イラ

わたくしは、長年に亘り比較的重篤な花粉症に罹患しているということもあり、所要の服薬以外に、様々な花粉症緩和グッズと呼ばれる道具が欠かせない。
その中で、わたくしが常時携帯しているものの一つがフリ●ク。
花粉の飛散度合いに比例して、フルーツ→ユーカリスペアミント→ペパーミント→ブラックミントと使い分けをしてきている(単に味に倦きるというのも大きな理由)。
1回当たり2錠を経口するとして、1時間1回×14時間×2錠=28錠/dayとなる。
わたくしの発症期を約3ヶ月として、28錠×90日÷50錠/box≒50boxとなる。
1筺200円也として、しめて1万円となる。
福沢諭吉先生御一名様分の御出立。
なかなか業腹な出費ではある。


このように、この症例はいらいらいらと全く詰まらぬ思索(計算)をあれこれしてしまうものらしい。
そういった気の短くなっている状況の下で、このような記事は、如何せん鷹揚に構えて読むことがたいへんに難しい。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090223-00000004-cbn-soci
2月23日に横浜市理研横浜研究所で報道関係者を対象に開かれた「製薬協プレスツアー」(主催=日本製薬工業協会)で、谷●センター長は「スギ花粉症ワクチン開発」と題して講演。この中で、▽生後早期にBCGを接種させる▽幼児期からヨーグルトなど乳酸菌飲食物を摂取させる▽小児期にはなるべく抗生物質を使わない▽猫、犬を家の中で飼育する▽早期に託児所などに預け、細菌感染の機会を増やす▽適度に不衛生な環境を維持する▽狭い家で、子だくさんの状態で育てる▽農家で育てる▽手や顔を洗う回数を少なくする―の9か条を紹介した。

当該研究者は、「幼児期にアレルギー体質が決定する」という仮説を検証するための研究発表を行った中で、この花粉症にならないための9箇条なるものを発表したと言うことらしい。
アレルギー体質の決定云々の本論はアカデミックにさらに検証を重ねていただけばよいし、この9箇条の根拠思想となっていると思われる所謂「衛生仮説」についても、ここでケチを付ける気持ちはさらさらない。
専門家の御検討に委ねたい。


しかしながら、衛生仮説から演繹されたこの9箇条のひとつひとつの中身は、一体何なのだろう。
まず素朴な疑問として、それぞれの条項について、どのようにしてその真偽を検証をするのであろうか。
例えば、農家と非農家の実験計画を設計してご覧なさい。
小学校に行って、農家の子弟と非農家の子弟との花粉症発症者の数を比べるといった凡そ大雑把なデータしかとれないのではないだろうか。
どの程度その他の前提条件を一致させることが出来るかということになるのであろうが、そういうトライアルは困難を極めるに違いない。
他律要因が多すぎて、実験計画を設計することが極めて難しい。


よしんばそのような疫学データが存在するとしても(このために論文検索をかけてみる酔狂さは持ち合わせていないが)、いくらでもケチを付けられそうである。
例えば、こういうデータをよく見掛けるが

1987年のある統計によると、栃木県日光市内の交通量の少ない小来川地区と交通量の多い日光スギ並木地区の花粉の一日当たりの平均飛散数はほぼ同じだったが、花粉症の発症頻度は、前者が5%程度だったのに対し、後者は13%だったという。

このような実験計画の下だけでは、交通量の違いだけによる発症差の説明は、いつまでたっても仮説の域を出ないであろう。
こういったデータが全く不要だとは思わないが、エフォートのかけ方があるというものである。


演繹があまりにも恣意に過ぎるので、おそらく冗談半分なのであろうとも考えては見たが、もしかしたら、あちらの医学の世界では、こういった提言は凡そ常識の範囲内なのかもしれない。
そうは思いつつも、わたくしには、「風邪の予防のために乾布摩擦をしましょう」という主張と大差ないように思う(勿論「パンツ一枚で過ごそう」というスローガンでも宜しい)。
このアカデミアは、果たしてその程度のエビデンスで十分に通用する腰だめな世界であったのか。
Scienceを語るにしては、なかなか業腹な集団ではある。


本日の音楽♪
「思いで旅行」(永井龍雲