お嬢さん、その焼き芋はクローンですよ

◆「気持ち悪い」7割批判的 クローン食品に市民意見 内閣府、調査会で再審議へ

クローン食品を安全と結論づけた内閣府食品安全委員会に、1カ月で172件の意見が一般から寄せられ、そのうち7割程度が「気持ち悪い」など批判的意見だったことが26日分かった。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?b=20090527-00000110-san-pol


特に意表を突かれる内容ではないが、例えば、ゴミ出しの分別収集を守らないと或る御近所の小母さんから、「ゴミ捨て場が汚いわよ!」といった苦情を受けた地区長の心境と言えばよろしいだろうか。
オ・マ・エ・ニ・ダ・ケ・ハ・イ・ワ・レ・ト・ウ・ナ・イ・ワといったような(魔太郎みたい)。


昼食の食堂で山のような食べ残しの食器を平然と突き返し、賞味期限が過ぎただけでどんどんとゴミ箱に捨てていく、食べ物を粗末に扱う人々の多さ。自ら手間暇をかける労を惜しみジャンクフードへと走る人々の多さ。サプリメントや単一食品で健康を確保できると信心している人々の多さ。何の根拠も確認することなく「食品添加物はないに越したことがない」と言えば正論だと思っている人々の多さ。冷静に見積もっても、この国の食スタイルを巡る実体的精神的バランスは相当にイカレポンチな状況にあると思う。
そうして、この期に及んで「気持ち悪い」と来た。


いっそ「気持ち悪がるのはご自由に」という慇懃な返し方もあるかもしれない。海鞘を生のまま食べ、外国人から「Unbelievable!お前は神をも畏れぬ悪魔か!」と罵られるのに等しいことかしらと考えて、さもありなんと答えるが如く。
けれども、記事にある次の下りが何とも釈然としない。

委員会ではこうした意見に配慮して、下部組織の専門調査会で、安全性評価について再審議を行うことを検討している。


何時から食品安全委員会のミッションは、キモいことへの対処も行っていただけるようになったのだろうか。委員会の冠である「食品安全」というのは、気持ち悪いかどうかといったことも安全性評価の一材料に加えると言うことなのか。正に、至れり尽くせりセロリパセリ。


こうした官民含めたリスクリテラシーの低劣さ加減もさることながら、この御時世、食品安全委員会に全く余計なお仕事をさせてしまうという意味で、無駄な行政対応に伴う税金の無駄遣いということにもっと糾弾の声が出ても良さそうなものではないだろうか。お役人の増長には厳しい態度を取るのに、どうして血税そのものの価値や効果について声を大きく非難しないのだろうか。全く不思議なバランス感覚であると思う。


委員会では、「倫理的な側面からの検討も」などと、さももっともらしい理屈を付けようとしているようではあるが、気持ち悪いかどうかは倫理とは全く関係ない話である。(そもそも、そういった個人の感覚的な御感想を聞く側も聞く側だし、書く方の側も何か大きな勘違いをしているに違いない。)


食品安全委員会での再度の検討においても、恐らく「科学的に危険だという知見は現段階では認められないが、国民の多くは懸念の声を持っている。したがって、さらにクローン技術の国民理解のための周知徹底が必要である。」といった結論がせいぜいのオチであろうと考える。


但し、その懸念の声の中身は淡雪のような希薄な感情に過ぎない上に、「したがって〜」以下の文章は、リスク管理の必要性云々の議論とは直接関係のない「念仏の戯言」にしか過ぎない。この国の底の浅さである。


本日の音楽♪
「トンビ飛べなかった」(SPITZ