捲土重来を期してミステリー批評誌に活を入れるための覚え書き

今年も本年版の「このミス」が書店に並び、わたくしは半ば義務のように購入をする。
臨時ムック版も含めて二十年弱、創刊号から欠かさず揃えている。
それほどのファンなのかと問われれば、それほどのファンではありません、ときっぱり答えたい。単なる習慣、慣性の法則


今回の「このミス」であったが、近年になくがっかりさせられたベストテンの顔ぶれというのがわたくしの感想。
作家の好き嫌いだけの問題ではない。
わたくしは専ら国内作家にしか興味がないので、そちらを念頭に話したいと思うが、この大衆化・陳腐化はどうしたことだろう。
ちっとも心をときめかせてくれない意外感のないラインアップ。


近年そう言う傾向が強くなってきているなという自覚症状は感じていた。けれども、昨年はどちらかといえばマニアックな作品が幾つか散見され、「幅」が出来てきたりして、原点回帰を感じたのかしらと評価していた。今年のミーハー加減な内容からは独自の色といったものが全く見えてこない。
「ダビンチ」のベストテンだと言われても信じてしまいそう。


それぞれのベストテン本に違いはあってよい。自社に有利な作品を掲げることも否定しない。
「このミス」でもわたくしはそれほどだとは思わないが何だか妙に贔屓にされる作家というのは存在していて(例えば、昔で言えば、オーサカとかシミタツとか鮫とか。逆に、飯島、古川、奥泉といったところは辛い評価かも)それもやっかまない。


しかし、それにしても、だ。今年の作品は、書店の販売エリアを最も多く占領していそうな万民の大衆が好みそうな個性のない作品ばかり。
何度も誤解のないように言っておきたいが、ベストテンの作家たちが嫌いだと言っているのではない。


ついでに、雑誌の作り(編集方針)についても釘。
わたくしが興味はあるのはランキング順位とその内容だけであるので、それ以外の諸々の企画モノの内容については本来どうでもよいのだが、余りにその内容が詰まらない。どういうセンスの雑誌づくりをしているのだろう。流行雑誌でもあるまいに。一般大衆化もここにきわまれりの編集方針。


唯一の面白味は、「名探偵がいっぱい」の漫画。
わたくしが名前を知らないアニメータの作品。どことなくあの「三留まゆみ」を思い出させる画風センスで宜しい(大昔の本来のタウン情報誌であった頃のぴあとか知る人ぞ知る星占い専門誌のはしりであったμとかの懸賞コーナー…あの頃の作品を彷彿させる画風センス)。
お宅味と言われようが、マニアックな味は必要不可欠。


今年のベストテン雑誌の中で、最も独自カラーの滲み出ていたのは、「本の雑誌」。
選出評価者が一人に限定をされているから、自ずと独自性が出やすい。「このミス」も評価者や採点方法を変えるとかもう少し工夫が必要ではないだろうか。
そんな辛口の批評をしつつも、おそらく来年も購入する。叱咤激励。


本日の音楽♪
「with or without you」(marcela)