野心とフェアネス

高校時代、世界史の授業は嫌いではなかったのだが、受験用の試験問題に向かうと『日本で卑弥呼が占術を駆使していたその時に、ヨーロッパ大陸ではどのような出来事が起きていたか』といったような世界発同時ニュースのような捻くり回した問題が必ず出てきて、わたくしの単純で拙い頭を混乱させた。
『日本最古の石器か?旧石器時代の石片を発見。』という記事が今般の紙面を賑わせている。尤も、拙い頭のわたくしには、同定された『12万年前』というのがいったいどの程度の昔の出来事なのかおよそ測りかねているのが実情である。
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/archaeology/


日本で発見されたこれまでの最古の石器とされていたものが3.5〜4万年前。それを3倍も遡るのだから画期的な発見には違いない。その一方で、各紙が伝えているように、過去にあった例の捏造問題(70万年前の石器埋め戻し…)が尾を引いていて、関係者は非常に慎重になっているそうなのである。当然、裏取りは相当綿密に行っているだろうし、慎重の上にも慎重を期して、発表しているのだろう。そして、何よりも重要なことは、今後更にこの学会コミュニティの中で綿密なる吟味が加えられていくだろうということである。そういった健全なピア・レビューの仕組みが公明正大に機能している限りにおいては、自浄作用は自ずと働いているものと安心して良いのではないだろうか。


ところで、わたくしが今回取り上げたい本当の題材は、この石器の真贋問題ではなく、実はこちらのニュース記事の方である。
http://www.asahi.com/science/update/0929/SEB200909290014.html
水素水がパーキンソン病に効果があるかもしれないという、「?」付きの、しかも、マウスのみの実験結果で、メカニズムさえ確認されていない、事の真贋は石器以上に曖昧模糊としている論文ネタである。現段階で白黒を決めつけないが、結論から言えば、石器の件と同様に、公明正大に業界内で真贋の程を吟味して、そのプロセスや結果を悉くオープンにしていただければ良い。


問題は、論文発表段階でこうした記事が既成事実化のように語(騙)られることであり、それはメディアのありようとも密接に関わってくるのであろうが、記者自身が「●●水」を巡る様々な議論と混沌があることは十分に理解・承知しているだろうに、敢えてそういった機能水を肯定する観点を色濃くしてこうした記事内容を書くその姿勢は如何なものであろうかと思うのである。それでなくとも、昨今の水を巡る研究の世界は、一触即発、焦臭い。
なお、当の研究者自身に対しては、チャレンジングな志を挫く積もりは毛頭ないが、結果はきちんと業績や処遇に反映させていくべきだろうと思う。


本日の音楽♪
「慕情」(寺井尚子