啼かないで、チャリ坊

英国皇太子の経営する企業が扱うインキチ・デトックス商品の新聞記事について語った件について(3月16日付け「美容院で「プリンスのような髪型」と注文したら斬新なドレッドパーマではなく、きっちり七・三の刈り上げにされてしまうか?」参照のこと)、'voice of young science'という英国の若い科学者の会という(真っ当そうではある。『若い根っこの会』とはおそらく関係ないと思う)科学者団体が、こうしたデトックス商品に対するコメントを寄せて掲載している。
およそ真摯な信念を有する科学者であれば、デトックスへの思いは辛いか冷たいか渋いか、いずれにせよ、批判的な内容にならざるを得ないだろうとは予想をする。
旧聞に属する話題ではあるが、いったいどういったトーンで論難をしているのか、今一度取り上げてみたいと思う。
http://www.senseaboutscience.org.uk/index.php/site/project/14/

(仮訳)
デトックス:怪しいデトックス製品について非難をされる英国皇太子 - 2009年3月

VoYS(voice of young science)が行ったデトックス(解毒)製品に関する最近の調査に続いて、Edzard Ernst教授が、英国皇太子と彼の会社Duchy Originalsがアーティチョークタンポポを原料としたハーブのデトックス・チンキを販売したことについて批判の声を上げた。


Tom Wells(VoYS):「この会社が全く意味のない製品を販売しているということも論外なことですが、それ以上に、王位相続人が1ケ£10でそのような行為に加担をしていたこと自体がなにより不適切なことには違いないでしょう。チャールズ皇太子デトックスチンキを契機に、British high streetでの同製品の販売終結を切に願います。」


本件に関するいくつかのメディア報道については下記を参照のこと。
BBC News:チャールズ皇太子の『インチキ』デトックス
*Guardian:『迷信と明白なインチキ』皇太子のデトックスについて専門家の判断
*The Telegraph:チャールズ皇太子の怪しいデトックス治療で『騙しの横行』と科学者が主張


◆VoYSがデトックスに関するペーパーを発出 - 2009年1月

デトックスは、薬物汚染・中毒の治療法ではなく、何の意味も持たない。本日、若い科学者と技術者は、デトックスの効能に関する証拠について取り上げ、その関係文書を公開するとともに、市民に警戒を促す行動を開始することとした。それらから明らかになったことは、以下のとおり。

1.デトックスの定義について同じ使い方をしている会社はない。
2.デトックスの効能の論拠となるような証拠はほとんど提示されていない。
3.大多数のケースで、我々が連絡をした製造業者と小売業者は、クリーニングまたはブラッシングといったようなデトックスとしてはありふれた名称に変えていることを白状した。
4.£1-2(約\160〜320)のデトックス飲物から、£36.95(約\5,900)のデトックス用浴室アクセサリーまでの価格帯の幅が見られた。

現在、足パッチから毛髪増強に至るまであらゆる人々を対象にデトックスの効能が会社と個人によって用いられている一方で、彼らはデトックスのメカニズムがどういったものなのかに関して信頼できる証拠や一貫した説明を提供できていないということが関係文書の中で示された。

調査はVoYSの300人以上の研究者のネットワークによって実行され、『There Goes The Science Bit』として昨年出版された。その際、一部の科学者集団が、製品メーカーに電話をして、あやふやな科学的主張を白日の下に晒した。広範囲にわたる出版広告によって、『デトックス』という言葉が繰り返し押し寄せては、助けの手を差し伸べようとしているその実態の多くの事例を把握することが出来た。これは、証拠収集と新調査に係る迅速なネットワークの賜である。

本日、関係文書が公開され、 生理学者、生化学者、医者、薬剤師といった関係する科学者の多くの手によって、デトックスに関する小冊子(Debunking Detox:デトックスの正体を暴く)が出版された。小冊子では、肝臓と腎臓こそが素晴らしいデトックスのシステムなのであって、そのために製品や治療法に多額のお金を使う必要はないと説明をしている。

(中略)

