ジャンクフード課税(後編)

ロスアンゼルス・タイムズ紙記事のつづき。

研究では、大部分がこうしたことを支持する。
実際の価格上昇の影響に基づくいくつかの経済的な研究では、ソーダ、スポーツ飲物及び果物ジュースカクテルに対する10%の課税が8%〜11%程度の消費減を促すものと結論付けている。いくつかの研究では、価格上昇が人々に飲物嗜好(例えば、ミルク、コーヒー、お茶)を変える動機付けとなり、 理論的には総量を減らすことを明らかにした。
8%〜11%の消費減は、どれほどの意味があるのだろうか。5月に行った810人の成人に対する臨床試験では、1日につき100カロリーのソーダの摂取量を減らすことによって、18ヵ月後には0.5ポンドの体重減少に結び付くことが明らかになった。
それ以外の研究では、予測結果に合致しなかった。
例えば、経済学者のトリオは、アメリカ人が痩せるのを助けるために清涼飲料税を適用することの実現可能性を調査するために、16年分の米国家庭健康データを分析した。2008年の報告では、税の1%の増額がちょうど平均肥満度指数を0.003ポイント分減らすとの試算を得た。
言い換えると、BMIが27である太りすぎの人は26.997になるということであって、20-25の健康範囲には未だ届かないわけである。
アメリカ人のダイエットにおいて、ソーダが7%分のカロリーしか占めないために、20%の清涼飲料増税はあまりにも役に立たない。
スナック食品に対する課税は、さらにより効果的とは思えない。
米国農務省のチームは、塩分の多い食品(例えば、チーズパフやプレッツェル)に対する税に着目した。そして、税が10%を上回らなかった場合、それは年間1ポンド未満の体重減少しかもたらされないと、2004年に報告している。
「安価なドーナツと高価なブロッコリ」という表題の付けられた2007年の報告では、連邦データを用いて、すべての高脂肪低栄養食品に対する100%の課税の影響を予測した。この非現実的な高水準の課税によってでさえ、最終的にはBMIを0.2ポイント減らすだけに過ぎないものと結論付けられた。
メイン州における5.5%の軽食税の経験は、特に思わしい結果をもたらさなかった。欠損した財政源を穴埋めするための措置として法律化されて、それに怒った有権者からの圧力で廃止される10年前までその措置が続いた。アイスクリーム、ホットココア、ケーキ、クッキー、プリンといった品目の価格上昇にもかかわらず、課税期間中、メイン州の成人の肥満率は10%から20%へと約2倍に増加してしまった。
ジャンクフード課税の裏面措置は、健康によい食品に助成金を支給することである。農務省は、果物と野菜の価格を10%低減することが6%〜7%程度消費量を増やすと計算した。
スナック類の個人購入変化(CHIPS)研究において、ミネソタ州の研究者は、55のハイスクールとオフィスの自動販売機で低脂肪スナックの価格を半分にする実験を行った。その売上高は約2倍になったと、2001年に報告されている。
もう一つの実験では、価格が半減したとき、果物とサラダのカフェテリアでの売上高は3倍になった。第3に、果物の半額販売は、その購入量を4倍に押し上げた。
カリフォルニア州の公立学校では、2004年に自動販売機からソーダを撤去し始めた。しかし、学生がそれによって痩せたかどうかは不明である。 特にその自動販売機がほとんど同じくらいの砂糖を含むスポーツ飲料も同時に販売していたからだと、ゲイル・ウッドワード・ロペスカリフォルニア大バークレー校の健康アソシエイトディレクターは言う。
しかしながら、専門家はダイエットに影響する政府の試みには、特に税が含まれるときは、予想外の結果がもたらされることを警告する。
2007年の英国の研究では、家庭のダイエットと食物支出に関する政府データを使って、国の17.5%の売上税をいろいろな食品にまで広げた場合の影響というものを予測した。飽和脂肪分が高い食材が課税された場合、推計モデルによれば消費者がより塩分の多い食品に切り替えるがために死亡者数が年間1,800〜4,000人も増加すると見積もっている。
その問題を解決するために、研究者はありとあらゆる健康に悪い食品に適用する税のモデルを構築した。それによると、死亡数は年間2,500人も減ったが、人々が塩分のある食品から脂肪酪農食材へと切り替えたために、コレステロール値が上がる結果となった。
そして、残念なことに両方のシナリオの消費者は、あらゆる反肥満改革運動者が求めないような最低の行為をとった。日常食料雑貨の家計高騰問題に直面して、彼らは果物と野菜の購入量を減らしたのである。


というわけで、結論は、課税でダイエタリ・コントロールは容易じゃないよ、と。当然のことながら、単品制御でのダイエタリ・コントロールはあり得ないよ、と。
食環境が非常に制限されている、例えば、困窮経済状況の中で明日食べるものにも事欠くといった状況ではなく、あらゆる摂食の機会が用意されている今日の状況下で、食消費コントロールはとことん容易ではないということである。
「痩せます」と喧伝をされれば、ソースも確かめずに納豆やバナナに一時的に殺到をする歪な側面も抱き合わせつつ、日本の農業を護るために、お米をもう一膳多く食べましょうという声には全く耳を貸さない。であるからにして、100円マ●クに大幅課税をして、再び200円マ●クにしてみたところで、大衆市民はハンバーガーの代わりにピザを囓り、パスタに齧り付くことを止めはしない。自給率なんてよほどのムーブメントがなければ変化しない。これが今を生きているわたくしたちの(昔の人とは明らかに異なる)本性なのである。体格が良くなった分、もう少し肩を狭めて申し訳なさげにお天道様の下を歩いても良い。


本日の音楽♪
「ひよこぐも」(アヤカ・ウィルソン