東京タワーを格好良いと思うわたくしは、果たして角松世代なのか

このシルバー・ウィーク、諸般の事情これあり、アテンダント役として東京都内観光に赴いたのである。観光地は何処も彼処も観光客で一杯であった。
中でも、かの東京タワーは大変な人出で、何十台もの大型観光バスが駐車場を埋め尽くし、展望階へのエレベータ待ちの行列が建物の外にまではみ出るほどの盛況ぶりであった。
高速道路料金低廉化の影響はこういうところにも現れているのだろうか(地方→東京)と早速考察をしてみた次第。


それほどの大盛況ではあったが、スタッフも非常に手慣れたもので、システマチックに誘導をして、寒天を詰め込むように、どんどんとエレベータの中に人々を押し込んでいく。
このため混乱らしきものはほとんど見られないのであるが、みんなどうして今更東京タワーくんだりに昇りにやってくるのかなと考えているわたくし自身が木乃伊になった木乃伊取りであるからにして、心境は複雑である。


「今度新しい東京タワーが出来るんで、本家も見納めかと思って」…って、一部は正しいが、何だか大いなる誤解に基づいていないでもない中、是非昇りたいという客人を押し止める理由はない。
新宿副都心の三角ビルの展望階からだったら、只で眺望できますとお勧めしたところで、「東京タワーに昇ってきました」「お土産にペナント買ってきました」というのが故郷(くに)に帰ってからのステイタスな発言なのであるわけで、矢張りわたくしとして水を差すわけにはいかない。


エレベータの前で中学生以下の子供達がスタッフからノッポン(東京タワーのマスコットキャラクター)のバッヂを貰っているのを横目で見ながら、「十何年か前にここに来たときは、観光客がほとんどいなくて、大人のわたくしにもノッポンのボールペンくれたことであるよなあ。」としみじみ思い出した次第(ノッポンのボールペン、まだ持ってはいるが、インクは出ない)。


大展望台も人だらけ。よくぞこれだけの人を高所に詰め込んだわ、位置エネルギー凄しということで、地上からその図を見上げた方が大変に面白かろうにと思いつつ、他の観光客の嬉々とした姿を見ていると、高所から下々を見下す「上から目線」というものは、一城の為政者気分を大いに味わえるということなのだろうか、とも考えてみる。


二階の土産物売り場は相変わらずローカル色満喫で雑然とした匂いが懐かしい。多くの似顔絵描き師たちが仕事に励んでおり、わたくしの馴染みの似顔絵師を捜したが、生憎居られなかった。
一度は二昔前にサンシャインシティの展望階で描いていただき、その後、十年余を経て、お台場で偶然再会をして今度はまたわたくしの家族を描いていただいた、我が家お抱えの専属似顔絵師でもある(繪の出来映えは、人物の風体の特徴をよく掴まえ、かつ、デフォルメの味も利いており、針す●お御大を凌ぐ素晴らしさである)。


田舎の家の仏壇の間に入ると、鬼籍に入った御先祖様達の遺影が額に入って並べて飾られていたりするが、似顔絵の方がずっと味があっていいと、わたくしは思うのだがな。


本日の音楽♪
「25年ぶりの手紙」(クーペ)