他山之石、可以攻玉

時節柄というか、風物詩というか、この時期になるとメディアへの露出回数の多くなるオカミの本山、経済財政諮問会議であるが、公開されている議事録を読んでいても、セレモニー化してしまっているのか、はたまた語るほどの知見を持たないのか、およそ議論に深まりが感じられなくて、隔靴掻痒とした気分になってくる。そして、こんなざっくばらんな経済社会運営をしていて、国のリスクは大きくないのだろうかと徐々に心配の種が膨らんでくる。
突き詰めていけば、おそらく属人的な問題、あるいは、個人の能力の狭小さの問題に行き着いてしまいそうになるので、これ以上は突っ込まない。


敢えて、少しばかり突っ込ませていただけるとするならば、こういった話題かしら。
旧聞の範疇であるが、3月にあった同会議の中で、と或る大臣がこのような発言をなさっておられる。
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2009/0310/shimon-s.pdf

(●山議員) バイオの件で、アメリカの例だったと思うが、トウモロコシで虫に食害されない、虫が嫌う品種をつくり上げた。すぐ実験化されて、人間には絶対害はないということを確かめて生産に入ったところ、やはり一部の人間にはアレルギー反応を起こすことが後から分かった。だから、よほど慎重に、検証に検証を重ねてやっていただきたい。

Genetically Modified技術のことを云っているのであろう。
わたくしがこの会議の書記係であったならば、議事録の中に、括弧書きでオーディエンス(失笑)の文字を挿入しておきたいところではある。
こうしたネガティブ情報の出所はおよそ想像がつくが(勿論ネガティブに生きている人々がその発信源である)、風聞は人の間を通る度に変節を繰り返し、大臣氏の頭の中にはこうした形で残るという「伝言ゲーム」あるいは「風説流れ旅」の典型とも言える。
http://www.biotech-house.jp/qanda/faq_46.html


AIDSに対する誤った治療法を推し進めて同疾病の国内蔓延に拍車をかけたアフリカ最南端国の大臣であるとか、理由も説明せぬ儘にダイエット・コークの販売を禁じた南米の大臣の話などを訊くと、事態の重軽は別にして、彼ら自身に対して「ふふん」と鼻で嗤ってしまいがちになるが、身内の国でこういう事実と掛け離れたお話がさも尤もらしく語られているのを目の当たりにすると、世界のどこにもいるのねえ、と思いつつ、他国の水準をおよそ馬鹿には出来まい。


なお、これから大騒ぎとなるであろう、地球温暖化に関する二酸化炭素排出量の目標値を巡る国際的な議論などについてもそういう視点で眺めていくこととしたい。つまり、IPCCは「科学的」と胸を張っているのかもしれぬが、およそ科学とは掛け離れたところでの議論になっている実態を見極めれば(使えぬ科学という皮肉も込めている)、世間での騒動がAIDSやダイエット・コークを見つめる視線とさほど変わらないものであることに気付くことは容易い。これこそ、「ふふん」てなものである。


最近、職を辞されたようなので、今後の旧公職への影響はあまりないだろうと考え、ネタとして俎上に取りあげてみた。ちなみに、当人は、LOHAS有機農業が大好きなのだそうである。


本日の音楽♪
「唇よ熱く君を語れ」(渡辺真知子