詩歌

新川和江

学生時代の愛蔵版「恋人たち」。池田浩彰の装丁画もお気に入りだった。 誰も知らないだろうと思っていたら、この詩集からの何編かに曲がつけられ、ママさんコーラスの愛唱歌になっているらしい。 銀座・十二月(新川和江) 銀座 銀座 十二月 買い物もしない…

村上昭夫

岩手県生まれ。夭折の詩人。 宇宙を隠す野良犬 (村上昭夫) 野良犬はなぜ生れてきたのか それが分る時 宇宙の秘密が解けてくる それはなぜ好かれないのか その肌はなぜ悪臭に汚れていて なぜみなに追われるのか それはなぜ痩せているのか 消えそうにも痩せて…

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20090813-00000001-natiogeo-int ◆アルコール依存症にクズエキスが有効か ツル植物のクズ(葛)は非常に侵略性が高く、アメリカ南部では異常繁茂することで悪名高いが、最新の研究によると、アルコール依存症患者…

山之口貘

妹へおくる手紙(山之口貘) なんといふ妹なんだらう ――兄さんはきつと成功なさると信じてゐます とか ――兄さんはいま東京のどこにいるのでせう とか ひとづてによこしたその音信(たより)のなかに 妹の眼をかんじながら 僕もまた 六、七年振りに手紙を書かう…

高見順

帰る旅(高見順) 帰れるから 旅は楽しいのであり 旅の寂しさを楽しめるのも わが家にいつかは戻れるからである だから駅前のしょっからいラーメンがうまかったり どこにもあるコケシの店をのぞいて おみやげを探したりする この旅は 自然へ帰る旅である 帰…

谷川俊太郎

突忽として昭和の時代に登場したこの詩人は、平成の半ばも過ぎても全く色褪せない。 春(谷川 俊太郎) かわいらしい郊外電車の沿線には 楽しげに白い家々があつた 散歩を誘う小径があつた 降りもしない 乗りもしない 畠の中の駅 かわいらしい郊外電車の沿線…

吉行理恵

「記憶のなかに」、「小さな貴婦人」や「男嫌い」といった小説群も印象深いこの作家の詩の魅力は精神の負の繊細性とその美。わたくしの10代の頃の共感の作家であった。 脱殻(吉行理恵) さざ波を とびこえて 駈けてゆくのは魚ですか? 笑いながら駈けてゆ…

山本沖子

今月は、知る人ぞ知る詩人の作品を紹介する。 おしえてください(山本沖子) 私はこんなにもなにもできなけれど たった一人のおともだちは お料理でもお裁縫でも なんでも上手にできるのですと 悲しいことをつぶやいて おろかな私の双の頬にいっぱい涙が流れ…

立原道造

と或る春の休日、弥生町の記念館の前では今日も沢山の熱心なファンの姿を見ることが出来る。 のちのおもひに(立原道造) 夢はいつもかへつて行つた 山の麓のさびしい村に 水引草に風が立ち 草ひばりのうたひやまない しづまりかへつた午さがりの林道を うら…