FoxTail

新嘗祭関連の記載(4月9日付け「今日もご飯を有り難く戴けるということ」を参照)において、「流石に皇居内で粟は作ってなかろうて」というわたくしの発言に対して、皇居内で粟も作られている旨の的確な情報を頂戴致し(例年5月上中旬頃の種まきとなるらしい)、改めて粟についていろいろな文献に当たることができた。
そこで、いくつか粟に対して初めて知ったエピソードがあるので、これを以下に備忘的に纏めておく。


①登録されている品種は現在たったのひとつだけ。
オカミで開発をした品種や知的財産権利として登録された品種のデータベースがあったので、これで粟の検索をかけてみたところ、たったの1件しかHITしなかった。
「あわ信濃3号」というお堅い名前の、長野県(の試験場)が作った品種。
粟の品種改良は、お米ほど熱心ではない。というか、極北に近く冷たい。
では、これ以外に粟の品種が無いのかというと、粟自体は『ユーラシア地域全体に分布しており、各地で明瞭な地域品種群が存在』するhttp://www.nias.affrc.go.jp/seika/nias/h17/nias02007.html
ともある通り、日本の中でも、粟の主産地である岩手県や上記長野県を始め、地域々々で様々な粟の昔ながらの品種が残っている。こうした在来系品種は、結構数多く存在する(例えば、「虎の尾」「大槌10」「西根31」「十五夜」「古里一号」等々)のであるが、栽培者の減少とともに品種の存続も困難を来す状況になってきているため、遺伝資源としての保存が鋭意行われている模様(素性のはっきりしない在来種が殆どということもあって、系統立った整理は大変であろうと思う)。
なお、先の「あわ信濃3号」にも、仮面ライダーよろしく「粟信濃1号」「あわ信濃2号」といった兄弟分がおられるようではある。
しかし、在来系品種の多くは、明確な人為的操作(品種改良)のプロセスを経て作り出されたものではないので、やはり御先祖様(ネコジャラ市のエノコログサ)の血が濃いのか、倒れやすいという致命的欠陥を有し、これの改良が急務である。
そこで、だが、しかし、そうなると、一体誰が力を入れてこれに取り組むというのだろうか。
また、雑草取りの手間も依然致命的である(少し目を離した間に、雑草との見分けが付かなくなってしまったりする…)。


②粟にも糯品種と粳品種がある。
粟の糯か粳かの違いは、米と同じように、デンプン成分の一つであるアミロースを含むかどうかの違い。このアミロース含量が少なくなるほどに、モチ性(粘り気)が高くなる。同様に、糯粳の別があるのが、玉蜀黍。最近は、小麦でもモチ小麦の品種が世界で初めて作られたという話を聞いた。
新嘗祭には全国各地から毎年五穀の献上が行われるようであるが、粟もその中の一つで、その品種は糯品種であったり粳品種であったりと、年により様々であり、どちらかだけでなければならないという決まりではないようである。
依然として引きずる疑問としては、お米と一緒で、粳と糯が交雑したりしないのだろうか。そもそも、畑の脇に生えているエノコログサとの交雑なんかがあったりしたら、品質低下も甚だしいのではなかろうか。翌年の種になるのか。大丈夫なのか。等々。疑問は尽きない。


③粟の日本への渡来は、米よりも新しいか。
長い間、日本の主食は粟や稗であって、近世近代になって、漸く日本の主食が米になったということなのだそうである(江戸時代末の平均米食率が約60%)。
http://www.mitene.or.jp/~tada-iwa/07sinnpojiumu.htm
詰まるところ、その昔は、粟と米は同等であったと。
そのような過去の栄光を持つ粟ではあるが、様々なLOGを見ると、粟の方が米(稲)よりも日本での栽培歴が古いという説と、否、米の方が古いという説とが見られる。
果たしてどちらが本当なのか。


ちなみに、表題FoxSmellと言えば、或る種の葡萄の香り。
日々是勉強。多謝。
本日の音楽♪
「いっしょに帰ろう」(GOING UNDER GROUND