知る人ぞ知る(知らない人は知らない)

上京してまだ間がない頃に、諸般の事情で暫く入院をしていた時がある。
昼間は所在なく、ベッド脇に置いた8インチか9インチのテレビを観ていた。
すると必ず映画「キリマンジャロの雪」を放映していて、「あれ。また、やっているよ。この映画。」と思ったことである。
もう少し幼少時に帰れば、「妖怪大戦争」、最近では、「風の谷のナウシカ」や「クレヨンしんちゃん大人帝国の逆襲」あたりがそれに該当すると言えるだろうか。
余程放映権料が安かったのかもしれぬ。


昔観た映画で、今、とんと話を聞かない映画に「シベールの日曜日」がある。
セルジュ・ブールギニョン監督、ハーディ・クリューガーとパトリシア・ゴッジ主演。
反戦映画という括られ方が一般的にされているようではある。

<あらすじ>
元空軍のパイロットで、アルジェリア戦争での戦傷による記憶喪失が原因で無為な毎日を送っているピエールは、ある日ひとりの少女に出会う。父親に捨てられ、天涯孤独の身となったその少女はフランソワーズと名乗った。お互いに深い孤独を抱えるピエールとフランソワーズは日曜日ごとにビル・ダヴレイを訪れ、疑似的な親子とも恋人同士とも言える関係で触れ合う。しかし、幸福な週末は長くは続かなかった。クリスマスの日に、ピエールはフランソワーズの望みを叶えようとするが……。


暗い枯れた基調の白黒のフランス映画で、わたくしの十代の心象風景にマッチしていたような気がして(それをひたすらに美しい映画だと当時から強く感じ入っていた)、生涯の中でもフェイバリットな一作である。
一応DVDがレンタルでも出回っているみたいだが、こうした地味目の、しかし、間違いのない名作というものに、もう少し世間の目が向いても良いような気がする。
少なくとも封切りから二、三十年の間は全国の名画座を廻遊していたわけで、当時のかなりの人々はこの作品を知っているわけである。
現代に生きるわたくしたちは、当時の人たち以上に多くの映画に触れる機会がある。
人間のキャパシティがどの程度のものなのかはよく分からないが、映画に触れ合う機会について、もっともっと貪欲になっても良いのかもしれない(年に数本しか見ない人間がたいそう偉そうなことを言ってしまった…)。


本日の音楽♪
「虹」(ゆず)