表層しか掬えない事件記者の悩みどころ

きっと、釣りに違いない。違いないと思う。そう思っていて、釣られるわたくしの浅墓さといったら。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20091110-OYT1T00031.htm

◆「みんなも着る?」スクール水着男出没…●いたま
 ●いたま市緑区のJR東●和駅近くで8日夜、女子用のスクール水着姿の男が現れ、女子高校生らに「みんなもこんなの着る?」などと声をかけ、高校生らが交番に連絡するなどの騒ぎが起きた。
 ●玉県警によると、水着姿の男が現れたのは、8日午後7時前。帰宅途中の女子高校生数人に突然、声をかけてきたという。高校生らは駅前交番に逃げ込むなどしたが、被害はなかった。
 男は30〜40歳くらいで、身長1メートル70弱の小太り。黒っぽいスクール水着だけを身に着け、長髪を後ろで二つに束ねていたという。●玉県警は「危険を感じた時には、大声で助けを求めるか、近くの店や家に逃げ込んでほしい」としている。

ここまではよくある三流三面記事ネタ。俗に言うところの変態おじさんが出没したという話。
主役の小太りおじさんに同情の言葉はこれっぽっちも必要ないとは思うが、「みんなもこんなの着る?」と声をかけられて、今どき、きゃあと逃げてくれる高校生は不幸中の幸いな方で、「着る?」「着るわけねえだろ、このクソボケが」と無防備な躰に激しい蹴りを喰らう危険性もおじさんは考慮すべきであろう。
それともう一点。県警は、おそらく身長1メートル70弱で30〜40歳くらいのそのおじさんを掴まえた暁には、彼の全身写真と共に、愛用の黒っぽい水着も同時公開をして、市民に対して、「おじさん+水着」の極めて御下劣なミスマッチな姿を脳内喚起させようとしているに違いない。ロンゲおじさんは、そういったリスクも考慮すべきである。

おじさんの知人でも何でもないのでおじさんの話はここまでにして、今回のような三流週刊誌が得意にするような三面記事ネタを一流新聞紙(と呼ばれるところ)が敢えて掲載するためには、やはり記者の相応の才覚技術を必要とすることを指摘しておきたい。
つまり、こうした記事を取り上げる以上は、三流週刊誌と同列視されるリスクを避けつつ、(自称か他称かは兎も角)一流新聞紙ならではの味わいというものを表現せねばならないのである。そこで、今回は下記のとおり、極めて品性下劣な内容の事件と対比させるように、冷静な事実を最後に添えることで、新聞社の品性を保つとともに、読者の想像力によっておじさんの馬鹿馬鹿しさを際立たせる、そのような高度な技法を選択したのであった。
水着から離れたおじさんには、それなりに深い人生はあろう。だが、そんな慈しむ視線はどこからも贈られることはない。いずれにしても、おじさんにとって分の良い話は何もありませんなということが今回の結論ではある。

 ●谷地方気象台によると、8日の●いたま市内の最高気温は10月中〜下旬並みの20・4度。午後7時は13・7度まで低下していた。

本日の音楽♪
越冬つばめ」(森昌子