構想に煮詰まった三流脚本家が…

不謹慎な言い方ではあるが、三面記事も殺伐としたものではなく、心安らぐ、あるいは滋味深い事件記事というものを読みたい。最近はスカッとさせてくれる記事が少ないので、少なからず、わたくしはつまらない。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/crime/311626/

◆“カップルが集う”旅館に強盗 女性殴り5千円入りバッグ奪って逃走
12日午前2時45分ごろ、東京都●東区●岸の「●●旅館」に男が押し入り、フロントルームの長椅子で仮眠していた女性アルバイト従業員(36)の頭を殴ったうえ、現金約5000円などが入った手提げかばんを奪って逃走した。女性は軽傷。警視庁●谷署が強盗致傷事件として捜査している。
 同署などによると現場はカップルが利用する旅館として知られており、当時、客室8部屋は満室だったという。

長椅子で仮眠という過酷な労働状況に加えて、強盗被害に遭遇し、殴られ金品を奪われ、挙げ句の果てには、その後の報道で勤務状態や所持金、自らの年齢まで世に知らしめられてしまったアルバイト従業員(36)女史にとっては、真に踏んだり蹴ったりのお気の毒なことには違いあるまいが、わたくしには、この記事の最後のワンセンテンスのくだりがどうにも気になる。
カップルが利用する旅館』…記者はどういう意図でこのような表現をしたのだろうか。斜な言い方をすれば、「連れ込み」「逆さクラゲ」という類のものだということをこの際念押ししておきたかったのか。その念押し情報は、記事掲載に値するほどに価値あることなのだろうか。『8部屋満席だった』(自分はこうして夜遅くまで働いているのに…)という、特に括弧書きの方を暗に主張したかったのだろうか。8部屋満席、商売繁盛、結構なことではあるまいか。


一方では、よくあるケースではあるが、こんな強盗事件も。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091015-00000045-san-soci

◆強盗、2千円だけ返す 「生活費ないと困るだろう」
 14日午後2時5分ごろ、東京都八●子市南●川町の民家に男が侵入。この家に住む無職男性(91)に刃物のようなものを見せて「カネを出せ」と脅した。男性が現金5万円入りの封筒を渡すと、男は「生活費がないと困るだろう」と言って2千円を返し、逃走した。男性にけがはなかった。警視庁高●署は強盗事件として男の行方を追っている。


お金を返すという行為並びに本当にカギ括弧の通りに言ったのかどうかはよく分からないが「生活費がないと困るだろう」という捨て台詞に対して、少しばかり情のある強盗じゃないのと思わず評価してしまいそうになりがちであるが、被害者が齢九十一歳の後期高齢者であるという点や5万円のうちのたった4%しかポイント還元していない点などを考慮すると、当初の評価は十分に相殺されて余りあると思うのだが、どうか。裁判員制度では、その点、情状酌量の余地はないものと思われるのだが。何にせよ、長い風雪の歳月を乗り越え安寧を求めるお年寄りにとっては、刺激が大きすぎる。法理以外の観点から見ても、人道を大きく外れていよう。


現実はドラマ以上にドラマティックであるが、矢張りドラマのようには冴えてはいないのである。


本日の音楽♪
真夜中のカーボーイ」(リー・モーガン