今日もご飯を有り難く戴きますといえること

宮中で行われる恒例の祭祀行事の一つ「新嘗祭」は、謂わば五穀豊穣を神恩に感謝する秋の収穫祭であるが、今年もそれに向けた皇室行事(献上するお米の種まき)が始まった。農作業というものは、つくづく季節感をかんじさせる。
http://sankei.jp.msn.com/culture/imperial/090407/imp0904071600001-n1.htm
そこで、素朴な7つの疑問。
何処にも答えが見つからないので、お米作りの専門家でも何でもないわたくしが勝手に予想をして独断で回答をする。


その1:宮中で使われるお米の品種は、ここ数年ずっと「ニホンマサリ」(粳米)と「マンゲツモチ」(糯米)という、言ってみれば非常にマイナーな品種であるが、それは一体何故か。

推測①:日本で最もポピュラーな品種と言えば、「コシヒカリ」「ヒヨクモチ」といったところのようである。「ニホンマサリ」も「マンゲツモチ」も非常に栽培のしやすい品種(例えば、病気にとても強いとか収穫量が多いとか)なのかと思って調べてみたら、重要な病気である「いもち病」に殊更強いことはないし、収穫量も普通並みである。では、土地(皇居のある東京)の気候によく適した品種なのかというと、確かに広域適応性は高そうであるが、そういった品種は「コシヒカリ」を始め他にも多くある。すると、品種の来歴に特段の神々しい由来か何かがあるのかと思ったが、どうもそういったことでもなさそうである。品種の名称自体は、大変に福々しく、国家安寧に向けて縁起が良さそうではあるので、そもそもの採用のきっかけはそこいら辺にあったのやもしれぬ。
結論としては、昨年の収穫時のお米(精米する前のもの)をそのまま種籾に使用する習わしなので、結局、同じ品種が連続して使われてしまうのではないかというのがわたくしの推測。


その2:ずっと同じ家系の種を使い続けていて大丈夫なのか。

推測②:稲は自殖性、つまり、自分の花粉が自分の雌しべにくっついてお米になる。であるから理論的には、「ニホンマサリ」から採れた種は全て「ニホンマサリ」であって、使用に問題ない。しかしながら、長年同じ家系の種を使い続けていると、いくら遺伝的に固定されていると言っても遺伝的分離が起きる可能性、あるいは、糯粳の交雑の問題(自殖といいながら僅かながら他殖もする)が起きる可能性は否定できない。という訳で、どこかの段階で種の「更新」作業が行われているのではなかろうかと睨む。また、「ニホンマサリ」と「マンゲツモチ」は、交じり合わないように一定の距離を離して植えているのだろうと思う。


その3:天皇陛下自ら、種まき(お手まき)、お田植え、収穫をされているが、それ以外の雑草取りや病害の防除、水管理などの作業もやはりされているのか。

推測③:専門スタッフの担当であると思う。その道のプロのスタッフであるに違いない。作物の中でも総作業労働時間が少ない方の部類に入るお米ではあるが、それでなくても多忙な身で、全作業に傾ける時間を割ける筈がなかろう。
なお、農薬や化学肥料をどれだけ使っているのかという点にも関心は及ぶが、英国のプリンスのような極端な主義主張は、こちらの宮中からは聞こえてこないと思うのであるが、どうだろうか。田圃ビオトープ化は、そこそこ手を入れていそうではある(鴨、いるかも)。


その4:毎年、4月中旬種まき、5月中旬田植え、秋(10月上旬)収穫といったスケジュールであるが、今後の地球温暖化の影響や如何。

推測④:他のスケジュールも詰まっているので、おいそれと日程は変えられない。また、品評会のようなものがあれば出来映えの詳細な吟味が必要になるが、そうしたこともなさそうである。したがって、短中期的には現存の品種と作業スケジュールで十分対応が可能な範囲内にあると思われる。
ところで、東京という土地柄、8月の極端な低温や、夏から秋の慢性的な日照不足といった局地的な異常気象(冷害)は、江戸時代は兎も角として、ここ何十年かあまり聞かないので、異常気象と都会人が騒ぐ度に、脳裏に「?」という記号が浮かぶのも事実。


その5:気象リスクはあまりなさそうであるとして、他のトラブルリスクはどうか。献上品の量が少なくて困ったというトラブルはあり得るか。

推測⑤:流石に盗人は出ないだろう。病気や害虫による減収についても専門スタッフのケアが期待できる。最も想定される突発的トラブルが、野生鳥獣による食害。近隣には多様な生物が棲息していそうなので、思わぬ被害があるやもしれぬ(イノシシは流石に出ないだろうが、例えば、タヌキ、アライグマ、カラス、ドバトなど)。しかし、案山子や目玉ボール、キラキラテープはぶら下げていないのではないか。鳥避けのネットは掛けているかもしれない。
なお、推定収穫量については、10アール当たり平均6〜7俵穫れるとして、田圃の面積が2.4アール程度の模様であるから、0.24a×400kg/10a≒100kg弱。祭祀に用いるには十分な量である。


その6:新嘗祭の神饌は米と粟のはずであったが、粟の栽培はやっていないのか。

推測⑥:粟の栽培自体はそれほど難しくなさそうではあるが、なにぶん粟が育っている様は見栄えがしないだろう。そもそも粟の品種って何かあるのだろうか。そして、粟こそ鳥に啄んで食べられてしまいそうである。
おそらく神前に対して、「米」ということに別格の意味が込められているのであろう。米SPIRITである。ちなみに、養蚕も(皇后陛下の)宮廷行事に組み入れられていた筈。


その7:田圃に使う水はどうやって確保しているのか。

推測⑦:いなかで見られるような水利権の存在は否定できそうである。皇居のお堀から水を引いてはいないだろう。水質が心配。したがって、都の水道局から引かれた上水を使用しているのではないかと思われる。
田圃の面積が2.4アール程度の模様であるから、240㎡×20cm≒50㌧弱の水を1回に利用する。これは小学校の標準的プールの水の約1/5〜1/6の量であるから、期間中に何度か取水を必要とするにしても、それほど莫大な水を使っているわけではなさそうである。



本日の音楽♪
「ANIMAL LIFE」(MY LITTLE LOVER