証明するような学校なのです。(拍手)それは素晴らしいことです。だから、皆でそのことを明白にさせましょう。そうしたことができる子を当然のように卒業させるようにしていくのです。

彼らを送り出す際に、私達は忘れてはいけません。彼らが単独でこの旅をしてきたのではないことを思い出さなければなりません。彼らは単独でそれを始めたわけではなく、単独でそれを乗り越えてきたわけではなく、単独でそれを終えようとしているわけではないことを思い出さなければなりません。誰もが言うように、卒業生や皆さんの家族に加えて、皆さんにはここで作った友人がいます。

少人数クラスの中で、お互いに支え合うことの必要性を実感しながら、皆さんが培ってきた友情というものを忘れないで下さい。皆さんには、この4年間、皆さんを支えてきたここにおられる素晴らしい先生とコーチと師がいます。彼らはここで皆さんに巡り会えたことを喜んでいます。彼らはこれからの4年間もその後も、皆さんになにがしかの助言を喜んで提供することでしょう。それが彼らの使命でもあるからです。彼らは皆さんの背中を見守っているのだから、疑問の声が大きくなり始めた時は、どうか彼らに相談することを躊躇しないで下さい。

そして、皆さんはより多くの何かを持っています。周りを見ても多くの人々と知識が皆さんを支え、皆さんの旅を助けます。それは新しいものではありません。働き、頑張った人々が皆さんであるように、確率に逆らい、低い予想を覆した人々にもなりましょう。そして、固定観念と障害に挑戦をする先駆者にも、私が知っている未来の皆さんがなる可能性があるのです。

例えば、チャールズ・ボールデン長官のような人がいます。彼は隔絶された南部で育ち、海兵隊員、戦闘機パイロット、それから宇宙飛行士になりました。ボールデン長官は、400回以上も地球の軌道を周回しました。彼は重力の世界から逃れる度に、固定観念を粉砕してきました。NASAの新長官として、このポストでは初のアフリカ系アメリカ人として(拍手)、彼は、月や火星及びそれ以遠の我が国の宇宙探査を導いていってくれるでしょう。

それから、伝説的なジャズピアニストであるハービー・ハンコックさんのような人もいます。(拍手)ハンコックさんについて話しましょう。ハービー・ハンコックを知っているかどうかは知りませんが(笑)、彼がちょうど16才の時は、アイオワ州のグリンネルカレッジの技術系専攻学生でした。彼の心は数学で充たされている一方で、彼の魂は音楽に掻き立てられ、彼はこの2つの好きなものを結合して、シンセサイザーとスクラッチングでヒップ・ホップ音楽の第一の波を起こしました。そして、昨年、67才の若さで、ハンコックさんは、グラミー賞のベストアルバムオブザイヤーを獲得しました。老人にとっても、これは悪くなくもないことでしょう。(笑)(拍手)。

それから、バラク・オバマ大統領のような人がいます。(拍手)ハワイの地名に由来するおかしな名前をもったこの二つの民族の血を引く子供は、(笑)彼の祖父と母によって、良質の教育と勤勉を学び、この国で何が出来るのかということを教え込まれました。

見て下さい。ソトマヨル判事、ボールデン長官、レファール博士、ハンコックさん、オバマ大統領、そして私でさえも、今皆さんが感じているかもしれない思いを抱いているのです。私達は疑念を持ちます。皆さんもそうです。頭の中に小声でいやらしい声が聞こえてきます。新しい競技場で競争することはできるだろうか?自分は皆と調和できるだろうか?自分は本当に準備ができているのだろうか?と。

しかし、結局のところ、私達は皆、準備ができているのです。ソトマヨル判事もボールデン長官もレファール博士もハンコックさんも私も。そして、バラク・オバマは、確かに準備を怠ってきませんでした。(拍手)卒業生の皆さんも準備万端であるということを告げるために、私はここにいるのです。(拍手)

皆さんの中の卒業生の一人であるアレキサンダー・アリソンは、航空技術を専攻するために、カンザス州立大学に通います。(拍手)アレキサンダー、あなたはおそらくNASAでボールデン長官も加わって、惑星間旅行をするでしょう。あなたは準備万端なのです。

それから、卒業生ジャレン・デイビスは、ジョージタウン大の生化学専攻学生となります。(拍手)あなたはレファール博士のライフワークを辿って、健康な細胞に損傷を与えることなく腫瘍を破壊する制癌剤の鍵となる技術を発見することでしょう。あなたは準備万端です。

それから、卒業生クリスティン・グレイ・サイモンは、音楽界に入ります。サイモン、その権利を獲得したと思う?(拍手)あなたは音楽に対するあなたの愛情をあなたが持っている数学と科学の知識を結合させながら、アルツハイマー自閉症、他の学習障害のための新しい治療法を開発するでしょう。おそらく、あなたはハービー・ハンコックのような技術を使うことになるでしょう。クリスティン、あなたは準備万端です。

それから、卒業生リジョン・バインズはワシントンD.C.の若き前副市長で、南部のスワニー大学のユース政府の将来の首相です。あなたはバラク・オバマの先例にならって、あなたの世代に彼らが信じることができる変化をもたらすことでしょう。何故なら、あなたは準備万端なのですから。

卒業生の皆さん、皆さんはリーダーシップの鎧を纏い、次世代の革新者と企業家の先導役としての伝説になる可能性が十二分にあります。だから、次の階段を上がる時なのです。駆け上がって下さい。それが今です。弁解は無用。宜しいですか?

