「ロスアンゼルス・タイムス紙」投稿欄より

前述の謎の海水浴場監視員のおじさんとは違い、こちらの投稿者の氏素性は、明らかである。
http://www.latimes.com/news/opinion/la-oe-reed16-2009aug16,0,5811934.story

(仮訳)
◆親愛なるカリフォルニアへ

 とても長いこと考えてきたことがあるの。そして、長く考えた末の結論は、お互いに別々の道をこれから歩いて行きましょうということなの。そのことをこれからお話ししなければならないわ。私はあなたを愛していた。それが永遠に続くと思っていた。けれども、それは間違いでした。
 あなたも知っての通り、私達は50年もの長い間お付き合いをしてきた。そして、共に戦ってきたわね。けれども、はっきり言いましょう。今のあなたは、一体何者であるのかさえわからないほどに変わり果ててしまったわ。
 私達が初めて出会ったとき、私は若くて単純でした。そして、ひたすらあなたを愛していました。私は陽光が降り注ぐあなたの砂浜を無我夢中で走り抜け、あなたの美しい公園で遊び回り、あなたの全国トップランクの学校に通うことに私の至福の時間を費やしてきました。そして、それは「国家的モデル」とも言えるものでした。だから、私はその18年の間、あなたに本当に恋をしていたと正直に告白することができたのに、なのに、最初に約束を破ったのはあなたの方でした。それは「提案13号」でしたね。
 ああもちろん、財産税が私達の関係を悪くさせるんだということをあなたは私に話そうとしたわ。けれども、あなたが嘘をついていることを知っていたの。低額税は私達の仲を緊密にさせるとあなたは言った。あなたはケーキを手にして、食べたかっただけなのね。そんな増税などしないで学校と道路と公園を造ることができるのだともあなたは言った。けれどもその時から、私はあなたが現実から目を背けているということを知っていたの。
 あなたがきっとそれを乗り越えてみせる、そして、私達の大切な将来を壊さないでいてくれる、そう信じていたからこそ、私はあなたの元を去らなかった。だけど、正直に言えば、あなたのその快適な天候があったから、わたしはあなたの元を去らなかっただけのことなの。あなたの素晴らしい夕暮れ(ああ、その魅惑的な太平洋で私を口説き落とさないで)や、冬さえ燦々と陽光が降り注ぐあなたの364.5日温暖な気候は、他の州にはないものだった。
 時々あなたは発作的な地震の癇癪を起こして、私を驚かせたわね。また、何回か大きな山火事を起こして私を追い払おうともしたわ。けれども、私はあなたを許した。いつだってあなたを許してきた。私はあなたに首ったけだったの、カリフォルニア。だけど今、あなたは私の知っている全ての人を傷つけている。私はそれを傍観したまま見ていることには耐えられないの。
 あなたは将来を見失ってしまった。そして、私は失意の底に沈んでいます。私達は請求書のお金を支払うことができず、世界中の債権者からの電話が鳴り続けている。この州の子供たちはヘルスケア(国民医療保険)を受けることができません。この1年間に766,300人以上ものカリフォルニア州民が職を失いました。私達は差し押さえリストの最上位に名前を連ねています。あなたは変わる必要があるの。あなたはそれを認めようとはしないけれども。私達がつきあい始めた当時のように、ずっと一緒にいましょうねなんて言うには、いまさら気が引けるわよね。
 私があなたを思い続けていることは疑いようもない事実だけれども、私が新聞社でのお仕事を失って、そして私の家が差し押さえられ、競売に出されてから、私は外に出ようかと思い立ちました。私はあなたの元を去ります。カリフォルニア、あなたには真実を知っておいてほしいの。私が激しく惹かれているもう一つの州があるということを。
 それがどこであるのかについては、決して気になさらないで下さいね。あなたの頭の上あたりとだけ言っておきましょうか。それ以上は聞かないで。私があなたにお話できるのは、高価な電気や水道(それはそれは節制して限られた分量を使うだけだったわ)がいつ何時差し止められるかということを心配をしないで、日々安心して暮らす余裕を持ちたかったというだけのことなのです。
 ああ、そして、私がこれから暮らす新しい州にはまだ新聞社でのお仕事があって、それは私の胸をときめかせてくれるわ。そして、ヘルスケアの利点をもう一度思い起こさせてくれることにも私自身気づいたの。新しい州が完璧でないということは知っているわ。それにもちろん、天候はあなたほどに素晴らしくない。財政不足で暮らしもままならない。けれども、それは対処して、重ね着をすれば済むことだわ。完璧な場所なんてどこにもないのだから。
 だから、カリフォルニア、もう終わったことなの。あなたは、あまりにもたくさんの犠牲を私に強いてきた。私はやり直します。私は以前の幸せだった時間を見つめ直すことができる。それは私達がかつて持ちあったあの幸福な日々の時間なの。
 私がどこで暮らしているのか、母には電話で尋ねないで頂戴。あなたがもう一度偉大な州になりえるとは信じていますが、もう私にはそれを待つことができません。お幸せに。さようなら。

 キャンディスより


※キャンディス・リードは、9月からワシントン州Chelanにて新しい生活を始める。彼女は2月に発刊された「燃え上がらせてくれてありがとう−失業後に成功の波に乗る方法について−」の共著者である。

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