人は見た目で騙される

新聞ではあまり報道されていなかったが、先般訪日したオバマ大統領は、お食事会での手土産に「青い薔薇」の花束を受け取っていた。遺伝子組み換え技術で作出され、世界唯一無二の、不可能の代名詞を持つ、青い色素を有し、その不可能を可能にした、あの薔薇である。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/visit/president_0911/yushokukai_gai.html

さて、本日はオバマ大統領の次期有力(?)対抗馬のお話。この人に青い薔薇を贈っても、神の領域を超えているとか何とか言ってきっと心底から喜んではくれないとわたくしは想像する。けれども、そうだとしたら、それはそれとして、見かけだけに踊らされない心根は尊敬に値する。
LAタイムズ紙Opinion欄より。
http://www.latimes.com/news/opinion/la-oe-blumenthal15-2009nov15,0,2142138.story

サラ・ペイリン共和党にとって福の神か厄の神か
自著『Going Rogue』は、党主流派からは忌み嫌われるが、草の根の大衆にとっては天からの授かり物なのだ。
(By Max Blumenthal)

 イデオロギー的に喚起された保守的な草の根の新たな勢力を得るべく2010年の復興を目指す共和党において、サラ・ペイリン女史の影響は、現時点で比類のないものがある。彼女は、民主党のヘルスケア計画の一部を「死のパネル」だと主張し、改革に対する保守層反対派に火をつけ国を挙げての大衆議論化させた張本人である。最近では、北部ニューヨークでの特別議会選挙において、人気のあった共和党の穏健派の政治家デデ・スコッツァファーバ氏を差し置いて、無名の極右の第三の候補者であったダグ・ホフマン氏を支持したのだった。現在、代作による伝記ではあるけれども彼女の著書「Going Rogue: An American Life」は、火曜日まで公式に発刊されていないというのに、数週間もの間アマゾンドットコムの事前予約で第一位を確保してきた。
 そして、ペイリン女史にはもう一つの顔がある。2008年の大統領選の期間中、一部のベテラン共和党員らは、彼女の破滅的な影響について警告を発した。彼らは、彼女の過激主義が党を分裂化させるおそれがあると主張した。ニューヨークタイムズ紙のコラムニストであるデービッド・ブルックスジョン・マケイン上院議員の熱烈支持者であるが、ペイリン女史が「共和党にとって致命的な癌になり得るものだ」と述べた。また、レーガン大統領のスピーチライターであり、ウォールストリートジャーナル紙のコラムニストであるぺギー・ヌーナン氏は、ペイリン女史を「能なしで、資格喪失者」だと非難した。さらに、去る6月、元マケイン陣営のキャンペーン戦略家のスティーヴ・シュミット氏は、2012年の共和党公認大統領候補としてペイリン女史を指名することは「破滅的」行為に近いものだという警告を発したのである。
 新たな投票データは、そのような終末的予言を支持しているようにも見える。10月19日のギャラップ世論調査によれば、この前アラスカ州知事は、国内で最もイデオロギー的に分極化し、嫌われる政治家の1人に選ばれている。彼女が著作活動のために知事職を辞めたことから、ギャラップ社の数字では、彼女の好感度は40%を割り込む一方、非好感度は50%にまで上昇した。(世論調査において、現時点よりも人気がなかったただ一人の国民的政治家は、民主大統領候補指名運動の間に子供の父親になった2期前のジョン・エドワーズ上院議員だけである。)
 ペイリン女史が本当に共和党の癌であるのならば、共和党の有力者達は、どうして政治の荒野で大鹿狩りに精を出す彼女を引退させることができないのだろうか。そして、どうして、彼女は破壊的な政治追求の声を日ごと増していけるのだろうか。
