「また、ドーキンスかよ」と久美子は言った(但し、ちょっとしか出てこない)

科学と宗教を巡る歴史的経緯を体系的に分かり易く整理した労作でもある、アリスター・E・マクグラスの「科学と宗教」(教文館)をたりらり読んでいたところ(※労作をタリラリ読むその姿勢がまず間違っている。)、ドーキンスに関してコメントをした頁が約3頁ほどあった。要するに、彼(ドーキンス)はキリスト教も歴史神学も何ら知識を持っていなさ過ぎる、だから彼の主張する無神論など論評に全く値しないのだといったことがごく簡潔に記されていた。わはは。ポパーなどは科学哲学と神の関係性を論じる上で容易に上位概念たる哲学領域に止揚し得るので学術的論評に値するが、ドーキンスは素材・題材にもなり得ない、ということだろうか。
科学も宗教も人間が作り出した概念世界ではあるが、安易に「両者を対立概念のように俗に考えてはいけない」のだ、と。成る程。俗に、ね。常人にはふかい。ふかいすぎる。


ガーディアン紙より。
http://www.guardian.co.uk/education/2009/nov/08/evolution-primary-school-curriculum-education

◆科学者が小学校で「進化」を教えることを勝ち取る
 政府は、数年に及ぶ上級科学者らによる議会活動工作を経て、初めて、初等学校カリキュラムに「進化」を加える準備を整えた。
 ダイアナ・ジョンソン教育相は、数週間後に公表予定の当該計画の中で新しいカリキュラムの青写真が含まれていることを確約した。
 それは、科学者及び科学教育者が政府に対して「進化」が明瞭に言及されていない新しいカリキュラム原案を変更するよう求めた署名書簡の内容に沿ったものである。
 エド・ボールズ児童長官に7月に送付された公開書簡は、政府にカリキュラムを書き直すよう主張する科学教育界の主要な25名のリーダーの署名が記されていた。
 署名者には、オックスフォード大学の進化生物学者であるリチャード・ドーキンス教授、3名のノーベル賞受賞者、ロンドンの教育研究所の科学教育学者であるマイケル・ライス教授が含まれている。
 書簡の中で、「生物科学の基礎をなしている最も重要な理論の一つである」自然選択を通じた進化の理論が改造カリキュラム案の中で無視されているのではないかとの警戒感を表明した。
 「「進化」を含めることは必須事項であると考えます。」と、書簡には記されている。
 カリキュラムの中に「進化」を含めるための運動を調整していた英国ヒューマニスト協会(BHA)への書簡では、ジョンソン教育相が最終案の中に含めることを確約したと記されていた。生徒は、例えば、魚類が両生類へ、哺乳類へと変化する例示や、適合と自然選択の単純な概念といったことから学び始めることになる。
 BHAの教育担当責任者であるアンドリュー・コプソン氏は、次のように述べた。「進化は、おそらく、生命科学の基礎をなす最も重要な概念です。子供たちにそれについての理解を提供するに際しては、早い年齢で行うほど、より確かな科学的な理解の基盤を作るのに役立ちます。私は、多くの科学教育の支持者のお陰で成し遂げられた今回の政府の行いを祝福したいと思います。」
 政府は、初等教育アドバイザーであるジム・ローズ卿に対して、昨年、4歳から11歳までのカリキュラムを見直すように依頼した。彼の今春の報告では、カリキュラムについて広範囲にわたる改革が記されていた。
 それは、法律によって11教科を包含するよう定められており、歴史、科学、地理を含む6教科の「学習領域」を入れ替えるよう勧告している。また、数週間の間に、ローズ卿の計画に関するパブリックコメントの結果が政府の回答とともに公表される予定である。
 コプソン氏は、「進化」を教えることについては、特に英国議会が依頼した最近の調査結果から見ても重要なことなのだと述べた。その調査結果では、54%の英国人が「「進化」についての理論は、他の有望な見解(例えば、ID論や創造説)とともに、学校の科学の授業の中で教えられなければならない。」との見解に同意するものであった。
 ジョンソン教育相は次のように述べた。「進化についての学ぶことは、科学教育における重要な要素です。それは、中学校では既に学ばれているものです。」
 「初等カリキュラム原案は、科学技術を学ぶ新しいプログラムの潜在的な部分として「進化」を包含するよう計画されました。両親、教師、市民、関連する専門家及びその他の利害関係者の見解を聞くための当該計画に関するパブリックコメントの後、「進化」が新しい初等カリキュラムの中にはっきりと包含されることは確実です。パブコメの回答がまもなく公表される予定です。」


小学校の段階から授業の中で「進化」について教えようという英国を評価するか(※日本は恐るべき状況にかつてあった)、それとも、国民の過半が「進化論と創造論を両方セットで教えるべきだ」と考えている彼の国を評価するか、なかなかに手強い感想を求められそうではある。
わたくし自身の感想としては、マクグラスほどの知識を享受することは日本人には到底不可能なことには違いないが、進化論と創造論の両方を教えるという試みは、頑強性という観点から進化論の理解にプラスに働くであろうとは思うのだけれども、その際に、科学的思考という約束事のルール(規範)はどのように認識されていってしまうのだろうかなあ、という不安も少なからずある。両方を習熟する過程において、必ずその規範を外れる混乱が生じることは目に見えている。
いずれにせよ、サイモン・シンは、早く進化論に手を染めて欲しい。(ホメオパスの次は、もしかして、地球温暖化か。それとも、生物多様性か。)


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「ヒーロー」(ファンキー・モンキ・ベイビーズ)