便所虫

月に一度、地域の共同清掃作業(ユイ)がある。先日、その作業に駆り出され、汗をかきかき、歩道の雑草取りをしていたところ、同じく横で草むしり作業に精を出す御近所の若奥様同士のおしゃべりが聞こえてきた。

Aさん:「きゃっ、虫。」
Bさん:「あら、ダンゴムシ。気持ち悪いわねえ。ナウシカに出てくる何とかって虫そっくり。」
Aさん:「ダンゴムシってコンクリートを食べちゃうんでしょう。」
Bさん:「へえ、ほんとう?」

嘘です。ダンゴムシはコンクリートは食べない。屡々コンクリートの腐食した穴の中に棲息していたりするので、さも食べているような誤解を受けるが、他の昆虫の多くと同じようにダンゴムシ有機物(主に腐った植物の欠片)を主食としている。

Bさん:「ウチのマンションの回りに多くいるんだけど、マンションの土台が食べられちゃったりしたら、危ないわよねえ。」
Aさん:「ほんとよねえ。怖いわよねえ。」

シロアリと混同している。というか、巨大マンションの土台を食い荒らすダンゴムシって、何やら都市伝説ぽくはないか。

Bさん:「どうやって退治したらいいのかしら。農薬は子供がいるから使えないし。」
Aさん:「そうよねえ。ダンゴムシを食べちゃう虫でもいればいいのよねえ。」

います。いますよ、奥様。ムカデを飼えば宜しい。ダンゴムシが人的危害を加えることは凡そ考えられないが、あくまでダンゴムシが美的景観を損なうという意味で赦せないのであれば、ムカデやクモや大型アリといった天敵ワールドな環境をご覧に入れて進ぜたい。人的危害を勘案しないのであれば、スズメバチも相当の効果がある。


…わたくしが横からこういったアドバイスをして、均衡が保たれている円満な御近所づきあいにミソを付けるわけにもいかないので、黙って耳をダンボに聞いていただけなのであるが、いわれなき罪を被るダンゴムシはつくづく可哀相であるなあと草をむしりながら思った。
それと、農薬も可哀相であるなあ。桜並木の下を歩いて、アメリカシロヒトリの集団イラ攻撃に遭わずに済むのも農薬散布のお陰であるのに...除草剤一発使えば、こんな面倒な草むしり作業からも開放されるよなあ、としみじみと思ったことである。


本日の音楽♪
「ちゃりんこ」(たむらぱん