掘り出し物

「ホック氏の異郷の冒険」(加納一郎:角川文庫)をいつもの古本屋チェーン店でとうとう発見したのである。それも105円。価値を知らないチェーン店には、往々にしてこういう掘り出し物があるので、わたくしの宝探しの愉しみの一つにもなる。
日本推理作家協会賞を受賞した本作品の角川版。ずっと探していたのであるが、なかなかお目にかかることがなかった。それも105円。2倍の嬉しさではある。


どうやら最近、ミステリ業界は、その大半が流行作家化してしまっており、眺めていてそのメジャーぶりに、天の邪鬼は機嫌が些かよろしくない。
例えば、「このミス」を見れば一目瞭然。マニアのためのミステリがいつの間にか万人に愛されるアイドルタレント業界化していることが、そのランキングリストからも類推できようというものである。
そういった世界の中から、「通」ぶって、あえてメジャー化していない作家の作品を漁るのがミステリ読者というものだと勝手な矜持を持っている。要すれば、独善。


そのアイドルタレント作家群は、したがって、万人に愛されているという肩書きを持っているのであるが、それはマジョリティの論理の帰結のようなものであって、実際に、わたくし個人、武者小路さん個人、鳩矢間さん個人が彼らをアイしているというわけではないのである。当たり前田のことであって、マクロとミクロの視点は似て異なる。
近年、わたくしが最も憤慨をした著作家に●持某がいるが、彼女も「このミス」では上々の人気作家ではある。一体誰が誉め称しているのか、わたくしには到底理解が出来ないほどに、お願いだからこの作家の作品を読んでいた貴重な時間を返して欲しいとわたくしは思っている。顔が可愛かったので、握手会に行ったら、とても下手な歌を聴かされたといったようなオチ。


最後に、もう一冊、掘り出し物を。これは2001年頃刊行のもので未だそれほど古くはないのだが、「海賊モア船長の遍歴」(多島斗志之:中公文庫)。
これの続編である「海賊モア船長の憂鬱(上下巻)」が角川あたりからつい最近刊行されたばかりのようだが、やはり発端編から読まねばなるまいに。
これも前々から探していて、目にする機会のほとんどない作品であった。ワンコイン。1.5倍の嬉しさではある。


本日の音楽♪
「君を連れて行く」(ヒートウェーブ)