一杯所望致す

わたくしが住む街のキーステーション(主幹駅)の半径300メートル以内に、総勢およそ20余軒には及ぶであろうラーメン屋さんが林立・散在する。
昨今の人為的作為的ブームとはいえ、この街にそれほどのラーメン需要があるものなのかと半ば驚き、呆れつつ、しかしながら拙者も一応は、、、ということで、味見を兼ね兼ね訪ねて歩いてみる。
すると、どうだ。実に様々なラーメンがあって、それはそれ、これはこれ、あれはあれ。
指呼確認しながら、わたくしは、ラーメンという一品は、嫌いではないのであった。
ということを自らに確かめつつ今日も半径300メートル以内を渡り歩く。
ラーメン遍路。

その中に、と或る有名な店があって、そこは、常時10余人ほどの空席待ち行列が出来ている。
人気店という部類に入るのであろうか。
尤も、そこの御自慢ラーメンは、正直なところ、わたくしにはおいしいとは思われない。
婉曲表現を避けて、率直に申せば、不味い!
並んで待つ客人は、皆、つまらなそうに不機嫌そうに肩を窄(:すぼ)めており、漸く席に着いてからも、依然としてつまらなそうに沈黙を抱えたまま、一品を待つ。そして、誰もが黙りこくり、できあがったラーメンをすする音だけが店内に谺(:こだま)する。
こんな殺風景な店内は、夜明け間際の吉●屋でも、ありえない光景である。
それなのに、連日、営業時間内、行列を絶やしているところを見たことがない。
この店(したがって、店名は一切不問)。
なにがそれほどまでに人を惹き付けるのか。
よもやラーメンそのものの味ではあるまい。
割安感があるわけでもない。
隠れクーポン券(例えば、3回食べたら、向かいのラーメン屋さんのタダ券を上げる、とか)があるなどという話も聞かない。
何が楽しいのか。何かの陰謀なのか。行列がサクラではなかろうて。
わたくしの街の七不思議のひとつに数えられよう。
なお、残りの六つの謎は、知る由もない。

本日の音楽♪
「あしおと」(山下達郎