ジャンクフード課税(前編)

いつものロスアンゼルス・タイムズ紙記事より。
http://www.latimes.com/news/nationworld/nation/la-sci-junk-food-tax23-2009aug23,0,5443030,full.story

(仮訳)
◆ジャンクフード税は有効か?
煙草に対する増税は喫煙を抑制する根拠になったが、果たして同じ戦術を肥満対策に当て嵌めることは可能だろうか?
(記:カレンカ・プラン、2009年8月23日)
煙草に対する「罪悪税」は、減煙運動としては最も効果的な武器であることが判明したわけであるが、それをホットチートスやバニラコークやトゥインキーズといったジャンクフードにも適用しようとしないのは何故だろうか。
公衆衛生の専門家とシンクタンクは、そうした賛同の声を得ながら、栄養上の観点及び高カロリーのジャンク食品飲料に対する増税措置を求めている。デイビッド・パターソンニューヨーク州知事は財政均衡措置として、昨年、18%のソーダ飲料税を提案した。しかし、強固な大衆市民の反対に直面して3ヵ月後にはそれを諦めざるを得なかった。少なくとも5つの他州の議員がその考えを公式に支持したのであるが。
議会では他の誰もこれを支持しなかったわけであるが、ジャンクフード税はヘルスケア制度の再構築を助けるための方法として屡々言及されているのは事実である。
この考えは一般大衆の間にも流布されており、カイゼル・ファミリー財団による先月7月の世論調査結果によれば、健康に悪いとされるスナック食品に対する課税を支持する回答者が4月の52%から55%へと上昇し、ソーダ飲料税に対する支持の声は46%から53%まで上昇した。
その考えに反対する人々の中の63%についても、当該税収がヘルスケアの改革に充てられ、肥満関連の健康問題に対処するために使われるのであれば、態度を変える用意があると答えている。
アーバン研究所からこの夏出されたレポートでは、肥満率の上昇がアメリカ人の平均寿命を歴史上初めて低下させる原因にならないということをそのような税によって確約する必要があるとしている。
「年間10万人が亡くなっているのだから、何らかの対策を講じる必要がある。」と、ヴァージニア大学の小児科心臓専門医の一人であるアーサー・ガースン氏は言う。
しかしながら、大衆市民の多くは、そのような社会工学的な「福祉国家」の試みには反対をする。
「私がこれまで耳にしてきた中で最も馬鹿げたアイデアです。」と、ケンタッキー州アシュランドの登録栄養士であるケリー・グラス氏は言う。彼はアイスクリームに虜になることで罰されたいと思っていない。「たとえ、どれほどの費用がかかろうとも、好きな食品全てをあきらめなければならないという義務はどこにもありません。」
ジャンクフード税は不公平税制である、何故ならば、貧しい者ほど負担が大きくなるのだから、とフィクションライターのジュリー・コクラン氏は言う。「私は、低賃金の仕事でどうにか一人暮らしをしている母に課税を求めるつもりは毛頭ありませんから。」
一方で、ジャンクフード税の論理は、明快なようにも見える。人々を太らせる食品ほど安価な傾向がある。そして、新鮮なカット肉ほど高価である。税はそのアンバランスさを是正することが可能である。そして、人々がより多く食べるべきものとより少なく食べるべきものを制御することが可能である。
「この問題は、私にとっては絶対的楽勝の部類に入るものです。」と、エール大学で長く税について教えてきたケリー・ブラウネル食品政策ラッドセンター長は言う。
尤も、それほどに事は単純ではないことを研究は示唆をする。
肥満率が拡大する中でこれを明確に抑制するためには、税は高額で、かつ、広範囲にわたるものでなければならない。現在3分の2の州が適度の清涼飲料税を課しており、その平均税率は5.2%である。そして、税と体重の低下との間には関連があるのだけれども、その違いはとてもわずかなものである。279ポンドの重さの人間でおよそ3オンス程度の減少である。
利用可能なデータによれば、キャンディ・バーと電子レンジ用ポップコーンのような食品に対する税金は、さらに、より効果的ではないとされる。
そのような税が脂肪過多あるいは塩分過多の食品の消費を増やすというひねくれた影響をもたらすことがあるという証拠さえ示されている。
税が喫煙を抑制するが、肥満にはほとんど影響を及ぼさないだろうという理由がある。
煙草税を上げた場合、喫煙者はお金を払って吸うか、やめるかの選択しかない。それに対して、加糖コーラに課税をした場合、顧客は別のスポーツ飲物やパンチ飲料に変更することができる。そして、それは屡々より多くのカロリーを含むこととなる。
さらに、煙草税は法的に喫煙行為の及ぶ全ての製品に適用される。これに対して、ジャンクフード税は論理的とは言えない。メイン州における5.5%の軽食税は、例えば、ブルーベリーマフィンと生鮮アップルパイには適用されるが、イングリッシュマフィンや冷凍パイには適用されない。
煙草税は、食品飲料に適用されそうなそれよりも遙かに高額である。コーク一本1.50ドルに10%の税を課すことは、15セント分の価格を吊り上げるが、その代わりにダイエットコークを飲むようにと大部分の買い物客を説得するものにはならない。多くのカロリーにあふれた食品はあまりに安いが、課税化には最も敏感なことも事実なのである。

耐久消費財瀟洒品は相変わらず高価なのに対して、日常の食品がどんどん安くなっていくのはいったいどうしたわけだという声が一部で湧き出ている。もっともだと思う。本記事に関連させて、それは税が安いからだとは終ぞ思わないが、例えば国産品の割合の少ない食品(粉製品、油製品など)に記事にあるような課税をしたらどうなるか、食料自給率は上昇するのではないか、などと考えてみる。
考えながら、この話は後編へと続く。


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「ミオ・アモーレ」(平原綾香