「時間の矢」の謎(時間が過去から未来へ向かってしか進まないということ)

Guardian紙の科学欄記事である。どのような読者層がどういった感慨を込めてこの記事を読んでいらっしゃるのか。難解に次ぐ難解な内容ではある…。
http://www.guardian.co.uk/science/blog/2009/aug/26/entropy-time-arrow-quantum-mechanics

(仮訳)
量子力学はあなたの記憶を干渉しているのだろうか?
私達は、壊れた窓硝子が元通りになったり、冷めてしまったコーヒーが自然と熱くなったりといった世界で暮らす経験を記憶したりはしていません。それは「量子絡み合い」のせいです。

 あなたが今見ているカップに入った冷たいコーヒーが自然と熱くなるということを想像してみて下さい。あるいは、割れた一枚の窓硝子が突然元通りに戻るということを想像してみて下さい。マサチューセッツ工科大学の物理学者ローレンツォ・マッコーネ氏によれば、あなたはいつでもそのような事象を観察しているのですが、あなたはそれを覚えていないのだそうです。
 先週発行された「Physical Review Letters」に掲載された論文の中で、彼は「時間の矢」の謎と呼ばれるその問題を解き明かそうと試みました。
 簡単に言えば、その問題は、物理学における私達の法則が全て可逆性あるいは「時間反転対称性」がある一方で、時間が前方または後方に走ることは等しい現象であるにも関わらず、私達が観察する大部分の日常的な現象においてホットコーヒーが冷めるようなことはないということです。それらは決して逆向きに起こることはないのです。
 私達は、熱力学の第二法則と呼ばれている日常的な現象を記述した統計的法則を有しています。この法則は、「エントロピー」(閉鎖系内の拡散程度)が減少することは決してないことを私達に教えてくれます。大雑把に言って、エントロピーが増大するプロセスは、システムがますます乱雑になっていくことです。それによって拡散度合いが増大し、窓硝子は壊れ、自発的に元通りに戻ることはありません。気体ガスは発散しますが、自発的に圧縮したりしません。
 しかしながら、エントロピーは、多数の小さなかけらで起こることを示したものです。個々の小さなかけらで起こることの起因となるものには違いないものの、個々の粒子の性質を定めるすべての法則は時間反転不変的なものでもあります。このことは、あらゆるプロセスが時間の方向性が一つしかないことを認めている一方で、別の方向性も認めていることを意味しています。
 それでは、どうしてあなたのコーヒーは、自然と冷たくなるのに、熱くなったりはしないのでしょうか?
 マッコーネ氏の示した解答は、非対称性や時間の矢に関する謎とは関係なく、実際にエントロピーが減少している事象が常に起こるのだと言います。
 彼は、誰かがエントロピーの減少している事象を観察した場合、事象の記憶が「必然的に消された」ことを量子力学が口述しているのだと主張します。
 彼の説明は、あなたの記憶が最初の場所で生じたものでないということを意味しているものではありません。彼は私に説明をしてくれました。「私が指摘したいのは、記憶が作られ、その後、消されるということなのです。」
 マッコーネ氏によれば、あなたがあらゆる事象システムを観察するとき、あなたは「量子絡み合い」に引きずり込まれます。つまり、あなたとシステムは、縺れ絡み合い、別々にきちんと記述されることができないのです。
 この絡み合いはあなたの記憶とシステムの間にあるものだとマッコーネ氏は言います。あなたが絡み合いからほどかれる際に、「ほどけるという活動は、この絡み合い、即ち、観察者の記憶を消します」。彼の論文は、数学的アプローチによってこの結論を引き出しました。
 私達はコーヒーが再び熱くなったカップを覚えることができなくて、それゆえに、そうした現象の研究ができない一方で、マッコーネ氏はそのようなエントロピーの減少している事象が起こっているに違いないのだと考えています。
 「エントロピーを増大させる変化が起こるならば、そして、私達がそうなることを知っているのならば、その対称性から、エントロピーを減少させる変化というものも予想できるでしょう。しかし、私達はそうした変化に遭遇したことがありません。」
