爬虫類の館

犯人さん、結構な二枚目はんではないどすか。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090515-OYT1T00648.htm
「かばんにヘビが入った」と声をかけて財布を盗む何とも狡(:こす)い窃盗犯であるが、わたくしは、案に相違して、ヘビの類は大好きな質なので、驚く前に、「え?どこ?どこにいるの?」と夢中になって探し始めてしまうかもしれない。結局の所、夢中になりすぎて矢張り財布を盗まれてしまいました、というシナリオであろうか。


毎日の帰途の坂道にと或る無人の廃屋があり、真夏の夜などはなかなか素敵な雰囲気を醸し出している。
残念ながら心霊系は全く確認できないのであるが、ときどきそこの割れた窓硝子にヤモリがぺたりと張り付いていることがある。
ヤモリはそんなには敏捷ではないので掴まえるのは比較的容易であり、お腹や足のぷにぷにを暫く愉しんで、お前は可愛いねえ、けど日焼けしていないから軟弱そうだねえと言って、開放をする。


坂道を上がった植物園の辺りでは、二度ばかりカナヘビに出くわした。彼らは相当敏捷に逃げ回るので、此方も突然脱兎の如く駈け出して掴まえる。爆発的な瞬発力が捕獲の決め手である。
一度は失敗、一度は成功。顔をしっかりアップで確認をして、恐竜のようであるねえ、お前も可愛いねえなどと話しかけ、彼を怒らせ、暫くして開放。
ヘビは何度も死骸を見掛けている割には、なかなか捕獲には至っていない(※なお、夏季期間は、昆虫捕獲用の懐中電灯と黒蜜等のキットを常に鞄に常備してもいる)。


イグアナやトカゲをペットとして購入して、飼いきれずに放飼する事例が散見される(熱帯亜熱帯系は光熱費が馬鹿にならないとか)。
飼えないなら買うなということに尽きる話ではあるが、飼うことが赦されない我が身からすれば何とも罰当たりな話ではある。放たれたペットたちと件の植物園で遭遇する幸運はないものだろうか(アノールとか、カイマンとか…道でばったり出逢ったら、吃驚するだろうなあ。けれども、さすがに手ぶらでの捕獲は無理か、志賀の捕虫網買おうか)。
そうは言いつつ、しかしながら、かくいうわたくしも放飼の罪は過去にある。


それは爬虫類ではなく、アメリカザリガニであった。外来法が施行される数年前のことである。
水替えを怠るとすぐに悪臭(甲殻類と瓜類の腐敗臭は始末に終えない)を放つのに嫌気がさしたことと、共食いに呆れ果て(給餌が十分であっても弱った友の死骸を食べる)、彼らとの愛の終焉をその時感じた。
近所のあまり人が立ち寄らないほとんど放置された状態の小さな一坪程度のビオトープ人工池にそいつらをそっと放した。
池は水草で覆われ、水は緑に濁り、先客様がどれだけ居られて、その世界がどういう状態であったのかは知る由もなかったが、後年、近所の御子様達の間ではザリガニが釣れる穴場という噂が立ったらしい…。
わたくしも相当に罪深い。


本日の音楽♪
「ヘッドライト」(ニーヌ・マッケンジー