オバマ大統領科学を語る(中)

オバマ自らの科学技術政策の中身を語る、のつづき。
今回は主にエネルギーや環境、医療問題を語る編。
科学を本来あるべき場所に戻すことへの言及も後段に少しばかりある。予算増額以外の話で拍手が2回ここで起きているということは、米国の科学者達も相当に「堪っていた」ということであろうか。いやはや。

そして、私の予算においては、エネルギー省の科学関連予算を2倍にします。この国の科学的発見の潜在的可能性は、研究者が利用可能な研究材料によって定義できるということを私たちは知っています。したがって、それら予算には、加速器、スーパーコンピュータ、高エネルギー光源、ナノ材料のための施設等の設置運用を含みます。

しかしながら、最新の計画においては、政府単独による投資は行いません。政府の関与は、研究所から市場までの範囲に及びます。したがって、私の予算では、研究税額控除を恒久化します。これは、企業が新しいアイデアや新技術、新製品を開発するために屡々高いコストを敬遠することを政府が支援するべく、私たちが使うあらゆる費用から2ドルを控除するという税額控除制度です。そうした措置は、過去には往々にして、経過措置であったり、時限的な措置とされるだけのものでした。私は、この国の至る所で企業の人達から再三再四こうした話を耳にしてきました。この措置を恒久化することによって、正に企業が雇用と経済成長を産み出すプロジェクトの計画を可能にせしめるのです。

第2に、エネルギーを作りだし、利用し、節約をするための新技術の開発以上に重要な技術革新は他にありません。このことは、私の政権が21世紀のクリーンエネルギー経済を拡大することへの先例のない政府関与を構築した理由でもあり、エネルギー省を担当する長に科学者(※Steven Chu博士、ノーベル物理学賞を受賞)を配した理由でもあります。(拍手)

この地球上の私たちの未来は、炭素汚染によって引き起こされる事象に対処する私たちの決意次第に拠るところが大きいものと言えましょう。また同様に、国としての将来は、新しい発見の追求において世界を先導せんがための機会としてこの挑戦を受け入れようという私たちの意思次第でもあると言えましょう。

ソビエト連邦が半世紀以上も前に宇宙船スプートニクを打ち上げた時に、私たちアメリカ国民は大いに驚嘆をしました。ソビエト国民は、宇宙開発において私たちを打ちのめしました。私たちは選択をしなければなりませんでした。私たちは、敗北に順応することも、挑戦を受け入れることも可能でした。そして、いつものように私たちは挑戦を受け入れるほうを選択したのでした。

Eisenhower大統領は、NASAを創設し、小学校から大学院までの科学と数学教育に投資するための法律に署名をしました。そして、その数年後、全米科学アカデミーの1961年の年次総会の1ヶ月後に、Kennedy大統領は議会の合同委員会の前で、アメリカ合衆国が人類を月に運び、問題なく地球に戻る計画を大胆にも宣言しました。

科学界はこの目標に当初は反発をして、その後、それを達成しようと取組み始めました。それは月面への第一歩に至るだけのものではありませんでした。それは、私たちの生活レベルでも飛躍的な第一歩に繋がるものでした。アポロ計画からは、腎臓透析と浄水システムを改善した技術が産み出されました。また、危険なガスを検知するセンサー、省エネルギー建材、消防士と兵士によって使われる耐火性衣類などもそうでした。概して、教育研究資金における非常に多額な投資というものは、科学技術における好奇心と創造力の大きな波及効果というものを産み出します。そこから齎される利益は数え切れないものがありました。本日お越しの皆様には、こうした科学者になって戴かなくてはなりません。私たちは、そうした挑戦を繰り返さなければならないのであります。

スプートニクの時でさえも、化石燃料に対する依存を断つための世代的挑戦というものはありませんでした。様々な点で、これは解決するためには、私たちの眼前に頑として立ちはだかる壁へのさらに難しい挑戦を必要とします。

しかしながら、エネルギーは私たちの、この世代にとっての重要なプロジェクトであります。したがって、私はこの国の目標を2050年までに炭素汚染を80%以上削減するというように設定をしました。つまり、このことが(拍手) 何故私が、議会と協力して、この目標をクリアするための支援政策を邁進しているのかの理由でもあります。

私の復興再生計画では、来たる数年間のあいだに、この国の再生可能エネルギーの生産能力を2倍に高めるためのインセンティブとして、生産税額控除の拡大、債務保証、投資を刺激する補助金を提供します。1つの例示を出しましょう。連邦政府の研究開発資金は、過去30年のあいだに太陽電池のコストを10倍も下げました。私たちの新しい試みでは、太陽及び他のクリーンエネルギー技術の競争を促進します。

私の予算においては、エネルギー効率が同等な再生可能エネルギー源への投資として、10年間で1,500億ドルを計画しています。それは、気候変動への理解促進に繋がる新たな宇宙開発能力の向上のための国家研究会議(NRC)により優先的に進められるNASAへの支援を含みます。

本日、私は初めて、この組織が推薦するところのエネルギー高等研究計画局(ARPA-E)のイニシアティブに資金を提供することを表明致します。(拍手)

当然のことながら、これは、スプートニクに対抗してEisenhower政権が創設した米国国防総省高等研究計画局(DARPA)に基づくものです。それは過去の歴史を通じて、高い危険性と高い研究報酬を追求してきました。インターネットの先駆けとして知られるARPANET、ステルス技術、全地球位置測定システムなどは全てDARPAの業績によるものであります。

