美容院で「プリンスのような髪型」と注文した場合、斬新なドレッドパーマではなく、きっちり七・三わけの刈り上げにされてしまうか?

英国はBBCのニュースにこんな記事があり、お国柄とは言え、歴史と伝統と気品とウィットとLadies&Gentlemenに支えられた彼岸の国では、あのプリンス(チャリ坊)さえもペテン師呼ばわりである。

http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/7934568.stm

Prince Charles detox 'quackery'

The tincture is part of the Prince's 'Duchy Herbals' range
Prince Charles has been accused of exploiting the public in times of hardship by launching what a leading scientist calls a "dodgy" detox mix.

表題にある"quackery"は、《いんちき療法》という意味。
所謂デトックスを謳うサプリメント商品について、科学者からdodgy(ペテン)と噛み付かれている御様子であるが、まず驚いたのが、彼の国では王室関係者自らが企業オーナーになれるらしいという事実。
こちらでは「宮●庁御用達」というブランドでさえ世間では未だに御威光が十二分に通用するというのに、御用達も何も、本人自らが企業オーナーになって商売をしてしまっているわけだから、凄い。


それでプリンスがオーナーになっている企業が売り出す商品の中身は、生薬チンキ剤。
おそらく、デトックス(毒出し)というくらいだし、プリンスは大の有機農業ファンらしいので、そういった所謂一つのLOHAS気分を殊更に満喫できるオーガニック商品なのであろう。
これに噛み付いている大学の著名な先生は、このチンキに毒出しの効果なんかあるわけない、証拠を出してご覧なされ、人体実験(血液検査)のデータを出せば一目瞭然じゃろうてと仰っているわけであり、加えて、こうも皮肉を述べている。

Prince Charles and his advisors seem to deliberately ignore science and prefer to rely on ‘make believe' and superstition.

『プリンスと彼の取巻き連は、故意に科学を無視し、見せかけと迷信に依存する傾向が強いようである。』
この先生のプリンス批判は今回が初めてではないらしいのではあるが(ということは、プリンスはこのほかにも怪しげな商売に手を染めているということなのだろうか?)、こうまで痛烈に皮肉を言われて黙っていては、プリンスの沽券やプライドはどうでも宜しいとしても、商売が上がったりとなる。
取巻きの責任者某が反駁をする。

tincture is not ? and has never been described as ? a medicine, remedy or cure for any disease.

『このチンキは、医薬品ではなく、あらゆる病気に対してレメディや治癒効果があると謳った表示はしてきておりません。』
つまり、医薬品じゃないんだから、効果・効能を謳って宣伝してきたことなんてあるわけないです、何も問題ないのですよ、という反論。
日本でも同じような行為をすれば薬事法違反の咎でお縄を頂戴する可能性があることを考えると、彼の国でも同じような枠組みの法令があるのだろうか。
実際に、デトックス効果を謳わずに販売しているとは内心思えないのも正直な感想なのであるが(さもなくば、商品のセールスポイントはプリンスがオーナーということしかなくなるが、頬を紅くさせ所在なげにぽつねんと立ち尽くす彼の容姿から、全ての毒を出しきって、すっきりさっぱりデトックス!なぞというイメージを果たして即座に連想できようか)、この医薬品とサプリメントの間に横たわる矛盾について、世間ではどのように解決に結び付けていこうとしているのであろうか、とわたくしは考えてみる。


医薬品のように特定成分を抽出し、成分や純度が一定の工業製品とは異なり、自然界の食品由来の特定成分を抽出・依拠したようなサプリメントでは、ほとんど加工食品(例えば、ドライフルーツ、ジュース)のようなものであり、医薬品並みの効果・効能を期待すること自体がおかしい。
同様に、医薬品と同じような安全性の評価と言うことも、これまでの食習慣を考えれば、必要ないように思える。
いんちき商売の肩を持つ気持ちは毛頭無いが、こういう紛らわしい境界食品に単に箍(:たが)を嵌めるだけが得策とは到底思えないのである。


医薬品と食品の境は何なのだろう。
我が国でもトクホなどというよく分からない境界線上のサプリ食品が存在するわけであるが、この制度で表示(販売)可能な効果・効能については、明らかに疾病治療効果を伴わないような、謂わばどうでもいいような効果(例えば、血液さらさら、骨丈夫といった効果)に限られていて、おまけに、それも目を瞠る効果があるわけではないことは、周知のとおりである。
あんなのばかりしか境界上の食品として認められない制度はどう見ても世のため人のためになっているとは思えない。
この先、折に触れて、このことについて考えていってみたいとも思う。


それと、
冒頭のニュースに関しては、プリンスのオーガニックなオカルト系大好き信奉を影で操る首謀者の存在というものがドラマなのであるよというのが、わたくしの感想。


本日の音楽♪
PIANO MAN」(ビリー・ジョエル