変な髪型で個性を発揮することが御洒落の基本なのかどうか(殿山泰治御大に聞いてみよう)

…ううむ。何というインパクトのある写真だろう。
http://sankei.jp.msn.com/photos/world/america/090904/amr0909040914001-p1.htm
おそらく100人中88人はこの写真を見て、被写体の二人を東京漫才協会所属の夫婦(めおと)芸人かしらと見間違うた筈である。確信を持ってそれは言える。

ああ、びっくりした。どこからこんな写真穿り出してきたのか。意欲は買うが。全く人騒がせな。久々に衝撃を受けた。空島の排撃貝(リジェクト)並みである。


そういうわけで、本日のお題は「宇宙人」ではない。写真の女性の側がUFO搭乗経験があろうが、スピリチャルなお料理が得意であろうが、この際どうでもよろしい。信条にあれこれ注文は付けない。本日は、髪型の話である。
わたくしも若いじぶんは相当にインパクトある髪型に種々挑戦をしてきたつもりであるが、最近はそういった冒険心満身の理髪師は少なくなった。何せ、理髪も美容も時間と簡便さがセールスポイントなのであるからにして。むかしは面白がって、わたくしの頭で遊んでくれていたものを。


髪型で気になることと言えば、毎朝の通勤時に駅ですれ違うと或る妙齢のお嬢様の髪型。超ワンレングスで、腰のほどまで黒髪を降ろしてホームを歩いていらっしゃる。日本美人の代名詞のような豊かな量と黒々とした輝きは、きっと自慢の種に違いあるまい。
しかし、臍曲がりのわたくしは、洗髪の手間はいかばかりかと気を揉み、それ以上に、そこまで伸ばしてしまうと切る機会を喪ってしまうのではないかと心配する。突然、自分自身を客観視する俯瞰の視線に襲われて、煩わしさや鬱陶しさに我慢ならなくなるといった衝動に駆られることを予言してしまうのである。すると何だか雁字搦めに縛られているようで、勝手に気の毒がってしまう。本人にとってみれば、まったく余計なお世話には違い有るまいが。


ところで、小さな男の御子様をお持ちの方で、前方はスポーツ刈り風で後ろ髪のみ裾ロングロングアゴー♪(しかも脱色系)しているあのひところのボクシング一家風なヘアスタイルは何というのだろうかね。ああいう髪型しているお坊ちゃまをお持ちの方が随所におられる。得てして、見掛け通り、なかなかにやんちゃなお坊ちゃまではある。
地元の運動会や花火大会会場などで時々見掛けるこうしたファミリー(3世代系が多い)は、全員が統一されたファッションを好む傾向が強いようである。
あれはやはり、タトゥとか特攻服のようなもので、そういう方面好きの証みたいなものなのだろうなあ。商標みたいな。鞄の模様にあるブランドマークのような。安さで勝負のプライベートブランドとは違うわよ、みたいな。ステイタス。恰好良いと思う人が見ればまさしくそうなのだろう。わたくしは残念ながらそういった粋を何も感じないが。


ぽんぽんと話が飛んで恐縮であるが、わたくしは、ときどきテレビを眺めながら、映っている人の頭を見て、「あれはヅラだあ」と思ったりする。有名な芸能人の誰それさんは実はヅラではないかといった話を尤もらしく口にしたりする。決してゴシップ好きではない真面目な義母が以前わたくしに対して「あの芸能人はカツラなのかしら」と真面目な顔で聞いてきたときは驚いた。帰宅の満員電車の中で、わたくしの真ん前に立って、勇猛に仲間と語りあう酔客のおじさんの頭がまったくのそれだと気付いた時と同じくらい驚いた。「実はあの××さんはですねえ…」と、したり顔で義母に囁き返したわたくし。


最後にもう一度本題に戻って、あの写真の二人の髪型についてなのであるが、この髪型を完成させるに際しての「お手本」はきっとないだろうから、誰がどのような意思決定の下に決めた髪型なのか、端的に申せば「いったい誰のセンスよ?」(特に、男性側のうなじあたりのピろん具合と女性側の頭頂の水引作法の流派などについて)ということが、怖いながらも是非とも知りたいところではある。


※殿山御大はとうの昔に鬼籍に入られていらっしゃるので、表題の答えは永遠に谺を返さない。


本日の音楽♪
「ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド」(ルー・ロウルズ)