「南瀬戸内海新聞」読者投稿欄より

マニフェストとはなんぞや」
 鱶鰭浜海水浴場監視員:七本柳練蔵(69)

 8月30日に投票日を迎える衆議院選挙は、早くも立候補予定者による舌戦が全国各地で繰り広げられている。各政党のマニフェストも公表され、テレビ・新聞各紙などで議論が活発になっている。そこで共通に指摘されるのは、どの政党ともに財源への配慮を欠き、歳出増加ばかりの内容が目立つ「バラマキ合戦」が展開されているということである。 「バラマキ」が如何にして国を滅ぼすか。二十世紀末のバブル崩壊によって日本人は贅沢三昧には懲りた筈なのに、未だに金銭亡者の亡霊を引きずっているのだろうか。幼少の頃から困窮の生活を味わい、爪に火を点しながらこの日本の繁栄を支えてきた我々戦前の人間であればこそ冷静な判断が出来るというのに、まことに嘆かわしい限りである。
 例えば、医療費の軽減措置を強調する政党が多いが、それによってどのような状況が想定できようか。病院が患者で溢れかえることが容易に予想されよう。高速道路の無料化然りである。「子ども手当て」の創設によってどうなるか。世の中が子供で溢れかえる。海水浴場の監視は極めて大変である。
 このように「無償化・無料化」といった目先の欲に目が眩む有権者は、朝三暮四の猿たちを思い出すがよい。タダより高いものはない。国の借金が破綻をした暁には、「無償化・無料化」の公共サービスを享受した国民一人一人に借金の督促状が舞い込むのである。「何月何日までに税金何百万円を払われたし。さもなくば、家財道具を差し押さえ。」といった督促状である。それでも税金を払えない人間には、役人が督促状を持って連日催促にやって来る。それでも国の借金が返せない末路は哀れである。アフリカ彼方沖にかつてあった小国ヘチャカブスは、国家財政破綻により、国民全員が旅芸人の身に費やし、今でも世界巡業の流浪の旅を続けていると聞く。
 100年に1度の経済危機対策と称して、各党は国民生活を支援するために、政策を総動員する大義名分を得ていると言うが、国民全員がジプシー生活で世界中を彷徨うのは真っ平御免蒙りたい。国民の側もいつまでも政府依存体質のままではいられまい。国会議員も選挙で票を得るために甘言を弄するばかりでなく、国民に向かって「芋を食え、庭を耕せ、衣類はメリヤスのみ、2枚に限る」といった国民の真の自立を促す政策に打って出ていただきたい。
 幸いにして投票日までは間がある。日本がヘチャカブスの末路を辿ることなく、そして、有権者が錯覚に陥ることなく1票を投じることを期待したい。

あれまあ。

本日の音楽♪
「揺れる〜I Miss You〜」(野田幹子)