色彩都市

松本竣介の絵画が好きである。
くすんだ茶と青の色調の都会の理性と知性と孤独を表した作品が気に入っている。
そのくすみに対して、暗いと評する人もいるが、じめじめ、もやもやした陰花植物的なものでは決してない。青年期に必ず付随する乾燥した孤独性とでも言おうか。

東京という街は、世界の中で最も美術館の充実したところだという話を聞いたことがある。成る程、大小含めて、美術館の数は多い。
しかし彼の街で、何か著名な特設展などに出掛けてご覧なさい。
世界に名だたる作品が往々出品をされていることは確かに白日の事実ではあるが、ゆつくりと絵画を鑑賞する暇もあつたものではない。
どんなに施設が充実していようと、新国立近代美術館であろうと国立西洋美術館であろうと、押し寄せる人人人の波で、絵画と静かに対峙などできるはずがない。
理髪師でもないのに、様々な後頭部のようすを鑑賞して帰ってくるのがオチである。

加えて、国内の美術館の造りは、やはり小ぶりである。
天井が低い。部屋の容量が小さい。展示ブースが細切れである。
海外の著名な美術館のスケールの大きさに直に触れてご覧なさい。
日本で、世界標準のスケールを持っているのは、美術館ではないが、国立博物館くらいのものであろう。

その点、地方都市では、そうした心配に及ばない。
美術館の数は少ないし、施設も大ぶりではないが、オンリーワンの美術館が全国各地域に点在している。
何よりも大切なことは、人が少ない。
したがって、たいへんエゴイスティックな物言いをすれば、作品の独占的鑑賞が容易に可能である。

わたくしは、大原美術館倉敷市)が好きである。
コレクションの数も質も立派。
観光地の只中にありながら、相応に静寂を確保することが出来る。
無論、松本竣介の作品も展示されている(「都会」)。

至福の時間をきっと戴ける。

本日の音楽♪
「パープル・モンスーン」(上田知華+karyobin)