GO WEST その後

わたくしのお気に入りの雑誌の一つに「西の旅」という季刊誌があった。
「あった」ということであって、現在では既に廃刊になっている。
創刊号から欠かさずに購読を続けてきたが、これまでの全冊を重ねても百科辞典一冊分の厚さほどにしかならない、そんな短い期間だけの儚い刊行であった。
取り上げる題材は、西日本(概ねフォッサ・マグナライン以西の地)の観光名所旧跡あるいは町並みの紹介である。
JR・WESTの広報紙的位置付けでもあったのかもしれない。
主に西日本で発売され、東日本では極一部の大きな書店でしか見当たらなかった(私は途中から定期通信購読に切り替えた)。
ローカル誌である。


この雑誌が好きであった理由は、まず取り上げる観光名所旧跡地がマジョリティであるところの大衆に迎合していないこと。
時として相当にマイナーかつローカルなスポットが取り上げられる。
有名処は皆が見知っている。
そして、旅のガイドブック的編集に寄りすぎていないこと。
疑似旅行を感じることの出来る味わいのある風景写真が宜しい。
しかし、食べる遊ぶといったことに関する有意義な情報は少ないので、この本を持って旅に出てもきっと鞄の中でがさばるだけで余り役には立たない。
今結構な評価を受けている「ほのぼの系」「お散歩系」というものとも少し違う。


本号が最終号になるとの廃刊通告を受け取った時はショックであった。
編集の凝り方やスタッフの思い入れというものに共感をしていただけに尚更である。
予感も予兆もなく突然恋人から別れを告げられる気分にもそれは似ている。
実は、JRがWESTだけではないのと同様に、同様の局地エリア限定のローカル旅情報誌というものは他にもある(る●ぶとかではなくて)。
しかし、「西の旅」のような渋い味わいのある雑誌というものはなかなか見当たらない。
おそらく、それは、とりもなおさず、取り上げられる西日本の観光名所旧跡地の味わいの奥深さそのものに他ならないということなのであろうと得心をする。
西に向かうブルートレインもなくなってしまい、また一つ旅の風情というものが消えて無くなってしまったような気がする。


本日の音楽♪
「星の旅」(あんべ光俊