このため、ARPA-Eにおいても、ハイリスク・ハイリターンの研究を同様に進めるものと思われます。また、私の政権では、市場に立脚した炭素排出にキャップ制を導入するための包括的な法律を追求します。私たちは、有用な再生可能エネルギーを作り出します。科学者が重点地域で集中的に研究が行えるように、適所に資源を配置します。そして、私たちの創造力の源泉が正にこの国の全域で研究室と企業の間で交換・交流されるであろうことを私は確信しています。私たちはこの問題を解決することができるのです。(拍手)

さて、21世紀において、クリーンエネルギーで世界を先導する国は、21世紀のグローバル経済を先導する国でもあります。私は、アメリカがその国になり得る可能性があり、なり得なければならないのであると信じています。しかし、グローバル経済を先導するためには、そして、経済が成長し、技術革新を興し、家計が充たされるようになるためには、私たちの健康管理システムの欠点にも触れなければなりません。

復興再生法は、この国の医療記録を電算化する長大で時間のかかる手続きを支援します。それによって、何億ドルもの経費と何千人もの人命が犠牲になる重複、無駄、エラーを減らします。

しかし、重要なことは、これらの記録が患者が病気の予防と治療により積極的に参加する機会を提供する可能性を含んでいるということです。私たちは、これらの患者記録をしっかりと制御・維持し、彼らのプライバシーを尊重していかなければなりません。それと同時に、私たちの病気への理解を助けることとなるエビデンスをこうした情報の中から発見するかもしれない医学研究者に何10億もの匿名データを提供する機会を与えているわけです。

歴史はまた、医療における最大の進展が科学のブレークスルーによって齎されたことを教えてくれます。抗生物質の発見、公衆衛生学の発展、天然痘とポリオその他多くの伝染病のワクチン、ある種の血液がんを抑制する錠剤、エイズ患者を助ける抗レトロウイルス薬などがそうです。

必ずしも生物学、遺伝学、医学ではなく、物理学、化学、コンピューター科学技術といった最近の進歩によって、来たるべき数十年後には疾病対策が飛躍的に進んでいる可能性があります。このため、私の政権では、国立衛生研究所(NIH)の資金を増額し、がん研究を支援するため60億ドルをこれに含め、 毎年継続的にがん研究費を2倍にしていくことを約束します。(拍手)

さて、私たちは、科学をその本来あるべき位置に戻そうと考えています。3月9日に、私は明確なメッセージを込めて大統領覚書に署名をしました。私の政権においては、イデオロギーの前で小さく身を潜める科学の日々というものは、既に終わっています。(拍手)国としての進歩、就中、国としての価値は、自由で開放的な問い掛けに根差すものです。科学的な一貫性や完全性を徐々に蝕むということは、私たちの民主主義を蝕むことでもあります。それは、私たちの生活信条にも反するものでもあります。(拍手)

そういうわけで、私はJohn Holdren君とホワイトハウスの科学技術政策局に連邦政府の方針が最高かつ最も公平な科学的な情報に基づくことを確実にするために新たな努力を払うよう指示をしました。私は、こうした事実が科学的な決定を導き、遠回りにならないということを確信します。(笑)

この努力の一部として、私たちは、この目標達成のための個々人の研究だけでなく、共同研究を募集するウェブサイトをすでに開設しました。それは小さなステップではありますが、より透明で、個人参加方式によって、民主主義を形作るものであります。

また、私たちは、公共政策を進める上で直接科学界を雇う必要があります。このため、本日、私はその人事を発表しました。「大統領科学技術諮問委員会」(PCAST)としてこれを位置付け、私は彼らと密接に連携を図っていくつもりです。この共同議長は、すでに紹介されましたVarmus博士、Lander博士そしてJohn君であります。この委員会は、経験と見解の多様性を備え、多くの科学的な訓練を積んだリーダーによって代表されています。私はPCASTに科学的な技術革新の文化を育み、継続的に国家戦略について忠告を行うことを課しています。

John君に加えて、…フライングしてしまいました、失礼。進んで戴いて結構。(笑)私はすでに紹介をしていました。

生物医学において、正にPCASTが行うべきことの例として、今日進行中である生命科学と物理科学の間における歴史的な収束を私たちは間近に目にすることができます。ヒトゲノム解析計画といった公的なプロジェクトの下で、何万もの研究所で発見されるデータと知見を創造すること。患者を助ける診断法と治療法の科学的ブレークスルーを迅速に臨床段階で行うための科学的・制度的な障害を確認し、これを克服すること。などです。

環境科学においては、天候予測、宇宙からの地球観測、私たちの国の土地、水、森林の管理、沿岸や海洋漁場の管理の強化が求められています。

私たちはまた、世界中の友人たちと共に働く必要があります。知見、コスト及びリスクが共有されるとき、科学技術革新はより迅速に、そして、より効率的に進行します。科学技術が私たちの手助けとなるための挑戦の多くは、全世界にそれが影響をします。石油に対する依存、気候変動の影響、流行性疾病、核兵器の拡散などがそれに当たりましょう。

そういうわけで、私の政権では、共通の関心をもってそれらを行う多くの地域との国際的な科学技術協定の参画に重点を置いています。実際に、今週、私の政権は、共通のエネルギー対策への挑戦に参画する世界中の主要な経済人のリーダーを集めています。

(下)につづく


本日の音楽♪
「ティアーズインヘブン」(エリッククラプトン)