九月になれば

最近メディアへの露出が再び増えた感のあった俳優、水谷豊であったが、昔からの彼の活動と出演作品を知るファンにとっては、当たり役である「相棒」の右京警部シリーズよりも、もっと優れた適役があるのにと歯噛みしたい気持ちになろうものである。

大昔観た彼の作品の中で、たいへん印象に残っている映画に、地味勝ちだったのだけれども、ハードボイルドタッチで、ハッピーエンドストーリーとは言い難くて、とにもかくにも滋味を残す深い後味で…と題名を思い出そうとして、嗚呼そうか、『逃れの街』であるかという答を導き出した。

表題のサビを伴う主題曲がたいへん美しいメロディであったなあ、とか、スクリーンに映し出される銀の色調が独特で何故か物悲しい気持ちになったなあ、とか、監督は市川コンであったっけ、などと回想しながら、念のため確認のために、検索をかけてみると、「逃れの街」は確かに彼の主演作だし、ハードボイルドには違いないが、監督は工藤順一、音楽は柳ジョージ、ストーリーもここまで破滅的じゃなかったぞ。あれれ。

…ということで、再度、記憶の確認をした結果、正解は「幸福」。
確かに水谷豊主演。市川監督。主題歌はロブバード(「幸福ロンリーハート」)。
原作は、勿論、北方謙三ではなく、エド・マクベイン(87分署シリーズ)。
銀色の色調処理(シルバーカラー)が施されており、確かに間違いない。この作品だ。

驚いたことに、日本を代表する市川作品だというのに、また、高度経済成長期以前のよほど大昔の作品でもないのに、その後DVD化が一切されていない。
配給元が余程の旋毛曲がりなのか、権利関係が輻輳しているのか、単に忘れ去られているだけなのか。
そのことを知ってかどうか、是非、もう一度観たいという気持ちが高まる。
せめて、サントラ盤の音楽で我慢しようか。

本日の音楽♪
上記内容とは全く関係がありませんがね。
「涼風」(岩崎良美