 私はマッコーネ氏が時間の矢のジレンマを解決したとは確信していません。そう思っているのは、私だけではありません。
 1つの問題は、彼が認識するエントロピーの減少している事象が起こるということを証明できないことです。むしろ、そういった現象が起こるのに、私達がそれを覚えていないのだということを示しています。
 対称性に対する疑問は、それらが実際に起こっていなければならないという結論を導き出します。しかしながら、肉眼で見えるシステムにおいて、エントロピーが減少することは、統計学的にみてほとんど(まさしくほとんど)ありえないことです。
 身の回りで動き回るものは、全て下方に向かっています。例えば、気体ガスについて、より高いエントロピーの状態にあるようにする方法よりも、より低いエントロピー状態にすることができるいくつかの方法があります。最もありえる状態の前後が高いエントロピーの状態となるのであって、単にそのような状態を占めることがより多くあるということなのです。
 重要なことは、エントロピーの統計は非対称を予測していないということであり、それは、エントロピーが過去に向かって減少しておらず、将来に向かっても減少していないことからも示唆されます。
 時間の矢の謎は、エントロピーが未来に向かってのみ増大するということです。言い換えれば、統計的に予測するにもかかわらず、どうしてエントロピーは過去に向かって実際に減少をしないのかということです。
 マッコーネ氏は、エントロピーが過去に向かって生じることから、将来に向かって減少することを「私達が期待する」のだと言います。しかし、私達がそんなものに期待してはいないことを統計は明示しています。それらが過去に向かって起こることは非常に驚くべきことで、将来に向かっても起こることならば、それは二重に驚くべきことでしょう。対称性は、私達が知るものが統計的にとてもありそうもないことを予想する理由にはなりえません。
 シドニー大学タイム・センター長のヒュー・プライス氏は、マッコーネ氏が単に一つの謎をもう一つの謎に置き換えただけのことだと考えます。
 「観察者への[量子]影響という観点で熱力学的な矢を説明するという提案には明らかな欠陥があります。」と彼は言います。「それは、あらゆる観察者がなぜ同じ時間の方向を向いているかについて説明をしていません...なぜ、一部の観察者は私達が将来なんと言うか覚えてはおらず、過去に言ったことの情報だけを蓄えるのでしょうか。」
 私達のような観察者が過去を思い出すことを標準的に説明する方法は、エントロピーが増大しているという事実に基づく熱力学によるものです。彼の理論は観察者の存在に依存する熱力学の事実に基づくことから、マッコーネ氏はこの説明が使えません。そのような説明は、マッコーネ氏にとっては、循環論法に陥ってしまうのです。
 プライス氏の言うことが正しいのならば、マッコーネ氏は、説明するのが難しい一つの等価性をつくる代価として、もう一つの現世の非対称性を説明したに過ぎません。
 その上で、プライス氏はマッコーネ氏が隠されていた非対称の仮説を新たに創造したのだと考えます。彼は、マッコーネ氏が論拠とする量子相関関係が或る一つの現世の方向のみで起こることを検証しなければならないと主張します。「しかし、それはまさに彼が由来根拠を求めた結論を検証することでもあるのです。」
 マッコーネ氏が時間の矢の神秘を解き明かしたかどうかは、不明のままです。けれども実を言うと、私の冷えたコーヒーが自然に元のように熱くなるならば、それは私にとって好都合なことには違いありません。私は、それが実際に起きたことなのかどうか、覚えているかどうかさえ、気にはしていないのですが。

と、ここまでいい加減に訳してから、WIRED NEWSの邦訳版を発見。併せて読むと参考になる。
http://wiredvision.jp/news/200909/2009090723.html
知的興奮は愉しいが、正直、脳ミソぐるぐる。
記事中にあるとおり、現在検証不能ではあるが、インキチではないということらしい。よく分からぬが。「ホメオパス」や「波動」というワーディングに即時瞬間反応する土竜叩き屋連中も、たまにはこうした本当によく分からぬカオスの世界に首を突っ込んで、もいちど「科学とはなんぞや」を瞑想してみてはどうなのだろうか。


本日の音楽♪
「Alright!!」(Superfly)