観衆:その通り!

オバマ夫人:弁解無用。皆さんの将来は、今日、皆さん自身の手の中にあります。この卒業証書、教育とともに、チャンスの扉は皆さんの前にとても広い形で公開されています。邪魔するものは何もありません。与えられたものを最大限に活用するかどうかは、皆さん次第なのです。

そこで、いくつかのアドバイスをしたいと思います。皆さんを受け入れたキャンパスの土に足を踏み入れた時には、皆さんは自分自身の経験に対する責任を思い出して下さい。私が皆さんにして欲しいことは、自分の声というものを所有することです。それを所有して下さい。新しい環境によって、脅迫をされないようにして下さい。 思い出して欲しいのです。他の皆も同じ位置にいるのです。クラスの中で積極的な参加者でいて下さい。絶対に、決して、黙って座っていないこと。最初の日に手を上げて、自分自身の声で質問をして下さい。間違うことや意味不明に聞こえることは怖いことではありません。尋ねることが皆さんが学ぶ唯一の方法であるのですから。皆さんの教授は、皆さんが率直に尋ねることが皆さんの為であるということを知っています。そして、教授をよく知るようにすることです。彼らの何か一つでも知っていて下さい。自己紹介をしましょう。彼らの勤務時間に出席をして下さい。彼らに質問を求めて下さい。彼らと直接対面して下さい。彼らが皆さんが誰であるのかわかっているということを確認して下さい。そして、皆さんがわからないということについては何でもはっきりさせるよう彼らに要求しましょう。それが彼らの仕事なのですから。

そして、思い出して下さい。多くのことを勉強する対象が大学にはあります。御両親の皆様、皆様が聞きたくないことでしょうけれども、そこにそれがあるのだということを私は知っているのです。(笑)そして、皆様方全員に対して、全ての大学経験について皆様自身の扉を開けておいて欲しいのです。新しい友人を作って下さい。他の人々との文化や経験について学んで下さい。単に皆さんの気分をよくさせるだけの人々とは付き合わないで下さい。皆さんのタイプでない人々の何人かを知るようになって下さい。少しばかり恐ろしく聞こえるような違うクラスを尋ねて下さい。言語を学んで下さい。それは、バラクと私も含めて、私達がもう一つの言語を知らないために、残念に思うことの一つなのです。それを学んで下さい。沢山の本を読んで下さい。それはバラクが習慣化していることの一つです。彼は何でも読みます。旅をして下さい。学期を海外で過ごして下さい。皆さんにはそういう機会があります。

私達が暮らすこの世界の多様性を受け入れることにチャレンジをして下さい。この世界がキャンパスや都市よりも非常に小さなものであるということに疑問を呈して下さい。この世界はとても大きなものです。

そして、忘れないで下さい。人々が皆さんのことを知っているようにさせて下さい。恐れないで下さい。皆さんの話、皆さんの経験は価値があって、その話は聞くに値するものであるということを分かって下さい。

皆さんが少し奮闘すると、どうなるのでしょうか?どうなります?それは、皆さんがそこに属さなくなるということを意味しません。皆さんが少しばかり一生懸命に働かなければならないということを意味するだけです。少しばかり激しくやるという。

そして、今日ここで言ったように、この日を忘れないで下さい。この日を忘れず、この瞬間を導いてくれたすべての激務を忘れないで下さい。そのようなもの全てを決して無駄にしてはいけません。

困難な時を過ごし、ここまで辿り着き、一生懸命に働いて、自分だけで作り上げるのが難しいものに立ち向かい、あらゆる機会を最大限に活用して戦うためには、考えて頂きたいのですが、より多くの信頼がなければなりません。より多くの信頼です。

たとえ何が起こっても、既にこれまでに打開を可能にしてきた若者という最も大きな贈り物の一つを皆さん自身が持っているということを思い出して欲しいのです。皆さんには信頼するあなたの人生の師と親がいるのです。

2009年卒業生の皆さんの確固とした教育基盤、夢、そして、家族の支え、頑張ろうという意欲とともに、私は皆さんにお約束することができます。皆さんは準備万端です。さあ、それぞれの仕事場に向かいましょう。そして、おめでとう。

ご静聴ありがとうございました。(拍手)


偉人伝は兎も角として、途中以降から「なんでもやってみなはれ」と畳みかけてくるいくつものアドバイスというやつは、「あちら様では、こういった形で常々お母さんやお父さんが子供にお説教をしているのだなあ」と、わたくしはしみじみ感じ入ってしまった。
日本でこんなことをしたら、すぐに子供に耳を塞がれて逃げられてしまうか、「偉そうに何言っているの」と拗ねられるのが関の山だろうに、宗教的環境もあって、彼らは教条的な物言いに馴れているということなのだろうか。


<個人的感想のまとめ>
*公の場で愛を語ることの難しさ(気恥ずかしさ)
*実社会に旅立つという意識の大小
*誰でも、マイノリティにでもチャンスがあるというオバマ政権のカラーそのものを反映するスピーチではあったが、実はこの学校はアッパークラスに近いんじゃないか。一方で、ミドル・ロウアーの地方の大多数の無名校の学生達はこの「平等の機会」というものをどのように考えているのであろうか。うーむ。


本日の音楽♪
「ZOO 〜愛をください〜」(蓮井朱夏