印度主義

印度の山奥でアノクタラサンビャクサンボウダイと修行に励んでいたレインボーマン(並びに、そのヒーローの後を追随したらしい新興宗教創設を目論む現世の皆の衆)は、果たして氷河保存の運動に加担していたのかどうかといった話は、今回のニュース記事とはこの際全く関係ない。

http://www.guardian.co.uk/environment/2009/nov/09/india-pachauri-climate-glaciers

(仮訳)
地球温暖化によって氷河が溶けることを否定するインドの『傲岸』さ
IPCCラジェンドラ・パチャウリ議長は、気候変動によってヒマラヤの氷河が縮小したとの証拠はないと主張する報告書を発表したインド環境省を『傲岸』だと厳しく非難。

 気候科学者のリーダーは、今日、気候変動がヒマラヤの氷河を「異常に」縮小させている要因であるとの証拠は存在しないと主張するインド環境省の政府報告書の公表を受けて、環境省は「傲岸」であると非難をした。
 インドのジャイラム・ラメーシュ環境大臣は、デリーで当該論争の的となる報告書を公表した。その中で、山岳の氷が溶けることについて、「常識的疑問を呈する」ものだと言及している。
 2年前に、地球温暖化のリスクを評価する国連の気候変動に関する政府間パネルIPCC)は、世界中の現象に先駆けて氷河が一番速くに後退していることを警告し、「遅くとも2035年までに全く消滅してしまう」可能性を指摘した。
 ラメーシュ大臣は、そのようなリスクの存在を否定し、「地球温暖化とヒマラヤの氷河で起きていることを関連づける決定的科学的な証拠は何もありません。」と述べ、僅かの氷河の後退はあるが、「歴史的警告」に及ぶような程度のものではないとも付け加えた。
 これに対して、IPCCラジェンドラ・パチャウリ議長は、ガーディアン紙にこのようにコメントを寄越した。「私達は、そこで起きていることについての非常にはっきりした考えを持っています。大臣がどうしてこうした証拠に基づかない研究を支持しているのか、よくわかりませんが、それはとても『傲岸』な発言であると思います。」
 ラメーシュ大臣は、「アル・ゴアIPCCの終末シナリオ」を自ら引き受ける用意があるとの発言もしている。
 「私の懸念は、このシナリオが西側の科学者から齎されたものであるということなのです。…インド政府としては、早急に、ヒマラヤの生態系で起きていることについての理解増進のための投資をしなければなりません。」と、大臣は付け加えた。
 「ヒマラヤの氷河」との表題をつけられた政府報告書は、インドの25の氷河について地質調査を集積した150年間の価値ある観察データに基づき、世界初の広範囲の調査研究であると主張する。
 本報告書を書いた地質学者のビジェイ・クマール・ライナ氏は、「ヒマラヤの氷河は後退していますが、しかし、それは並外れた規模のものではありません。何人かがそう言ってはいますが、氷河が消滅することを示唆する証拠は何もないのです。」と一部事実を認めつつもこのように言及する。
 パチャウリ議長は、当該報告が「ピアレビュー」を受けておらず、「科学的傍証」がほとんどないとして、それを退けた。
 「尊敬すべきこの人は、数年前に引退をされた方です。その人が再び登場し、数年前に確立された凡ゆる事象を否定するその行為は、全く不可解なものと言わざるを得ません。」
 注目に値する発見として、報告書ではガンジス河の主要水源であるGangotri氷河が実際には1977年に最も速く後退し、そして、現在でも「ほとんど同じ状態のまま」であると主張している。
 一部の科学者は、北部インドに何億トンもの水を供給するGangetic盆地の川床がかつて氷河であったものが枯渇をする可能性について警告していたが、そのような懸念は、この報告書によって牽制されることとなる。
 ライナ氏によれば、「西側の科学者」たちの間違いは、世界の他の地域における氷河の損壊率をヒマラヤ山脈にそのまま適用していることなのだと言う。「米国のアラスカで最も高い氷河でも、ヒマラヤの氷河と較べてみれば、最も低いレベルに満たないものなのです。私達の国の9,500の氷河は、非常に高い高度に位置しているのです。それは、完全に異なるシステムなのです。」
 「モンスーン気候が続く限りにおいて、氷河は存続されましょう。氷河を溶かすためのより速い方法を知ろうとすれば、多くの要因が挙げられるでしょう。雨量、瓦礫、起伏、地形…」ライナ氏は言う。
 パチャウリ議長はそれに応える形で、そのような主張は「気候変動否定論者と学校の生徒が考えるような低次元の科学」を想起させるものだと否定する。
 「私は、大臣の動機が何であるのか皆目見当もつきません。私達がヒマラヤよりも広範囲な測定値を必要としていることは明らかなことなのであって、衛星画像から何が起こっているのかということは明白な事実なのです。」
 多くの環境保護主義者は、大臣の主張には納得できないと言明している。インド首相主宰の気候変動議会の委員で、科学・環境センター長でもあるスニタ・ナーレン女史は、「この報告は多くの混乱を齎すものです。」と述べる。
 「首相主宰の議会では、つい先だって、はっきりした氷河の分裂がより速く進行していることを示す多くの調査結果を含む包括的なレポートを受け取りました。私は、ラメーシュ大臣がいったい何をしたいのか、全く理解できません。」

反グローバリズム運動の先導を行く印度でもある。
「西側の科学者が導いた結果だから信じられない」と、堂々と世界に向けて発信することを何ら厭わない印度でもある。
惜しむらくは科学の土俵を外れずに議論を深めて欲しいのだが、しかし、「何でも有り」の羨ましい規範を持つ印度ではある。
条件反射的に蔑んではいけない。それは決して彼らが無知であるとか劣っているとかいうことではなく、わたくしたちが見極めなくてはいけないのは、有利な成果を得るが為の、彼らのそうした高等戦術なのである。要すれば、確信犯的に攪乱をさせているのである。
傍観する側としては、西側が怒って混乱を来す様を見物するほうが愉しいのかもしれないが(案の定、「傲岸」とか「傲慢」とか「尊大」とかいう辛辣な投げかけをしてる)。
どちらがエレガントで受け入れやすい仮説なのか。激しい議論は歓迎すべきである。但し、繰り返しになるが、科学の土俵を外れずに議論を深めて欲しいところではある。
ちなみに、記事中に登場するパチャウリ議長。ゴア氏と一緒にノーベル平和賞を受賞していたが、確か彼もインド人であった筈…。さても印度、奥深し。


本日の音楽♪
「面影の女」(チャダ)