 その答は、共和党の草の根レベルの党員を鼓舞し、広い範囲で、政治的な心理術で投票者の心を掴むその力にある。市民エリート集団に向けた信者の個人的危機感に働きかけ、独自の福音書サブカルチャーを洗脳しているのである。
 「自由主義のメディア」がもたらす彼女自身の危機と犠牲を強調することによって、ペイリン女史は、合理的政治的分析を越えたそのサブカルチャーの支持者達との親密な契約を確立した。その結果、彼女自身が福音書運動に基づいた右翼による、非宗教的社会やオバマホワイトハウスに代表されるものに抗するための最も深いアイデンティティを表現する原動力になれたのである。ペイリン女史は、そのリーダーと支持者達(彼らは冷笑的な政治家や有名人ではない)によって、彼らが「真のアメリカ」を代表する者であることを保証し、一種の不思議なヘルパーとして日々の生活の骨折り仕事から掬い上げてくれる、パラシュートで降下してきた信仰深い良い女と認められているわけなのである。
 ペイリンの娘ブリストルと彼女の妊娠について取り上げよう。ブリストルの物語は、多くの福音書のコミュニティを定めた個人の危機的文化を鮮やかに捕えたものであった。青春期のふるまいを調査した「青春期に関する長期研究」は、ペイリン一家の状況が稀なものではないことを示唆する。白人の福音書グループの若者は、黒人のプロテスタント以外のどんなグループよりも先に、16歳で処女を喪失することがわかった。節制教育が1995年以降に法令化されたテキサス州ラボックでは、10代の妊娠が国内で最も高い水準のままである一方で、淋病感染率は現時点で国平均の2倍である。
 共和党全国大会の舞台において、ペイリン女史はダウン症の子供(トリグちゃん)を抱きかかえて、運動の絆を強化した。ペイリン女史の行動は、「その小さなダウン症候群の赤ちゃん」を抱える彼女を祝福した手紙を書いたジェームスC・ドブソン氏を含む興奮した福音主義者と中絶反対の活動家達を強く引き寄せた。
 「妊娠中絶合法化反対をそこで強調するとは!」前の週にはマケイン氏を「自由主義者」と非難していたにせよ、マケイン・ペイリンチケットを支持したラジオ放送でドブソン氏はそう叫んでいたのだった。
 株式市場が2008年に暴落し、マケインキャンペーンが脱線をしてしまった後、ペイリン女史は自らを解き放ち、彼女の本のタイトルが示すように「悪者rogue」として、オバマ大統領を攻撃することに関するマケイン氏の掟を無視し始めたのであった。代わりに、彼女は彼女自身の独自のやり方でオバマ陣営に殴りかかった。「この男は、自らの政治キャリアのために、国内テロリストのリビングルームへと自ら乗り出した人間です。」「この男は、あなたや私が見るような方法でこのアメリカを見ている人間ではないのです。」
 明らかにマケイン氏や彼の側近の許可なしで発言をすることで、誠実な党の深みから感情的氾濫を誘発させる一方で、ペイリン女史はキャンペーンに深い分裂を引き起こした。そして、「Going Rogue」によって、彼女は選挙に向けて本能的にずる賢く彼女の野心を一歩踏み出したのだった。
 ペイリン女史は、現時点の共和党の未来を象徴している。そして、彼女自身が直面する最大の危険でもある。


例えば、「内閣支持率」などという数字があるが、この数値が一定水準以下になった場合には当然のごとく当事者連中の行状を責められて至極当然のことではあるが(何故ならば、非があって支持率は下がることが往々の理であるから。それに輪をかけるように、溺れる者に石を投げるのがこの国の風潮)、逆に、高水準の支持率を維持していたからといって、行状についても高く評価されて然るべきでは決してないことは、自明である。
要すれば、世間の人気なんて、何の勲章にもならない。よくて、せいぜい現状維持を追認するだけの消極肯定的な保証書代わりのものだということ。
オバマ然り、レーガン然り。日本で言えば、●川然り、小●然り、●山然りである。写真映りのいいペイリン小母さん然り。ソフトな容姿や耳に心地良い発言は食わせ者の証。人は見た目で騙される。


本日の音楽♪
マイガール」(嵐)