トンだ茶釜

トンカツ屋で戴くトンカツは、文字通りトンカツがトンカツ屋の看板商品であるからにして、自信を持ってその店が勧めているのは当たり前なのであって、大体にして専門店である限りはどこの店で戴いても大変美味しいものである。
チョッと意地悪にチキンカツを注文してみると、店による味の違いは却々(:なかなか)にして際立つのは興味深い。「チキンカツは置いていない。」と毅然と拒む店さえある。


チキンカツはさておきトンカツである。
大東京不忍方面の有名諸店で土産話がてらに高級一品を食するのも結構なことには違いないが、トンカツのまちと言えば、即座にわたくしが連想するのはこの上野ではなく、信州上田である。


こちらのトンカツはどちらかといえば庶民的でたいそうボリュームがあり、余り奇を衒わず、しかも、ソースとカツとキャベツのマッチングのバランスが非常に優れている。
当時わたくしが訪れたいくつかの店は、地元では名の通った店としてどこかしこも賑わっており、地元住民の意識は相当高いものがあったように思う。
したがって、御当地名物としてこのトンカツ料理をもっと自慢しても良いのではないかと常々思っているのであるが、観光パンフレットなどを見ても、殊更喧伝している様子は見当たらない。
あの店々が今はもう無くなってしまったというわけではあるまい。


寧ろこの町のトンカツ店の歴史は古い(キャベツ産地との同調の歴史がある)。
あまりに昔から地元に密着し身近すぎて、『観光』といった意識が沸き上がらないということなのか。
しかし、世の中、地域グルメなのである。盛岡冷麺、宇都宮餃子、富士宮ヤキソバ、久留米焼き鳥の時代である。
和蕎麦は北信南信方面の方々に任せておいて、自信を持って独自カラーを出したほうがいいと思うのであるがね。
余計なお世話か。


ちなみに、トンカツにも旬があり、地場高原キャベツが出回る初夏はじめからが一層美味しく戴ける季節である。
是非もう一度訪れて、食したい。


(追記)
過日、初めて訪れた名古屋郊外のとある町の無人駅に近いような古い私鉄駅の傍に一軒だけあった小さな店で食べた味噌カツがとても美味しかった。
名古屋訛丸出しの夫婦が揚げた、地元の家庭の夕食で食べるようなコツテリとした味わいの味噌カツであった。


本日の音楽♪
「クリスマス・イリュージョン」(PINK)