水澄む水に住むという

クラゲというのは実に美しい不思議な生物であるなと以前に感銘を覚えて(4月6日付け「バンデル星人はクラゲに非ず」を参照のこと)、それで連想するのであるが、深海というのは文字通り奥が深い。そこに住む生物も矢張り未知の世界にあると言える。


深海に住む生物というとシーラカンスのような化石っぽい魚とか提灯アンコウのような異形の類、あるいは、華奢なエビやウミグモの仲間くらいしか思い浮かばないが、世の中には本当に不思議な生物というものはいるもので、全体はごく普通の姿形の魚なのに、頭の部分だけが半透明な深海魚というのが居るのだそうである。
デメニギス。まるでキ●イダーのような魚、本当に実在するのか。

(wiki
デメニギスはニギス目デメニギス科に所属し、デメニギス属に含まれる唯一の魚である。太平洋北部の亜寒帯海域に分布し、水深400-800mを主な生息域とする。日本近海では岩手県以北の沖合に分布する。
本種の最大の特徴は頭部および眼球である。デメニギスの頭部は透明なドーム状の膜で覆われ、内部は液体で満たされている。
デメニギスが最初に記載されたのは1939年であるが、実際に生きている姿が観察されたのは2004年のことで、頭部を覆う透明なドームの存在もこのとき初めて確認された。それまでに捕獲されていた個体では、このドーム状構造物は傷つき原形をとどめていなかったのである。

百聞は一見に如かず。映像もある。
http://umafish.com/2009/02/post_63.html

全くもってお見事、摩訶不思議としかいいようがない。ちなみに、キカ●ダーはこのデメニギスを真似たわけでないことは年代的な経緯からも明らかではあろう。
何とはなしに、深海生物に興味を持つマニアは、マニアの王道のような気がするのであった。


わたくし自身は深海魚、魚系に特段の興味を持ってきたわけではないものの、自然博物館系列の中で水族館は、好きな方の部類に入る(実は全部好きなのであるが、一番好きなのは、爬虫類館、次に野草園、…)。


十何年か前に訪れた日本最北にある水族館は相当うら寂れていて、それもシーズンオフ近くに立ち寄ったものだから、最果て感に満ち溢れていたが、中に入って、近海(日本海オホーツク海)に棲息する魚介類の展示は大変に地味目ながら結構な魚たちの賑わい様が嬉しかった。昨日の夕餉に並んだ地元でしか食せない珍らしい魚たちが皆そこで元気に泳いでいたので、見ながらにして、その魚の味わいを想起できるリアリズムを体感できるのが何よりも嬉しかった。


関東のとある海なし県の水族館は、淡水魚系専門のそれである。フナやドジョウと雖も里山の魚たちもただ只管可愛いが、一番感銘を受けたのはタガメの展示であった。最初はアマガエルがいたので、カエルコーナーかなと思ったが、水草タガメが掴まっていた。水生昆虫の王者といえば、何をさておきタガメであろう。久しぶりに生きた元気な姿を拝見した。


都会の水族館でやっている夏季恒例のナイトツアーも大勢のお子様達に混じって行ってきたことがある。
懐中電灯で夜行性の生物たちの生態を観察するという趣旨のもの。ただし、わたくしは専らカエルとトカゲとヘビばかりをずっと懐中電灯を当てては観察していたので、魚たちはよく覚えていない。


海の話でいま思い出したのだが、学生時代に研究室の先輩が夏休みのお土産にと、ウミガメの缶詰(アカとアオと両方あったように思うが、当時のワシントン条約との関係については承知していない)を持ってきて、珍しいので皆で酒盛りの肴にしようと缶詰を開けたところ、途端に異臭が部屋中に漂い、パニック状態になったことがあった。タガメも臭いが、カメも臭い。真夏に1週間掃除をほったらかしにしておいた水産加工場のような臭いであった。


本日の音楽♪
「I'M NOT IN LOVE」(10cc)