チュウの選択日本の選択

米国エネルギー省(DOE)のHPを覗くと、スティーブン・チュウ長官の緊急経済関連対策のプレスリリースが掲載されている。彼岸の国でもキーワードはどうやら'wise spending'。
日本での国会論戦は一見激しそうにやられている割に何だか「実」のところで噛み合っていないようにも見える。こういう情報を参考にして突(:つつ)いてみるのはどうなのだろうか。
http://www.energy.gov/news2009/7387.htm

(仮訳)
米国の科学リーダーシップを元の状態に復元し、エネルギー自給の道を探る大統領のエネルギー関連予算政策について

2009年5月7日

ティーブン・チューDOE長官は、本日、オバマ大統領の2010年概算要求のうちDOE関連分264億ドルについての詳述を公表した。これは、信頼でき、クリーンかつ安全なエネルギー並びにその安全保障を確保し、新たな雇用を創出し、気候変動に取り組む中で、飛躍的な科学の発展と革新的なテクノロジーへの政府の関与について焦点を当てたものである。当該予算はエネルギー自給と雇用創出への重要な投資を行う一方で、うまくいっていない、あるいは、もはや必要ではないプログラムを削減することとしている。


当然のことながら、国民の関心は「何に力点を置くのか(石油代替エネルギー開発であることは周知)」よりも「何を削るのか」という方にあろう。重点化というのはそういうことである。
しかしながら、このリリースの範囲では、以下にある通り、「民間で出来ることは民間で」といった方針は示しているが、具体的に何を削るかまでは述べていない。
ところで、「原子力」は明らかに前政権とはポジションチェンジのような気がするがその論評はまたの機会に。

具体的には、大統領の2010年予算は次のとおり。
*企業が自ら資金供給が可能な石油ガス民間研究2億ドル以上であって、他の投資ほど効果的でないプログラムのための基金の削減
*エネルギー転換インフラを改良する一方で、クリーンで再利用可能なエネルギー源の使用を大幅に拡大
*高性能で、強靱で、安全なスマートグリッドの開発
*科学研究と技術革新におけるアメリカのリーダーシップの復元:クリーンエネルギーの雇用が新世代につなげる
*低排出のプラグイン及びハイブリッド車両の明確な改良、温室効果ガス削減を企図するオバマ政権の重要な投資として、原子力エネルギーとクリーン石炭技術の改良
*武器備蓄、核拡散防止と進行中の環境クリーンアップへの継続的な努力と長期管理責任の一部としてのレガシー管理の安全を保証


同じDOEのHPの長官予算プレゼンテーション資料の中に削減分野の具体的な例示がなされている(8頁目)。これだけが対象分野ではないと思うが。
http://www.energy.gov/media/Secretary_Chu_2010_Budget_rollout_presentation.pdf

Cutting funding for deep-water and unconventional oil and gas research that industry can and does fund on its own.
Moving away from funding vehicular hydrogen fuel cells to technologies with more immediate promise

(仮訳)
深海開発及び非在来型の石油・ガスへの基金の削減
水素燃料電池車技術開発からの撤退


水素自動車やめてしまうのか。日本は結構力を入れていたと思う。ハイブリッド車燃料電池車で行くということか。

(wikiより水素自動車の将来性について)
燃料電池自動車と比較して劣る点はあるが、既存のエンジン技術を応用できるメリットがあり、またエンジンを使って加速するというモーターでは得られない内燃機関独特の走行感は、燃料電池自動車とは違うマーケットを形成できるものとも言われている。
これらの点に加え、触媒にレアメタルを使用する燃料電池を搭載しなければならない燃料電池自動車に対し、水素自動車は従来のエンジンを改良するだけでよいため、圧倒的に安価に仕上がる、という利点もある。そのため、上記にある、マツダが開発した水素とガソリンのハイブリッド自動車RX-8 ハイドロジェンRE)の価格は、従来車よりも100万円程度高いもので済むと予想されている。


同じく日本が力を入れていたメタンハイドレードもこの際撤退と言うことなのか。

(wikiよりメタンハイドレードの課題)
例えば、南海沖海底のメタンハイドレートは潜水士が作業できない深い海底のさらに地下に氷のような結晶の形で存在する。そのままでは流動性が無いので、石油やガスのように穴を掘っても直接汲み上げられず、石炭のように掘り出そうとしても、ガスの含有量が少なく費用対効果の点で現実的ではない。ハイドレートを含む地層を暖めるなどすれば、少しの温度の上昇や圧力の低下でメタンがガスとなって漏れ出してくるが、上層や周囲の土中がハイドレート生成に適する氷を含む温度や圧力の環境であれば再びメタンガスは水分子のカゴに取り込まれてしまう。メタンがガスとなって結晶から遊離する時は吸熱反応となる事も、結晶への再捕獲を助ける。これらの事情によって、低コストでかつ大量に採取することは技術的に課題が多い。


どちらの選択が正しかったかは歴史が証明する以外無いのであるが、彼我の力点の置き方は国によって異なるというのは大変面白い(今回は、エネルギー分野の話)。


(補筆)
わたくしの好きな連載コラム「東京から見るオバマアメリカ」において、大統領のジョークスピーチの内容を詳しく取り上げている。それにつけても、ユーモアの扱いは日本人には難しい。懇切丁寧なプロ翻訳家の解説。必読。
http://news.goo.ne.jp/article/gooeditor/world/gooeditor-20090511-01.html



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「JOKEでSHAKE」(大沢誉志幸