本件に関するいくつかのメディア報道については下記を参照のこと(リンク有)。
BBC News OnlineとBBC Breakfast:科学者がデトックス神話を退ける、Alice Tuffインタビュー
*Guardian:デトックス治療は金の浪費であると科学者が言う
*Daily mail:元日から始めるデトックスダイエットは『完璧なお金の浪費』と専門家
*Independent:安易なデトックス製品は『時間の浪費』
*The Daily Telegraph:デトックス製品の効能はあやふや
*Daily Miller:大部分のデトックス製品が効き目がないと科学者は言う
マリ・クレールOnline:デトックス治療は『詐欺』と科学者は言う
BBCラジオマンチェスター:Listen(2h44m)


案の定の内容ではある。自然科学者として、確かな証拠や根拠を持たない主張は科学の体を為さない(場合によっては、仮説の域にさえ入らない)というスタンスは、さもありなんではある。
わたくしの住むこの国においても、解毒や老廃物除去を高らかに謳う様々なデトックスの広告を目にする。減量や美容と兼ねて、老若男女から何やら高額な報酬を要求する業態があちらこちらに存在をする(需要と供給の関係から農村部ではあまり見掛けない)。
尤も、心身に悪影響を及ぼすような有害療法は論外として、わたくしは寛容であるので、万が一、毒にも薬にもならない屁のような療法を操る業態人が居ったとして、そこへ大金を投じる人に対しては、経済の循環への寄与だけは認めてあげたい(投じられた側も然るべし)。


また、この英国科学者集団は相当に活動的である。行動する科学者としての内容に吝嗇をつけるつもりはないが、以下一、二点、贅沢を言いたい。
彼らが作成したリーフレット『Debunking Detox』について、誰でも閲覧可能となっており(http://www.senseaboutscience.org.uk/PDF/Detox%20leaflet.pdf)、これへの感想としては、少なからず素人相手(特に文字情報を吟味しないで暮らしている印象派の人々)には難しく受け取られ敬遠されるのではないのかなということと、連中はダイオキシン類や重金属の話題を持ち出してくることが多いので、そういった主張への反証材料がより具体的かつ効果的ではないのかしらといったこと。

リーフレットの当該箇所の記述は、以下の通りである。

デトックスの効能その1:毒素は体内に蓄積することから、これを絞り出し、浄化する必要がある

『毒』あるいは『毒素』という用語は、化学物質が何らかの人体的危害をもたらすことを意味するものとして用いられています。実際に、全ての化学製品は有毒である可能性があります。例えば、1錠の400μgビタミンAタブレットは有益かもしれませんが、これを20錠服用すれば肝臓に損傷を与えます。
大部分の化学物質は、体内に蓄積しません。それらは、肝臓と腎臓の働きによって人体の外に排出されます。体内の化学物質の洗浄をすると効能で謳うデトックス製品の多くは、利尿剤を含んでおり、それは尿の排出量を増やす作用があります。これによって、水分と多少の塩分を除去します。極端なケースになると、利尿剤は体内の塩類濃度低下を引き起こす原因や最悪の場合は昏睡を引き起こす危険性があります。サウナに入った時と同じ様な脱水作用によって、一時的な体重減少を成し遂げられるかもしれませんが、その後、水を飲めば体重は回復するだけの短期的な現象です。


デトックスの効能その2:『排出器官』を解毒しなければならない

デトックス製品に書かれている『排出(Eliminatory)器官』とは、肝臓、腎臓及び消化器系のことを指します。例えば、過剰な薬剤投与によって、そうした器官が障害を受ける程度まで危険な服用をしない限りにおいて、これらの器官を浄化する必要はありません。
仮にこうした必要がある場合は、胃洗浄、輸血又は透析といった医学処置を行います。


デトックスの効能その3:デトックス製品は汚れた遊離基(free-radical)を中和する働きをする

デトックスのトニックやサプリメントには、しばしば、体内の遊離基を中和するのを助ける酸化防止剤を多く含んでいると書かれています。
遊離基は、体内で作られ、細胞やDNAに損傷を与えることがありえますが、細菌やウイルスからの保護システムとして免疫系で重要な役割を果たしてもいます。
通常のダイエットにおいて食物を使うように、体は自ら酸化防止剤を作ります。外から添加された酸化防止剤は、腎臓によって外に排出されます。


チャリ坊、しっかり読んだか!?


本日の音楽♪
「WOMAN〜Wの悲劇より」(薬師丸ひろ子