So far away, but one step beyond(あるいは、栄冠は君たちに輝く)

夏の甲子園全国高校野球選手権大会が幕を閉じたわけである。数々の熱戦によってもたらされた、いつもながらに多くの熱いドラマにいたく心打たれたわけである。全国4041校の頂点に立ったのは、愛知県代表の高校。全国唯一無敗のチームでもある。
トーナメント表を眺めながら、暇に任せて、逆算作業をしてみる。優勝した愛知県代表の高校に決勝で敗れたのが新潟県代表の高校。その新潟県代表の高校に準決勝で敗れたのが岐阜県代表の高校。その岐阜県代表の高校に準々決勝で敗れたのが東東京代表の…。と順に追っていくと、最後は鹿児島県代表の高校に辿り着く。
そこからさらに、鹿児島県での地方予選結果の逆算作業を試みていく。そうして、最後の最後に辿り着いた高校が特定される。自校に勝利した対戦相手が次戦で敗退していくという連鎖を繰り返すという意味において、そのチームは、最も優勝から遠い位置にあったチームということになる。ここは敢えて実名を挙げさせていただく。今回のそれは「市来農芸高校」であった。


決して意地悪や揶揄をするような意味で、当該チームを特定しているのではない。全国の頂点に立つプロセスと明らかに異なるのは、あくまでもそれは勝利した対戦相手チームの帰趨に委ねられる他力由来の結果であって、当該チームには何の汚点・劣等点もない。どのチームも等しく味わってきたほんの1敗戦を経験してきただけのことである。
そして、「優勝には遠かった」とは言っても、地方予選の緒戦から甲子園での決勝戦までたかだか15戦に満たないプロセスである。確かに全勝チームは全国1校だけであり、その最終ゴールは遙か遠い夢の果てのようにも見えるが、それは太陽系外への旅を想起させるほどに絶対的に実現不可能な道というものでもない。何よりこのトーナメント表の系図の世界に包含されている以上は、当該チームを含めて、一歩前進を志向するどのチームにあっても、優勝の可能性はあり、そして、全系図の結果として最も優勝に遠かったチームというものも形式的に特定できるという、ただそれだけの話である(但し、4041校という集団を俯瞰し、全国でただ1校その中から特定できるということは、決してネガティブなことではなく、優勝チームと同様、晴れがましいことのような気もする)。


そんなこんなで、甲子園劇場もお終い。その幕引きとともに夏も終わりを告げていくのである。海水浴場は土用波が立ち、水底に住む土左衛門が遊泳者の足を引っ張ろうとする。したがって、海に入るのもお終いなんだよと大人達は子供達に諭すのである。残暑は未だ未だ続くのだろうが、花火も風鈴もそろそろ片付け時ということである。


本日の音楽♪
「ビリー・ジーン」(マイケル・ジャクソン