経団連会長と探偵稼業どちらが魅惑的か

格別のフリークというわけでもないが、ミステリ好きを自認するのであれば、どこかで島田荘司作品について触れねばなるまい。
かといって、何故、島田荘司なのかということについては然したる理由もなく、これが西村京太郎の御指名であっても、それはそれでよいのだろうが。
いずれにせよ、斯界を代表する一人といってもよいのだろう。何かとマニア向けの参考書も多い。

ここにわたくしの島田荘司ベスト5を掲げる。
 ◆異邦の騎士(原版)
 ◆占星術殺人事件
 ◆奇想、天を動かす
 ◆漱石と倫敦ミイラ殺人事件
 ◆出雲伝説7/8の殺人

これらの作品については、それぞれ、青春小説としての叙情性、トリックそのものの金字塔、社会派と本格派の融合の成功、パスティーシュ文学風の哀切とおかしみ、数多の鉄道トラベルものの覇道といった味が殊に際立っている。
そういった意味では、この作家の作品群の守備範囲は広く、オールラウンダーで華麗なプレーを魅せてくれる。このため、様々な読者の琴線を掴みやすいとも言え、幅広い熱烈ファンを多く抱えることとなる。

そうしたファンの方々には叱られてしまうのだろうが、この5冊を読めば、彼の作品探歴としては、だいたいのところ宜し可らずや。
というのも、熱狂フリークであればいざ知らず、一般の読者であれば、さらに網を広げて、他作品を読めば読むほど、却って彼の評価を貶めることにならないかと危惧するところがある。
尤も、ここに掲げていない他作品がおしなべて駄作であるということではなく(疲れる作品は多い…)、それほど、上記作品のレベルが及第以上であるとの見解に基づく。

ゴッドとか帝王であるとか呼称されている作家でもあり、さらにこれからも孤高の城を築き上げていくのであろう。
とはいえ、わたくしの掲げた作品は、デビュー10年以内のものにとどまる。
もともとが作家自身のエネルギーをそのまま塗り込めた作品が多いわけであるが、このエネルギーが読者にとっての開放につながるような、あらゆる壁を突き破る「突破力」のある、あの頃のような作品というものをもう一度読んでみたい。


※ちなみに、西村京太郎の会心作はと言えば、それは「殺しの双曲線」に尽きるであろう。


本日の音楽♪
「ミドリ」(GReeeeN