うら若きレディは荒野を目指す

毎朝通勤時に登校する大学生とすれ違いながら駅へと向かうという、と或る紳士の口から聞いた話に拠れば、最近、彼がすれ違う女子学生の割合が昔に較べてどんと増えているような気がする、と。そこは家政とか保育とか文学とかそういった昔ながらの女学生の多い学部を有する学舎ではなく、大根片手に踊りまくるような自然相手にした肉体労働のイメージ濃い硬派な学舎なのだ、と。そんな汗まみれ泥まみれのところだから、むさい男子学生しかいなかったのがかつての常識ではなかったのか、と。


ふうむ。むべなるかな。とも思いつつ、いちおうデータにも当たってみる。
「学校基本調査(平成20年度)」によれば、全国の大学の学部生数の総計は、283万人強。そのうち、男子学生数が59.8%、女子学生数が40.2%という比率となっている。これが全体的な平均像であるとして、いわゆる農業・環境・バイオ関係の学部(※)の学生数を小計すると、約7.3万人。そして、その男女比は、男子60.7%対女子39.3%。全体平均とほぼ同じ状況にあると言える。


これをどう見るか。いたって普通で変哲ないと思いがちであるが、農業・環境・バイオ関係の学部というのは、最近は生物生産とか生命環境とかの御洒落な看板替えも見られるものの、紳士の発言にあるように、いわゆる農学とか畜産とか獣医とか水産とかそういったレトロで土臭い集合体である。そうした中での男女比が全体平均並みということは、矢張り、こうした領域分野への女性進出が相当に進展している証左といっても良いのではないかと考察してみる。


おそらくキーワードは、「環境」あるいは「食」なのだろう。女子学生が畑で鍬を船上で竿を思い切りふるいたくて学舎の門を叩いて来ているわけではあるまい。自然に対して何らかの思い入れや価値観を持つ若者たちが、エコやロハスやオーガニックやガーデニングランドスケープアーキテクチャーやバイオダイバシティや何やら、そんなカタカナ風のイメージをいろいろと纏いながら、憧れながら、フェロモンに惹かれるようにそこに集まってくるのではないか。


紳士が言うに、最近、その通り道の校内で、樹齢50年余はあろうかという立派なクルミの樹が何本か根元から切り倒され、その跡地に瀟洒なモニュメント付きの洋風花壇が出来たのだそうである。たいそう見栄えがするのだろう。
わたくしなんか、天の邪鬼でひねくれ者で脳硬化で脳軟化なものだから、そういう情景を思い浮かべると即座に、「そんなにまでしてしまって。。。生物多様性についていったいどのように教えているのだろうか。」と考え込んでしまうのである。


(※)対象とした学部
農学部
園芸学部
獣医畜産学部
獣医学部
畜産学部
農学部
水産学部
海洋学
生物資源科学部
応用生物科学部
繊維学部
生物生産学部
生物資源学部
生物産業学
農学生命科学
海洋科学部
生命(・)環境(科)学部(群)
生物資源環境学
産業学
バイオ環境学
海洋生命科学


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