百鬼園先生は如何に

偶には時事ネタである。
「世界初、ペットのクローン犬誕生」とある。
http://backnumber.dailynews.yahoo.co.jp/?m=43573&c=science

クローン技術は、植物で言えば、挿し木や芋植えのようなものだから、動物でそういうものがあっても特に驚かないし、気にならない。
ほ乳類では、羊、牛、豚等でこの技術が試験レベルで実際に結構広く普及されており、日本を含む様々な先進国で当該クローン個体の安全性(人間がその肉やミルクを口にしても大丈夫なのかとか)のお墨付きが下されているとの由。(当たり前といえば当たり前の結果であるが、このコスト、先進技術にとっては避けられないカルマのようなものか。)

であるから、犬でクローン化がこの度実現したとしても、それは驚くには値しないが、昨年8月の記事には、韓国で商業ベース初のクローン犬(こちらは、レトリバー種ではなく、ブルテリア種)とある。どちらが正しい記事なのであるか。
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2501053/3187358

なにぶん商売ベースの発表であるからして、なにがしか割り引いて考える必要があろうが、この仔犬が正真正銘本物のクローン個体なのかどうかは、DNA鑑定を行えば、ほぼ明らかになるであろうと思われる。当然、きちんとチェックはしているのだろうが、詳細不明。

気になったのが、冒頭記事中に「(依頼人が)愛犬のDNAサンプルを生前採取し、凍結保存していた」とある。
どこの組織を凍結保存していたのか。クローン化のポイントは、採取した細胞をスタート(赤ちゃん)段階に故障無くリセットすることであるから、どこの組織を使ったのかは、当該技術の難易を左右するのではないかと素人ながらに考える。
そもそも、組織の凍結保存を考えるこの依頼人は、一体何者なのか。

ラブラドル・レトリバーは遺伝性疾患を比較的多く抱えている品種なので、クローン元が優良な種であれば、優良不良ブリーダーに頼らずとも、この技術は有効に利活用することが可能ではないだろうか。
例えば、盲導犬の育成・普及対策として、どうであろうか。

もう一つ気になるのは、こういった商売は本当にビジネスとして成り立つのか。
かつて同じような商売をしていたクローン会社は時経たずして店を畳んだように記憶している。
今回のお値段1350万円は、どういった相場観なのだろうか。

残るは、顧客満足度の点であるが、陳腐なSF小説ではないが、この仔はかつてのペットのように飼い主の心をそのまま満たしてくれる存在になるものなのだろうか。む論、気質、性格といったものの多くは、遺伝していないものと思われる。
それでも飼い主は、それほどまでに嬉しいものなのか。
いまは草葉の陰でノラやクルを愛でているであろう百輭先生に、御高説を賜りたいものである。

なお、記事では、「その名も「アンコール」」というオチをつけているが、わたくしには決してセンスよい名付けとは思えないが、どうだろうか。


本日の音楽♪
ブラディ・マリー」(ムーンライダーズ