ムーアの法則

米国の大統領2010年予算案のうち、NSF(National Science Foundation :アメリカ国立科学財団)関連予算の中に、『ムーアの法則を越える科学工学技術』という項目がある。
ムーアの法則とは、謂わば集積回路(IC)の性能向上に関する指標のこと。

(wikiより)
ムーアの法則(Moore's Law,ムーアのほうそく)とは、最小部品コストに関連する集積回路におけるトランジスタの集積密度は、18〜24か月ごとに倍になる、という経験則である。インテルの共同創業者であるゴードン・ムーアが提唱した。

具体的には、NSFでは以下のような目標設定をしている。NSFが公表しているコンセプトペーパー(計画書)から引用をしよう。
http://www.nsf.gov/about/budget/fy2009/pdf/44_fy2009.pdf

目標:現在の技術における物理的概念的限界を越え、米国が通信及び計算能力の世界トップ水準を保つこと。

科学的解説:ムーアの法則は、半導体集積回路に基づくコンピュータ処理能力が18ヵ月ごとに2倍になる経験則により、1965年に提唱された。現在のシリコン技術を前提としたムーアの法則の物理的概念的限界値は、10〜20年後に訪れると見込まれている。ムーアの法則を越える計算能力と通信技術は、まったく新しい科学的、工学的かつ概念的フレームワークを必要とする。多くの実験に基づく基礎研究によって、新しいハードウェア、構造、アルゴリズム、ソフトウェアが開発され、絶対的な計算能力と共に、効果的な入出力、データ記憶、内部通信、エネルギー消費の低減に対処することが可能となる。
ムーアの法則を越える科学工学技術(SEBML)は、経済競争力及び潜在的構造転換と強い因果関係を有する多くの専門分野にわたる研究投資である。即ち、ナノテクノロジー、コンピュータ科学、材料科学、物理学といった分野と強い関係があり、これら分野領域への過去のNSFの投資に立脚をし、新しい方向と挑戦のためのエネルギーを与えるものである。通信とコンピュータ産業とのつながりは、SEBMLが米国競争イニシアチブ(ACI)及び米国競争法の活性化に直接作用する。SEBMLの研究は、全米ナノテクイニシアチブ(NNI)及びネットワーク情報技術に関する研究開発(NITRD)へのNSFの投資をも強化するものである。

影響可能性:基礎研究は、以下に掲げるいくつかの領域に集中して行う。
*特定の量子を創成・操作するための能力を利用した新材料、デバイス及び加工技術。一部考えられる候補としては、光学的フォトニックシステム、スピン又はシングル電子トランジスタ、原子コンデンサ非平衡バイス、生物学的システムを包含した分子ベースアプローチ等。
*新構造、特に、新しい制御原理、大量設計、非対称不確定性デザインに基づくマルチコアプロセッサ。この領域の進展は、他のコミュニケーション、分配及びコンピュータシステムに適用できる可能性を有し、合体構成成果物に至る。
*計算能力を最適化するためのハードウェアと量子インタラクションを活用する新しいアルゴリズム。生物学的社会学的システムの考慮によって、新しいアプローチにつながる可能性。
*新しいデバイスの有効利用を可能にする新しいソフトウェア。それらをサポートする言語及びコンパイラとともに、新しいプログラミングモデルが必要となる。これらの並列分散処理システムを有したソフトウェア分析、モニタリング、デバッグ、文書化のためのツールが重要。

研究と教育の統合:SEBMLは、特に重要な新領域での訓練要員の開発を行いつつ、新たな水準能力のコンピューティング通信を可能とする。すべての活動は、学生との契約につながり、必要に応じ、公式・非公式の学習環境の新しいアイデアを創造させる。

共同研究への影響:NSFは、組織内及び他のコミュニティ(特に他の政府資金提供機関及び産業界)との国内外パートナーシップを適切に執行する。個々の調査員、グループ、センター機関へのNSFの効果的な資金提供メカニズムによって、この複雑な問題に取り組むものとする。例えば国防総省NASA、NIST及び情報機関関係者といった組織と協力するための仲介機関が存在する。

緊急対応:国際競争力を維持することが、より速くより効果的な計算能力の向上につながる。前述の通り、計算能力の物理的概念的限界は、20年以内に訪れるものと見込まれている。連邦政府としては、現在並びに将来における競争力を確実なものとにするために、材料、アルゴリズム、構造及びソフトウェアの次世代開発に着手する必要がある。NNIとNITRDに向けたNSFリーダーシップは、将来の挑戦を引き受ける用意のあるコミュニティの構築を支援する。SEBMLは、これら過去の活動を基にし、新たな方向へとそれを導く。

評価及び管理:当該投資の最大限の効果が認められる前に、10〜20年の間に、成否の指標が開発されるかもしれない。SEBMLの研究の実態を表す指標としては、SEBMLプロジェクトに関係している学生の範囲及びその多様性の程度、学際的なチームに参加する機会または専門的な仕事がより高い水準に向かうことに関連したデータが含まれる。(例えば、SEBMLプロジェクトに関係する研究者の増加数、共同プロジェクトの数、国家研究機関と民間部門とのさらなる協力、カリキュラム資料の開発あるいはSEBML研究を伝える非公式の教育活動。)
ハイライトを含む研究成果の指標は、NSFから表彰される。SEBMLにおけるNSF賞から生じた出版物と特許、技術革新を促進する新技術開発に関するNSF賞から派生したアイデアの官民セクターの採用がその対象となる。
SEBMLの主任研究員と他の者は定期的に会合を持つ。公式の要請に基づき、外部の契約者はデータ収集器具のデザインと評価プロセスの開発に支援する契約を結ぶ。全てのセクターを含む外部評価委員会は、SEBML研究教育に関しての評価に関与する。

研究資金:MPSは、2008予算の重点分野としてSEBMLを含む基金を創設する。2009年においては、技術革新を速めるために民間部門と国家研究機関との協力機会を創設することと同様に、合体活動を促進するための資金提供として、2000万ドルを要求している。

色々書いてはいるが、専門用語は、さっぱり分からぬ。
折しも、こちら瑞穂の国では、この世界不況の影響の中で国レベルのスパコン開発競争から民間企業が撤退する動きが喧伝されている。国策としての必要性を改めてここで述べるまでもないが、同じ時期、米国と日本でどうしてこうにも違うベクトルを志向しようとするのかは大変に興味深いことではあるには違いない。


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