読書感想文(三浦しをんの巻)

三浦しをんの「まほろ駅前多田便利軒」を読んで考えたのであるが、「LIGHTな内容で、非常に読みやすい」であるとか「映像ドラマ化しやすそう(特に4CHの土9ドラマ、あるいは、NHKの朝ドラ)」であるとか「とても器用な作家」「時代を反映」「ありがちな人物、情景設定」「文章に個性がない」といったマジョリティの反響には或る意味肯首をしつつ、わたくしは、大枠似たような設定の物語で読ませる、荻原浩の初期の作品(「ハードボイルドエッグ」「オロロ畑でつかまえて」「なかよし小鳩組」等)と比較をしてしまうのである。


どちらがどれだけ優れているといったことは語るまい。最終的には両者の嗜好性の違いだけなのかもしれない。
両作家共にヒューマニティを基調にした人物造詣と災難巻き込まれ型ストーリーで魅せるタイプの作品を書く(もちろん、その後、それ以外の幅広いジャンルの作品も手がけている)。
脇を固める人物の個性にも注意を払っており、本作の行天やハードボイルド…の秘書役の婆さんなどは良くできた人物像だと思う。


それにつけても、ここまで器用に纏め上げてしまう作品になると、「わたくしの通勤時間を愉しくしてくれて、どうもありがとう。」くらいの気持ちしか沸き上がってこないわたくしは、薄情、不義理、非人情家かとも自問する。
纏まりすぎがキズという言い方も非論理的でどうかと思うし。すっきりした直後の読後感の割に、すっきりしない感想を纏め上げられない自分自身がもどかしい。


そういったわけで、強引に結論付けるとするならば、わたくしの荻原浩作品のフェイバリットは、「明日の記憶」でも「神様から一言」でもなく、「母恋旅烏」。秀逸無二のラストシーンに一票。
三浦しをんの話とは全く関係のないしまり方で重ねて失敬。


本日の音楽♪
「わたしのハートはストップモーション」(桑江知子